ヴィオレットの夢

桃井すもも

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訪い1

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知らせと云うのは、いつも突然にやって来る。
けれど、本体が来ると云うことは、そうは無いだろう。

幼子たちがお昼寝をして、ヴィオレットは丁度良いと薬草園を見学していた。

朝の収穫が終わり手入れも施された後の園は人もまばらで、ゆっくりと時折立ち止まって眺めながら見学することが出来た。

湿った土の匂いと、肌に纏わり付く水分を含んだ空気。
目を閉じて息を吸い込むと、森林の奥深くにいる感覚を覚えた。

一面の緑に瞳まで癒やされ邸に戻る。
眠りの浅いアイリスが、そろそろ目を覚ましている頃だろう。

ポーチを潜ると執事が知らせる。
お客様がお見えです。何かを含んだニュアンスに、誰かしらと訝しく思いながら貴賓室のドアをノックした。

「どうぞ」と声がありドアを開けると、まあ!お客様がいらっしゃるというのに!
アルフレッドの膝にはアイリスがいる。
一目(いちもく)で尋常ではない状況に驚いた。
そうしてその向かい側に遅れて目をやると、上座には白銀の美丈夫が長い脚を持て余すかのように足を組んで座っていた。

何故、此処に?!

驚きで声が出ないと云うのは、本当にあるらしい。

はくはくと口を開閉するヴィオレットに

「やあ。」
夫は全然似合わない軽快な挨拶をした。

けれどもその表情は言葉程明るくはない。どうやら愛娘が対面する男から離れずに、そのうちうとうとと居眠りし始めたことを、苦々しく思っているらしい。

娘を抱っこされて嫉妬しているの?

多忙なデイビッドは、それでも邸に戻ると妻と幼子たちとの時間を作ることに注力していた。

両親が、お迎えの長めの口付けが終わるのを大人しく待ってから、私が先僕が先と父に抱っこをせがむのが帰宅のルーティンであった。

アンソニーは未だお昼寝中らしい。
久しぶりに会う父は、ぽっと出の焦げ茶男に愛娘を奪われた事に、感情の整理をしているところらしかった。


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