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誓いside T
クレアが学園の卒業を迎える。
この一年、僕の地獄は変わらなかった。
卒業後文官として出仕し始めても、マリアンネの呪縛は解けなかった。
学園にもう僕はいない。クレアとマリアンネだけが残ったのだ。僕のいない学園で何か起こるのではと、戦々恐々とした一年を過ごした。
ろくすっぽクレアの邸を訪う事のない不誠実な婚約者のままであった。
マリアンネの目を掻い潜って漸く逢える時には、彼女の沈む表情も陰る青い瞳も決して見落とすまいと瞳に焼き付けた。
目を伏せがちの彼女はきっと、そんな僕の視線に気づかなかった事だろう。
これ程会えずにいるのに、僕のクレアへの思慕が薄らぐ事は無かった。
僕との婚約がなければ、クレアはもっと令嬢らしい溌剌とした青春時代を過ごせた筈であったろう。
誠意の無い婚約者は、不実を通す男だと飽きれていることだろう。
マリアンネを側に侍らせて財だけ求める卑しい婚約者だと嫌気が差しているかもしれない。くすぶる恋心を持て余し、マリアンネから逃れられずにいる自分にも僕は呆れた。
彼女に呆れられ愛想を尽かされているのが分かっても、彼女を手放す事は考えられなかった。
何がこれ程までに僕の心を捉えるのか、クレアに囚われる心とマリアンネに囚われる我が身とで、同じ囚われることなのに、クレアを思うだけで胸が熱くなり、瞳を閉じるだけであの澄んだ濃い瞳が瞼に浮かんだ。
愛している。ただその一点のみは、神にも誓える僕の真実であった。
クレアの卒業式を前に、子爵家から文が届いた。
卒業式で婚約者として同伴して欲しい。
天にも昇る気持ちであった。
漸くクレアが卒業する。
自分の卒業式では同伴する事が叶わなかった。クレアの卒業式をクレアのパートナーとして共に祝える。
それから程無くして文を書いた。
申し訳ないが、その日は外せぬ仕事がある。
晴れある門出の伴は是非ともお父上にお譲りしたい。
結局僕はマリアンネを退けられなかった。
何を仕出かすか分からぬ程に狂気を帯びたマリアンネが恐ろしかった。
そんなマリアンネを排除する力が伯爵家に無いことが、悔しくて堪らなかった。
誰が聞いても巫山戯た話しである。
勤めたばかりの新米文官に、夜を徹する仕事など在る筈も無い。
真実を話せたら良かったのか。今更ではないか。
クレアからもその両親からも信頼を失って尚、卒業式の夜会でドレスを纏うクレアを思った。
僕の色のドレスを贈りたかった。
艷やかなブルネットの髪を結い上げて、照明の灯りが反射する青い瞳は、どれほど美しい事だろう。
誰か変な輩に声など掛けられないでほしい。
もしダンスなど誘われたなら、婚約者がいるのだと断ってくれればいい。
不義理を重ねて来たくせに、心を照らすクレアへの思いを消すことは出来なかった。
この夜、この世界にクレアとたった二人きり、あのダンスフロアーで踊っていたかった。
碌に握ったことの無い手を握り、エスコートして向かい合い、そっと腰をとってゆっくりと、瞳を見つめながらスローステップで踊っていたかった。
彼女はどんな笑い顔をしていただろうか。
濃く青い澄んだ瞳は分かるのに、その表情を思い出せない事が虚しかった。
この一年、僕の地獄は変わらなかった。
卒業後文官として出仕し始めても、マリアンネの呪縛は解けなかった。
学園にもう僕はいない。クレアとマリアンネだけが残ったのだ。僕のいない学園で何か起こるのではと、戦々恐々とした一年を過ごした。
ろくすっぽクレアの邸を訪う事のない不誠実な婚約者のままであった。
マリアンネの目を掻い潜って漸く逢える時には、彼女の沈む表情も陰る青い瞳も決して見落とすまいと瞳に焼き付けた。
目を伏せがちの彼女はきっと、そんな僕の視線に気づかなかった事だろう。
これ程会えずにいるのに、僕のクレアへの思慕が薄らぐ事は無かった。
僕との婚約がなければ、クレアはもっと令嬢らしい溌剌とした青春時代を過ごせた筈であったろう。
誠意の無い婚約者は、不実を通す男だと飽きれていることだろう。
マリアンネを側に侍らせて財だけ求める卑しい婚約者だと嫌気が差しているかもしれない。くすぶる恋心を持て余し、マリアンネから逃れられずにいる自分にも僕は呆れた。
彼女に呆れられ愛想を尽かされているのが分かっても、彼女を手放す事は考えられなかった。
何がこれ程までに僕の心を捉えるのか、クレアに囚われる心とマリアンネに囚われる我が身とで、同じ囚われることなのに、クレアを思うだけで胸が熱くなり、瞳を閉じるだけであの澄んだ濃い瞳が瞼に浮かんだ。
愛している。ただその一点のみは、神にも誓える僕の真実であった。
クレアの卒業式を前に、子爵家から文が届いた。
卒業式で婚約者として同伴して欲しい。
天にも昇る気持ちであった。
漸くクレアが卒業する。
自分の卒業式では同伴する事が叶わなかった。クレアの卒業式をクレアのパートナーとして共に祝える。
それから程無くして文を書いた。
申し訳ないが、その日は外せぬ仕事がある。
晴れある門出の伴は是非ともお父上にお譲りしたい。
結局僕はマリアンネを退けられなかった。
何を仕出かすか分からぬ程に狂気を帯びたマリアンネが恐ろしかった。
そんなマリアンネを排除する力が伯爵家に無いことが、悔しくて堪らなかった。
誰が聞いても巫山戯た話しである。
勤めたばかりの新米文官に、夜を徹する仕事など在る筈も無い。
真実を話せたら良かったのか。今更ではないか。
クレアからもその両親からも信頼を失って尚、卒業式の夜会でドレスを纏うクレアを思った。
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艷やかなブルネットの髪を結い上げて、照明の灯りが反射する青い瞳は、どれほど美しい事だろう。
誰か変な輩に声など掛けられないでほしい。
もしダンスなど誘われたなら、婚約者がいるのだと断ってくれればいい。
不義理を重ねて来たくせに、心を照らすクレアへの思いを消すことは出来なかった。
この夜、この世界にクレアとたった二人きり、あのダンスフロアーで踊っていたかった。
碌に握ったことの無い手を握り、エスコートして向かい合い、そっと腰をとってゆっくりと、瞳を見つめながらスローステップで踊っていたかった。
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