44 / 55
【44】
それからもグレースは、日々を慌ただしく過ごしていた。
クレア王女殿下は翌年の春、無事にお輿入れなさった。それからは王妃様がそれはそれは寂しがられて、王女の懐かしい話しをしましょうと、グレースは時折王宮へ呼ばれて王妃の話し相手を仰せつかる事が度々あった。
その頃にはアレックス殿下の婚約者として公国の大公女が内定していたから、大抵この三人でのお茶会となっていた。
伯爵夫人としては身分が及ばぬ縁であるも、王妃と王女にドレスや宝飾品を奉上する内に、高貴な身分でありながら気さくな王族の面々とすっかり馴染み合ってしまったのだ。
大概そこへ王太子殿下が乱入しては、少しばかり王子らしくない軽口をたたいて思う存分話した後は、ああすっきりしたとばかりに去って行く。
その王太子は、婚約が成ったばかりの大公女に心配りを忘れない。大公女は未だ学園に在籍されるご令嬢で、夫となるアレックスにも恥ずかし気に俯いてしまうのを、彼らしい軽口で心を解している様だった。
二人は大公女の学園卒業を待って、二年後には御成婚される。幾分年は離れているが、仲睦まじい夫婦となるだろう。
そんな吉事続きの王室に近く接した為なのか。
グレースはある日些細な不調を覚えたと思ったらそれが真逆の懐妊であったから、アーバンノット伯爵邸は天地がひっくり返るほどの騒ぎに湧いた。
初産であるから、周りが騒いで身体に障ってはならないと、皆自制しようと心得るのだが、目出度い事は抑えが効かない。
平素は寡黙な義父までが何処か舞い上がる様子に、「私が懐妊した時にはこれ程浮かれてはいなかったのに、やはり孫とは違うものなのね」と義母も驚くのであった。
クレア王女、今は隣国の王太子妃に奉上したR&G商会のドレスが隣国で評判となり、宝飾品についても王太子妃の茶会で話題となったらしい。
隣国からの旅客が、商会の本店と2号店を梯子して買い物を楽しんで、その後は疲れた足を併設するカフェでお茶を楽しみながら癒やすというのが観光の新たなルートであるらしい。
そんなタイミングで、鼻の利く父が意気揚々と商会を訪ねて来た。父の隣国にある商会にR&G商会の商品を置いてはどうかと言う。
父は既に隣接する家屋を買い取っているらしく、そこを改装してR&G商会の3号店としてはどうか、何なら自慢のカフェとやらを造ってやっても良い、などと言って来る。もう頭の中ではすっかり構想が出来上がっているのを、どうだ上手い話しだろうと云う体で持ち掛けて来る父の得意顔と言ったら。
父と経営の感性が似通うロバートが、良いなそれはと乗ったものだから、これも早速実行される事となった。
R&G商会の隣国店を差配する為に、ジョージが支配人として隣国へ渡る事となった。
ジョージはロバートの側近中の側近であったから手離すのは手痛い筈であるのを、何だか二人共楽しそうにこれからの計画を練っている。
ジョージは妻帯していない。貴族家の次男であるから、兄が爵位を継いだ後には平民となる。独り身の気軽な身分であるなら広い世界を観てみたい、そんな風に思っていたらしい。
隣国と言っても、今年から我が国と隣国で提携しての鉄道事業が興されて、将来は馬車では考えられぬ速さで二国が繋がると言う。
時間にすれば北の辺境地に行くよりも速く行き来が叶うのだから、ジョージの身軽さにも拍車が掛かるというものである。
将来は本店で製造した製品を鉄道輸送で運ぶ事も可能となる。物も人も便利に往来が可能となる。
この鉄道事業は両国の王太子達が要となって興した事業であったから、アレックス王太子殿下の為政者としての実力を国内外に示したものと高く評価をされていた。
日に日に大きくなる腹を抱えて、これまで通りに出歩く事の敵わないグレースは、ジョージが抜けてしまう経営陣の穴を案じていたが、流石の父はその辺りも鮮やかな手腕を見せつけた。
隣国店の立ち上げの差配を、父自らが音頭を取ってすっかり熟してくれている。
合間合間に隣国へ進捗を確かめに向うジョージは、帰国する度に生き生きと新店舗の出来栄えを語ってくれて、彼がこの役割を楽しんでいることが窺われた。
製造部門にも事務方にも新たに人を雇い入れて、それが漸く慣れた頃、グレースは女児を出産した。
小さな小さな嬰児を、グレースはそおっと胸に抱いてやんわりと抱き寄せた。
漆黒の髪が濡れている。
生まれたばかりであるのに肩を越すほど長い髪である。なんて美しく髪なのかしら。
さあ、瞳を開いて頂戴。どんな色を纏ってきたの?
