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「デマーリオ、ローズ嬢と距離が近くはないか?彼女は難しい立場の令嬢だ。婚約者の妹だからと簡単に考えない方が良い」
そう言ったのは学友である公爵令息だった。
デマーリオは貴族の後継教育を施されている。だから友人の言葉の意味も解ったが、伯爵家の内情を知るデマーリオは、それこそあり得ない事だと思った。
鷹揚さが貴族の嫡男らしいと言われるデマーリオは、傅かれる事に慣れている。
周囲は常に彼を慮って、デマーリオは些か尊大な気質はあったが、快活な人柄は人から好かれた。
彼の周りには多くの友人がいたし、そこにローズが入るのにも、友人が言うような事など考えてはいなかった。
デマーリオは、エリザベートを好ましく思っていた。彼女の聡明で思慮深いところにも惹かれていた。
エリザベートは教育水準の高い淑女学院に通う才女である。
少しばかり陰のある表情は、哀しいのか笑っているのかよく解からない表情だった。それでもいつもデマーリオを見つめて、デマーリオが話すのにも熱心に耳を傾けていた。
伯爵家は少々面倒な家だった。
前妻の遺言に縛られているエリザベートとの交流は、酷く浅いものだった。
月に一度の茶会には、季節が良ければ庭園で会っていた。他家の庭は面白い。毎回、ローズが植え込みの側からこちらを見ていて、それで気がそぞろになることはままあった。
「デマーリオ殿。ローズは引っ込み思案な所があってね。学園に慣れるまでどうか宜しく願うよ」
始まりは伯爵の言葉だ。
淑女学院へエリザベートが進学したのは残念だった。流石に学園では亡き母の遺言も影響しないだろう、学園で漸く婚約者らしい付き合いが出来ると、そう思っていた。
貴族学園に入学したのは異母妹のローズで、伯爵からはローズのことを頼まれた。世話を頼まれたのだとデマーリオは思っていた。
両親はそれに渋い顔をした。時折注意も受けていた。伯爵から妹の面倒を頼まれたのだと言えば渋々納得する様だった。学園に通うのにデマーリオがローズを迎えに行けば、伯爵も後妻の夫人も毎朝挨拶を交わしていたのだから、それで問題はないだろう。
デマーリオは、世間の言う男女の交流だなんて思ってはいない。確かにローズは大人しい。社交界で弱い立場にいる事も知っていたから、伯爵が世話を頼むのも頷けた。
もしかしたら、離れの邸のエリザベートとばったり会えるかも知れない。そんな事すら考えていた。
エリザベートとの婚姻は揺るがない決定事項だ。
よくよく見ると、異母とはいえ姉妹だけあってローズは何処となくエリザベートに似ている所がある。そうやって、ローズの顔にエリザベートの面影を探した。
思えばデマーリオとエリザベートは、すれ違いばかりの間柄であった。もっと会いたいと思っても女学院は勉学が厳しいと聞いた。きっと学習に忙しくなるだろうから、せめて文を書いて欲しいと言ったこともある。
亡き母の生家は度々彼女を養女に願って、そんな事は許しがたいと思った。これ以上エリザベートとの関わりが薄くなるのは嫌だった。
そう思うのに相変わらずエリザベートには会えないまま、その隙間にローズが入り込む。
ローズは空気の様な娘だ。
側にいて邪魔にならない。いつもいるから気にならない。こちらに向ける微笑みも、それはそれで可愛いと思っていた。
それが過ちだったのだろう。
デマーリオなりに希薄な関係を埋める努力をしてたから、贈り物は欠かさなかった。
エリザベートは手入れのされたプラチナの髪が美しい。宵闇の様な深い青い瞳も綺麗だ。
誕生祝いに青い石を探して、友人が青ならサファイアが良かろうと言ったのには、確かに澄んだ美しい石だと納得した。きっと彼女に似合うだろう。以降、祝いの品にはサファイアを贈っていた。何を贈ったのかと母に聞かれて、耳飾りだとかブローチだとか答えれば、母はそれで了承した。
