ヴィオレットの夢

桃井すもも

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ガーデン1

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「朴念仁の粗忽者が粗相をしたようね。」
朴念仁に粗忽者が加わった。

「ええ、義母様(おかあさま)。」

「...良いわね、それ。もう一度言ってみて?」

「義母様(おかあさま)。」

ソフィア公爵夫人が目を細める。
何か欲しいものは無い?と訊ねてくる。


ヴィオレットは今、公爵邸を訪っている。

婚姻式後間もなく仕上がり、お披露目の茶会も済んだ二幅一対になった絵姿、
現公爵夫人と次期公爵夫人が、同じ婚礼衣装を纏って向かい合わせに佇む絵の前でハーブティーを楽しんでいる。

大階段を登り切ったフロアーは、あれからお茶会テラスと変わり果てていた。
多分近いうちに、公爵邸は内装工事に入るのではと噂されている。


夫人が話しているのは、先日の夜会の顛末についてだ。

執事から報告があったのだろう。

平素は女性の視線を奪う美丈夫が、妻に駄々をこねた(執事証言)と云う。

粗忽者。
もう一度、夫人が呟く。

しかし、直ぐに目の前の愛娘(嫁)を見やって、
「体調は大丈夫?」と聞いてきた。

ヴィオレットは例の夜会の直ぐ後に、懐妊の兆しが認められた。

初期の為か、体調に変化は見られない。

少し外の空気を吸いましょう、と夫人に誘われ散策に出る。

夫人が大切に管理をしているプライベートガーデンまで、ゆっくり歩く。

夫人は、王女時代から王宮に庭園を所有しており、手ずから世話をしていた。

そこで育てられる花々は、「プリンセスガーデン」のブランド名で王都の花屋を中心に販売されるのだが、王女がコツコツお育てになるのだ。当然、ごく僅かな流通量であるから、希少な花々は大変な人気であった。

販売による収益は王立病院の経営資金として還元されて、夫人が降嫁してからは、ブランドはそのままに、生産販売は王立事業として継承されている。




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