グレースは、泣き止んだ娘が微睡みから目覚めるのを待った。そうして漸く目覚めた娘の瞳が、深い深い深海の色であったのを認めて瞳を潤ませた。
ああ、なんて美しく瞳なのかしら。
深海を覗き込んだ濃いビリジアン。
すっかりロバートの色を纏って生まれた娘に、胸の底から慈愛が湧き出すのを止められなかった。
真っ黒な髪に真っ白な肌。小さな真っ赤な唇が「かあたま」「とうたま」と言うならば、次は「ばあたま」だ、いや「じいたま」だと、アーバンノット伯爵邸は賑やかだ。
貴族家としては珍しい光景であるも、そんな確かな血の結び付きを得られた事を、グレースは心から嬉しく思った。
フランシスの息子に抱き上げられて娘がきゃっきゃと声を上げる。
Roseliaと名付けられた娘は、その名を体現する様に薔薇とカメリアの魅力を併せ持つ誇り高く潔い令嬢に育つ。
名付け親はアレックス王太子殿下であった。
名前くらい付けさせておくれよと強請られて、未来の国王陛下から賜る名にこれ程の名誉は無いと有り難く頂戴したのである。
数年後に、私が名付けたのだから半分私の娘だなどと戯けた事を言い出す王太子であるが、彼の治める王国でロバートとグレースは子を育み家と商会と関わる人々を守って過した。
第一子を王子に恵まれたアレックスが、丁度良いじゃないか娘を寄越せと、この王子の婚約者にローゼリアを据えようとするのをのらりくらりと躱しながら、多忙な日々の合間に家族の時間を作るグレース。
この時ばかりはロバートも共にいて、と言うより二人が離れる事は公私共々皆無であるのだが、兎に角ロバートも一緒になって娘とお茶会をする。
お茶会と称した庭園のお散歩なのだが、小さな歩みでヨッチヨッチと歩みを進め、それに疲れた後には果実水とビスケットを頂くのだから、小さなローゼリアのお茶会で間違いないのである。
ロバートが娘の口元を拭いてやる。大きな手に花柄のガーゼのハンカチが似合わない。
同じ漆黒の髪に深海の瞳。
「ロバート、ローゼリア。」
そう呼び掛ければ、二人が同時にこちらを向いた。
四つの深海色に見つめられて、それからグレースは天を仰いだ。
今日も空は青い空。
その下には大海原が広がって、白い波間を覗けば深い深いビリジアンの海。
なんて幸せで幸運で幸福なのだろう。
この世の幸せを凝縮したような深緑に見つめられて、グレースは思わず白い歯を零して笑みを深めるのだった。
完
✻本編はこれにて完結となります。お読み頂きました皆様へ心より感謝を申し上げます。これより番外編がございます。どうぞ引き続きお楽しみ下さいませ。
クレア王女殿下は翌年の春、無事にお輿入れなさった。それからは王妃様がそれはそれは寂しがられて、王女の懐かしい話しをしましょうと、グレースは時折王宮へ呼ばれて王妃の話し相手を仰せつかる事が度々あった。
その頃にはアレックス殿下の婚約者として公国の大公女が内定していたから、大抵この三人でのお茶会となっていた。
伯爵夫人としては身分が及ばぬ縁であるも、王妃と王女にドレスや宝飾品を奉上する内に、高貴な身分でありながら気さくな王族の面々とすっかり馴染み合ってしまったのだ。
大概そこへ王太子殿下が乱入しては、少しばかり王子らしくない軽口をたたいて思う存分話した後は、ああすっきりしたとばかりに去って行く。
その王太子は、婚約が成ったばかりの大公女に心配りを忘れない。大公女は未だ学園に在籍されるご令嬢で、夫となるアレックスにも恥ずかし気に俯いてしまうのを、彼らしい軽口で心を解している様だった。