出来る事ならエリザベートが贈った品を身に着けているのを見たいと思った。けれど一緒に参加する夜会の回数は少なかったし、エリザベートは大抵、母が譲った装飾品を身に着けていた。
エリザベートは義家族との縁が薄い。
滅多に参加しない夜会では、伯爵家がいるのを確かめて、デマーリオが彼等と引き合わせていた。亡き母の遺言で離れに住まうエリザベートと家族の橋渡しをするつもりでいた。
母からは、エリザベートを大切にする様にと言われる事が度々あった。そんな母であるから、デヴュタントではエリザベートのドレスは侯爵家で用意した。
母がデマーリオの衣装も一緒に揃えて、カフスに嵌められた石がサファイアよりもずっと濃い色の石であるのは、その時に気が付いた。
ラピスラズリというその石が伯爵家ではエリザベートの石なのだと知ったのは、婚約が破談となった後である。
デヴュタントでのエリザベートを、今でもはっきり思い出せる。父が「王家に奪われない様に」と言ったのは、強ち冗談ではなかったろう。王国には王子が二人おり、王太子には婚約者が据えられていなかった。
王子の目に留まるのではと案ずる程に、エリザベートは気品に溢れていた。
ダンスを踊って、恥ずかしげに俯くエリザベートがこちらを見てくれないかと見下ろして、思わず目が合った時に美しいと思った。
いつからか、学園や社交場で親しく付き合う友人達からローズとの噂があると聞かされて、そのうちエリザベートの様子が変わって行く。
嫌な噂を聞いたのか。そんな事は気にしなくてもよいのに。
見えない溝があるように、エリザベートと心が離れていくのが解った時には、彼女は自分の道を選んでいた。
学園を卒業したなら会える時間も増えるだろう。そうなったら婚姻式の準備も一緒に仕度をしよう。
両親ともそう話して伯爵にも伝えていたのが、関心のエリザベートには伝わらず、卒業の夜会すら別々になったまま、エリザベートは自分の世界を泳ぐ様にすり抜けて行った。
全てが些細な『行き違い』だった。
未来は定まっているのだと信じていた。
エリザベートの口から二度目の婚約解消の言葉が出て、彼女を妻にすると戯れ言を言う平民の司祭が現れて、そこからは全てが反転する様に様変わりしてしまった。
デマーリオには悪気はない。邪な感情もないから後ろめたさも無い。
侯爵家の嫡男として、既に開かれている自分の未来への疑いもなかった。
知らないことが罪になるということも、知らないままであった。
察することをしなくても、何かあれば侍従が教えてくれる。残念ながら、デマーリオにはそれを聞き入れる謙虚さが欠けていた。
周りは若いからと多目に見てくれる。父侯爵も自身が若さ故の恥ずかしい失敗をした経験があったから、そんなデマーリオにも猶予を与えて、相応の年齢になって世間を知ったら自ずと身につくだろうと思っていた。
だが、侯爵は気付かなかった。自分が青年であった頃には、伯爵家の様な可怪しな家は身近にいなかったと言うことを。
鉄は熱いうちに打たねばならないし、教育は感性が柔らかなうちに身に付けさせねばならない。
平民にエリザベートを奪われ、エリザベートからは婚約の解消を願われて、父から廃嫡の言葉まで聞かされた時に、生まれて初めて目の前が真っ暗になった。それが絶望という感情だったと後になって解った。
もう朝日は二度と昇らないと思った。夜は長く暗く一秒たりとも過去に連れ戻してはくれなかった。
「あのガゼボでエリザベートとお茶を飲んだのよ。木の枝の張り出しが丁度良い庇になって夏は涼しいの。池の淵を埋めたのも、エリザベートが落ちそうになって、ああ、貴方は知らないでしょうね。学園の休みの日は貴方は出掛ける事が多かったから。エリザベートを呼んだ日くらい貴方に声を掛けるべきだったわ。月に一度だなんて決めごとなど構わずに」
