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憧れ
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帝国への学園入学が決ったヴィオレットには、ささやかな憧れが出来た。
帝国に駐留する外交大使が定例帰国の折に、学園入学への祝いの品を贈ってくれた。
末端とは云え王女だけに、祝いの品を贈られる事はそれまでも度々あったが、ヴィオレット個人に贈られる経験は初めてであった。
ヴィオレットは、私一人で独り占めしてしまって良いのかしらと、そわそわと心が浮足立った。
贈り物は学園入学に関わるものが大半であったが、その中に帝国に自生する自然植物の図鑑があった。
帝国の北側に位置する高山で、一年を通して白く輝く山峰があるらしい。そこに生息する青い花に関する記述が載っていた。
描かれている挿絵の「青」が美しい。
これが真実の色なのか描き手の感性によるものなのか、ヴィオレットは知りたくなった。
憧れは胸の奥に静かに染み入って、入学を目前に控える頃には、その花を観ることが人生の目標とまで思えるようになっていた。
青い花なら王国にもあるし、挿絵を見ても解るほど小さな花弁のそれは、素朴な花である。
言われなければ見落としてしまうかもしれない。
「見落とすなんて、そんな愚かなことは決してしないわ。」
ヴィオレットは決して決してと少しばかり力む。
無力で非力な自分が、夢や憧れを持てている事を嬉しく思った。
「そんな寒々しい山なんて。それに私はどちらかと云うと桃色の花が好きだわ。」
上の姉はやはり、呆れながら笑った。
帝国に駐留する外交大使が定例帰国の折に、学園入学への祝いの品を贈ってくれた。
末端とは云え王女だけに、祝いの品を贈られる事はそれまでも度々あったが、ヴィオレット個人に贈られる経験は初めてであった。
ヴィオレットは、私一人で独り占めしてしまって良いのかしらと、そわそわと心が浮足立った。
贈り物は学園入学に関わるものが大半であったが、その中に帝国に自生する自然植物の図鑑があった。
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「見落とすなんて、そんな愚かなことは決してしないわ。」
ヴィオレットは決して決してと少しばかり力む。
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上の姉はやはり、呆れながら笑った。
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