二人は大公女の学園卒業を待って、二年後には御成婚される。幾分年は離れているが、仲睦まじい夫婦となるだろう。
そんな吉事続きの王室に近く接した為なのか。
グレースはある日些細な不調を覚えたと思ったらそれが真逆の懐妊であったから、アーバンノット伯爵邸は天地がひっくり返るほどの騒ぎに湧いた。
初産であるから、周りが騒いで身体に障ってはならないと、皆自制しようと心得るのだが、目出度い事は抑えが効かない。
平素は寡黙な義父までが何処か舞い上がる様子に、「私が懐妊した時にはこれ程浮かれてはいなかったのに、やはり孫とは違うものなのね」と義母も驚くのであった。
クレア王女、今は隣国の王太子妃に奉上したR&G商会のドレスが隣国で評判となり、宝飾品についても王太子妃の茶会で話題となったらしい。
隣国からの旅客が、商会の本店と2号店を梯子して買い物を楽しんで、その後は疲れた足を併設するカフェでお茶を楽しみながら癒やすというのが観光の新たなルートであるらしい。
そんなタイミングで、鼻の利く父が意気揚々と商会を訪ねて来た。父の隣国にある商会にR&G商会の商品を置いてはどうかと言う。
父は既に隣接する家屋を買い取っているらしく、そこを改装してR&G商会の3号店としてはどうか、何なら自慢のカフェとやらを造ってやっても良い、などと言って来る。もう頭の中ではすっかり構想が出来上がっているのを、どうだ上手い話しだろうと云う体で持ち掛けて来る父の得意顔と言ったら。
父と経営の感性が似通うロバートが、良いなそれはと乗ったものだから、これも早速実行される事となった。
R&G商会の隣国店を差配する為に、ジョージが支配人として隣国へ渡る事となった。
ジョージはロバートの側近中の側近であったから手離すのは手痛い筈であるのを、何だか二人共楽しそうにこれからの計画を練っている。
ジョージは妻帯していない。貴族家の次男であるから、兄が爵位を継いだ後には平民となる。独り身の気軽な身分であるなら広い世界を観てみたい、そんな風に思っていたらしい。
隣国と言っても、今年から我が国と隣国で提携しての鉄道事業が興されて、将来は馬車では考えられぬ速さで二国が繋がると言う。
時間にすれば北の辺境地に行くよりも速く行き来が叶うのだから、ジョージの身軽さにも拍車が掛かるというものである。
将来は本店で製造した製品を鉄道輸送で運ぶ事も可能となる。物も人も便利に往来が可能となる。
この鉄道事業は両国の王太子達が要となって興した事業であったから、アレックス王太子殿下の為政者としての実力を国内外に示したものと高く評価をされていた。
日に日に大きくなる腹を抱えて、これまで通りに出歩く事の敵わないグレースは、ジョージが抜けてしまう経営陣の穴を案じていたが、流石の父はその辺りも鮮やかな手腕を見せつけた。
隣国店の立ち上げの差配を、父自らが音頭を取ってすっかり熟してくれている。
合間合間に隣国へ進捗を確かめに向うジョージは、帰国する度に生き生きと新店舗の出来栄えを語ってくれて、彼がこの役割を楽しんでいることが窺われた。
製造部門にも事務方にも新たに人を雇い入れて、それが漸く慣れた頃、グレースは女児を出産した。
小さな小さな嬰児を、グレースはそおっと胸に抱いてやんわりと抱き寄せた。
漆黒の髪が濡れている。
生まれたばかりであるのに肩を越すほど長い髪である。なんて美しく髪なのかしら。
さあ、瞳を開いて頂戴。どんな色を纏ってきたの?