侯爵邸の門を出るまで母の思い出語りは続いた。もうそれ以上は正直なところ聞きたくなかった。過去をやり直したくても、過ぎた時間は戻らない。そんな当たり前のことを考える日が来るとは思わなかった。
デマーリオは、母を伴って領地へ向かう。こんな青空が広がる気持ちの良い朝なのに、心は靄に覆われている。
デマーリオは、生まれてこの方王都のタウンハウスで暮らしてきた。領地へ行くのは初めてであったから、領地の事なんて何も知らない。王都よりも北にある、冬の寒さの厳しい土地だ。まるで流刑の様に思うデマーリオには、自身が治める領地へ向ける情熱は未だ芽生えていない。
「私達、あの子を泣かせる事に慣れてしまっていたのね」
母の言葉は、もう何度も考えた事だった。それでも自分で考えるのと人の口から聞くのとでは全く違って聞こえた。早朝に眠気をもよおしたふりをして目を閉じた。
「もっと会いに行けば良かった…」
「え?何か言った?デマーリオ」
母の言葉には眠ったふりを通した。
瞼を閉じたまま、もっと会いに行けば良かったと、一緒の学園に通おうと強く強く誘っていれば良かったと、遺言なんて気にせずに外に連れ出してしまえば良かったと後悔を数える。
伯爵家の人間を信じるべきではなかったと、親達に任せっきりにしなければ良かったと、幾つも幾つも数えて、デマーリオは知らぬ内に涙が溢れた。
プラチナ色の艶髪も、真夜中の夜空の様な濃く青い瞳も、きっともう二度と見ることは無い。
そう考えるだけで声を上げて泣きたくなるのを、静かに堪えて固く瞼を瞑った。
初めて会った日に、
「母はとてもお綺麗で、とてもお優しいですわ」
そう言ったエリザベートのませた口ぶりが可愛らしかった。
あの日にもう一度戻りたいと思った。
そう言ったのは学友である公爵令息だった。
デマーリオは貴族の後継教育を施されている。だから友人の言葉の意味も解ったが、伯爵家の内情を知るデマーリオは、それこそあり得ない事だと思った。
鷹揚さが貴族の嫡男らしいと言われるデマーリオは、傅かれる事に慣れている。
周囲は常に彼を慮って、デマーリオは些か尊大な気質はあったが、快活な人柄は人から好かれた。
彼の周りには多くの友人がいたし、そこにローズが入るのにも、友人が言うような事など考えてはいなかった。
デマーリオは、エリザベートを好ましく思っていた。彼女の聡明で思慮深いところにも惹かれていた。
エリザベートは教育水準の高い淑女学院に通う才女である。
少しばかり陰のある表情は、哀しいのか笑っているのかよく解からない表情だった。それでもいつもデマーリオを見つめて、デマーリオが話すのにも熱心に耳を傾けていた。
伯爵家は少々面倒な家だった。
前妻の遺言に縛られているエリザベートとの交流は、酷く浅いものだった。
月に一度の茶会には、季節が良ければ庭園で会っていた。他家の庭は面白い。毎回、ローズが植え込みの側からこちらを見ていて、それで気がそぞろになることはままあった。
「デマーリオ殿。ローズは引っ込み思案な所があってね。学園に慣れるまでどうか宜しく願うよ」
始まりは伯爵の言葉だ。
淑女学院へエリザベートが進学したのは残念だった。流石に学園では亡き母の遺言も影響しないだろう、学園で漸く婚約者らしい付き合いが出来ると、そう思っていた。
貴族学園に入学したのは異母妹のローズで、伯爵からはローズのことを頼まれた。世話を頼まれたのだとデマーリオは思っていた。
