王妃の手習い

桃井すもも

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海の色2

一歩二歩と歩みを進めてアンドリューの前に立つ。


「オフィーリア、顔を見せて。」
柔らかな声に誘われて頭を上げる。

背の高いアンドリューを見上げる形となった。

朝日を浴びる金の髪が綺麗だと見惚れた。
日に背を向けている為か、瞳の蒼はいつもよりも深い色合いに感じた。

今日は晴天だ。
雲ひとつ見えぬ抜けるような青い空が広がっている。

だから、どうして景色が潤んで見えるのか分からなかった。

「オフィーリア」

再び名を呼ばれて、喉が詰まる。
息が上手く出来なくて、

「ふっ」と声にならない声が漏れる。

途端に雫が頬を伝って、それが涙なのだと漸く気付いた。


「笑ってくれないか? 君の笑顔を瞳に焼き付けるから。」

そう言われて、どうにか笑おうとするも、アンドリューの瞳に映る自分は、全然上手く笑えていない。

温かな手に頬を包まれて、瞳を覗き込まれる。

「君の瞳は、海の様だね。」

今にも零れそうな涙を湛えて潤む瞳が、海の様だとアンドリューが言う。

殿下、海は広いのですよ。
そうして波も荒いのです。船の進む跡には、美しい白波が立つのですよ。
あの碧い海を、貴方にも見せて差し上げたい。
いつか、貴方と一緒に見てみたい。

そう思ったのか、そう語ったのか、オフィーリアは覚えていない。

けれども、アンドリューが白い歯を見せて眩しく笑ったから、きっとこの言葉は聞いて貰えたのだろう。

文をくれるかい?
ええ、文を書きます。

そんな約束の後、
アンドリューがそっと口付けを落とした。

思わず瞼を閉じてしまって、蒼い美しい瞳を見ることが出来なかったけれど、

アンドリューが、閉じた瞼にも口付けを落としてくれたので、それで良かったのだと思った。


侍従も侍女も護衛達も、誰もアンドリューを止めはしなかった。



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