ヴィオレットの夢

桃井すもも

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進む路

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帝国は、大陸に於いて政治経済の中心を担う大国である。

少し前に、某国の王太子と帝国とが要となって「大陸横断鉄道計画」が興されてから、帝国を中心に諸国を結ぶ鉄道網が建設され始めている。

お陰で、近隣諸国のみならず帝国への距離も縮まり、距離の近さは政治・経済、引いては、文化・教育の近さともなった。

熟練の教育者達が賢しいと認める六の姫。政略結婚の駒としては些か弱い立場であるから、ならば帝国で学ばせてあちらとの関係を深めるのも良いのではと口添えをしてくれたのは、当の教師達であった。

帝国の学園は王国よりも一年早く12歳での入学となる。

これからの一年を準備期間と見做せば入学にも間に合うだろう、と教師らが進言してくれた。

数が多い王女の末姫。使い道を考える時期を迎えていた。ならば、それも良かろうと議会を通り父王も認める事となった。

それからの一年は、帝国学園入学への教育に重きを置かれることとなった。

姉王女は、「ご苦労なことね。私は御免被るわ。大変ばかりですもの。」と、やはり呆れ気味であった。


目的が出来ると、よく言う乾いた土が水を吸う喩えの如く、時折躓きながらも学びは励みとなった。

行く先の見えない王家のお荷物と腹を括っていたのが、思わぬ自由を得たように感じた。

狭い窓を潜って広く明るい草原に飛び出たような、胸いっぱいに息が吸える感覚であった。

ヴィオレット、『菫』と云う名の由来である紫の瞳がきらきらと輝いて、それからの毎日はヴィオレットにとって、記憶する中での母国で過ごした幼少期の内で最も密で濃い日々であった。





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