両親はそれに渋い顔をした。時折注意も受けていた。伯爵から妹の面倒を頼まれたのだと言えば渋々納得する様だった。学園に通うのにデマーリオがローズを迎えに行けば、伯爵も後妻の夫人も毎朝挨拶を交わしていたのだから、それで問題はないだろう。
デマーリオは、世間の言う男女の交流だなんて思ってはいない。確かにローズは大人しい。社交界で弱い立場にいる事も知っていたから、伯爵が世話を頼むのも頷けた。
もしかしたら、離れの邸のエリザベートとばったり会えるかも知れない。そんな事すら考えていた。
エリザベートとの婚姻は揺るがない決定事項だ。
よくよく見ると、異母とはいえ姉妹だけあってローズは何処となくエリザベートに似ている所がある。そうやって、ローズの顔にエリザベートの面影を探した。
思えばデマーリオとエリザベートは、すれ違いばかりの間柄であった。もっと会いたいと思っても女学院は勉学が厳しいと聞いた。きっと学習に忙しくなるだろうから、せめて文を書いて欲しいと言ったこともある。
亡き母の生家は度々彼女を養女に願って、そんな事は許しがたいと思った。これ以上エリザベートとの関わりが薄くなるのは嫌だった。
そう思うのに相変わらずエリザベートには会えないまま、その隙間にローズが入り込む。
ローズは空気の様な娘だ。
側にいて邪魔にならない。いつもいるから気にならない。こちらに向ける微笑みも、それはそれで可愛いと思っていた。
それが過ちだったのだろう。
デマーリオなりに希薄な関係を埋める努力をしてたから、贈り物は欠かさなかった。
エリザベートは手入れのされたプラチナの髪が美しい。宵闇の様な深い青い瞳も綺麗だ。
誕生祝いに青い石を探して、友人が青ならサファイアが良かろうと言ったのには、確かに澄んだ美しい石だと納得した。きっと彼女に似合うだろう。以降、祝いの品にはサファイアを贈っていた。何を贈ったのかと母に聞かれて、耳飾りだとかブローチだとか答えれば、母はそれで了承した。
出来る事ならエリザベートが贈った品を身に着けているのを見たいと思った。けれど一緒に参加する夜会の回数は少なかったし、エリザベートは大抵、母が譲った装飾品を身に着けていた。
エリザベートは義家族との縁が薄い。
滅多に参加しない夜会では、伯爵家がいるのを確かめて、デマーリオが彼等と引き合わせていた。亡き母の遺言で離れに住まうエリザベートと家族の橋渡しをするつもりでいた。
母からは、エリザベートを大切にする様にと言われる事が度々あった。そんな母であるから、デヴュタントではエリザベートのドレスは侯爵家で用意した。
母がデマーリオの衣装も一緒に揃えて、カフスに嵌められた石がサファイアよりもずっと濃い色の石であるのは、その時に気が付いた。
ラピスラズリというその石が伯爵家ではエリザベートの石なのだと知ったのは、婚約が破談となった後である。
デヴュタントでのエリザベートを、今でもはっきり思い出せる。父が「王家に奪われない様に」と言ったのは、強ち冗談ではなかったろう。王国には王子が二人おり、王太子には婚約者が据えられていなかった。
王子の目に留まるのではと案ずる程に、エリザベートは気品に溢れていた。
ダンスを踊って、恥ずかしげに俯くエリザベートがこちらを見てくれないかと見下ろして、思わず目が合った時に美しいと思った。
いつからか、学園や社交場で親しく付き合う友人達からローズとの噂があると聞かされて、そのうちエリザベートの様子が変わって行く。
嫌な噂を聞いたのか。そんな事は気にしなくてもよいのに。
見えない溝があるように、エリザベートと心が離れていくのが解った時には、彼女は自分の道を選んでいた。
学園を卒業したなら会える時間も増えるだろう。そうなったら婚姻式の準備も一緒に仕度をしよう。
両親ともそう話して伯爵にも伝えていたのが、関心のエリザベートには伝わらず、卒業の夜会すら別々になったまま、エリザベートは自分の世界を泳ぐ様にすり抜けて行った。
全てが些細な『行き違い』だった。
未来は定まっているのだと信じていた。
エリザベートの口から二度目の婚約解消の言葉が出て、彼女を妻にすると戯れ言を言う平民の司祭が現れて、そこからは全てが反転する様に様変わりしてしまった。
デマーリオには悪気はない。邪な感情もないから後ろめたさも無い。
侯爵家の嫡男として、既に開かれている自分の未来への疑いもなかった。
知らないことが罪になるということも、知らないままであった。
察することをしなくても、何かあれば侍従が教えてくれる。残念ながら、デマーリオにはそれを聞き入れる謙虚さが欠けていた。
周りは若いからと多目に見てくれる。父侯爵も自身が若さ故の恥ずかしい失敗をした経験があったから、そんなデマーリオにも猶予を与えて、相応の年齢になって世間を知ったら自ずと身につくだろうと思っていた。
だが、侯爵は気付かなかった。自分が青年であった頃には、伯爵家の様な可怪しな家は身近にいなかったと言うことを。
鉄は熱いうちに打たねばならないし、教育は感性が柔らかなうちに身に付けさせねばならない。
平民にエリザベートを奪われ、エリザベートからは婚約の解消を願われて、父から廃嫡の言葉まで聞かされた時に、生まれて初めて目の前が真っ暗になった。それが絶望という感情だったと後になって解った。
もう朝日は二度と昇らないと思った。夜は長く暗く一秒たりとも過去に連れ戻してはくれなかった。
「あのガゼボでエリザベートとお茶を飲んだのよ。木の枝の張り出しが丁度良い庇になって夏は涼しいの。池の淵を埋めたのも、エリザベートが落ちそうになって、ああ、貴方は知らないでしょうね。学園の休みの日は貴方は出掛ける事が多かったから。エリザベートを呼んだ日くらい貴方に声を掛けるべきだったわ。月に一度だなんて決めごとなど構わずに」
侯爵邸の門を出るまで母の思い出語りは続いた。もうそれ以上は正直なところ聞きたくなかった。過去をやり直したくても、過ぎた時間は戻らない。そんな当たり前のことを考える日が来るとは思わなかった。
デマーリオは、母を伴って領地へ向かう。こんな青空が広がる気持ちの良い朝なのに、心は靄に覆われている。
デマーリオは、生まれてこの方王都のタウンハウスで暮らしてきた。領地へ行くのは初めてであったから、領地の事なんて何も知らない。王都よりも北にある、冬の寒さの厳しい土地だ。まるで流刑の様に思うデマーリオには、自身が治める領地へ向ける情熱は未だ芽生えていない。
「私達、あの子を泣かせる事に慣れてしまっていたのね」
母の言葉は、もう何度も考えた事だった。それでも自分で考えるのと人の口から聞くのとでは全く違って聞こえた。早朝に眠気をもよおしたふりをして目を閉じた。
「もっと会いに行けば良かった…」
「え?何か言った?デマーリオ」
母の言葉には眠ったふりを通した。
瞼を閉じたまま、もっと会いに行けば良かったと、一緒の学園に通おうと強く強く誘っていれば良かったと、遺言なんて気にせずに外に連れ出してしまえば良かったと後悔を数える。
伯爵家の人間を信じるべきではなかったと、親達に任せっきりにしなければ良かったと、幾つも幾つも数えて、デマーリオは知らぬ内に涙が溢れた。
プラチナ色の艶髪も、真夜中の夜空の様な濃く青い瞳も、きっともう二度と見ることは無い。
そう考えるだけで声を上げて泣きたくなるのを、静かに堪えて固く瞼を瞑った。
初めて会った日に、
「母はとてもお綺麗で、とてもお優しいですわ」
そう言ったエリザベートのませた口ぶりが可愛らしかった。
あの日にもう一度戻りたいと思った。
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