グレースは、泣き止んだ娘が微睡みから目覚めるのを待った。そうして漸く目覚めた娘の瞳が、深い深い深海の色であったのを認めて瞳を潤ませた。
ああ、なんて美しく瞳なのかしら。
深海を覗き込んだ濃いビリジアン。
すっかりロバートの色を纏って生まれた娘に、胸の底から慈愛が湧き出すのを止められなかった。
真っ黒な髪に真っ白な肌。小さな真っ赤な唇が「かあたま」「とうたま」と言うならば、次は「ばあたま」だ、いや「じいたま」だと、アーバンノット伯爵邸は賑やかだ。
貴族家としては珍しい光景であるも、そんな確かな血の結び付きを得られた事を、グレースは心から嬉しく思った。
フランシスの息子に抱き上げられて娘がきゃっきゃと声を上げる。
Roseliaと名付けられた娘は、その名を体現する様に薔薇とカメリアの魅力を併せ持つ誇り高く潔い令嬢に育つ。
名付け親はアレックス王太子殿下であった。
名前くらい付けさせておくれよと強請られて、未来の国王陛下から賜る名にこれ程の名誉は無いと有り難く頂戴したのである。
数年後に、私が名付けたのだから半分私の娘だなどと戯けた事を言い出す王太子であるが、彼の治める王国でロバートとグレースは子を育み家と商会と関わる人々を守って過した。
第一子を王子に恵まれたアレックスが、丁度良いじゃないか娘を寄越せと、この王子の婚約者にローゼリアを据えようとするのをのらりくらりと躱しながら、多忙な日々の合間に家族の時間を作るグレース。
この時ばかりはロバートも共にいて、と言うより二人が離れる事は公私共々皆無であるのだが、兎に角ロバートも一緒になって娘とお茶会をする。
お茶会と称した庭園のお散歩なのだが、小さな歩みでヨッチヨッチと歩みを進め、それに疲れた後には果実水とビスケットを頂くのだから、小さなローゼリアのお茶会で間違いないのである。
ロバートが娘の口元を拭いてやる。大きな手に花柄のガーゼのハンカチが似合わない。
同じ漆黒の髪に深海の瞳。
「ロバート、ローゼリア。」
そう呼び掛ければ、二人が同時にこちらを向いた。
四つの深海色に見つめられて、それからグレースは天を仰いだ。
今日も空は青い空。
その下には大海原が広がって、白い波間を覗けば深い深いビリジアンの海。
なんて幸せで幸運で幸福なのだろう。
この世の幸せを凝縮したような深緑に見つめられて、グレースは思わず白い歯を零して笑みを深めるのだった。
完
✻本編はこれにて完結となります。お読み頂きました皆様へ心より感謝を申し上げます。これより番外編がございます。どうぞ引き続きお楽しみ下さいませ。
あなたにおすすめの小説
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】記憶を失ったらあなたへの恋心も消えました。
ごろごろみかん。
恋愛
婚約者には、何よりも大切にしている義妹がいる、らしい。
ある日、私は階段から転がり落ち、目が覚めた時には全てを忘れていた。
対面した婚約者は、
「お前がどうしても、というからこの婚約を結んだ。そんなことも覚えていないのか」
……とても偉そう。日記を見るに、以前の私は彼を慕っていたらしいけれど。
「階段から転げ落ちた衝撃であなたへの恋心もなくなったみたいです。ですから婚約は解消していただいて構いません。今まで無理を言って申し訳ありませんでした」
今の私はあなたを愛していません。
気弱令嬢(だった)シャーロットの逆襲が始まる。
☆タイトルコロコロ変えてすみません、これで決定、のはず。
☆商業化が決定したため取り下げ予定です(完結まで更新します)
夫と愛し合った翌朝、一方的に離縁されました【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
美しい公爵夫人マルグリートは、冷徹な夫ディートリヒと共に、王国の裏で密かに任務をこなす“悪女”。
だがある日、突然夫から離婚を言い渡される。しかもその裏には、平民の愛人の存在が──。
失意の中、王命で新たな婚約者・エルンストと結ばれることに。
どうやら今回の離婚再婚は、王家の陰謀があるよう。
「悪女に、遠慮はいらない」
そう決意した彼女は、華やかな舞踏会で王に真っ向から言い放つ。
「わたくし、人の家庭を壊しておきながら悪びれない方に、下げる頭は持っていませんの。
王族であられる前に、人におなりくださいませ。……失礼」
愛も、誇りも奪われたなら──
今度はこの手で、すべてを取り戻すだけ。
裏切りに燃える、痛快リベンジ・ロマンス!
⚠️本作は AI の生成した文章を一部に使っています。タイトル変えました。コメディーです。主人公は悪女です。
【完結】冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない
くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、
軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。
言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。
――そして初めて、夫は気づく。
自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。
一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、
「必要とされる存在」として歩き始めていた。
去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。
これは、失ってから愛に気づいた男と、
二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。
――今さら、遅いのです。
ため息ひとつ――王宮に散る花びらのように
柴田はつみ
恋愛
「離縁を、お願いしたいのです」
笑顔で、震えずに、エレナはそう言った。
夫は言葉を失った。泣いてくれれば、怒ってくれれば、まだ受け止め方があった。しかしあの静けさは、エレナがもう十分に泣き終わった後の顔だと、ヴィクトルにはわかった。
幼なじみと結ばれた三年間。すれ違いは静かに始まり、深紅のドレスの令嬢によって加速した。ため息を飲み込み、完璧な微笑みを保ち続けた公爵夫人が、最後に選んだのは――。
王宮に散る花びらのような、夫婦の崩壊と再生の物語。
【完】愛人に王妃の座を奪い取られました。
112
恋愛
クインツ国の王妃アンは、王レイナルドの命を受け廃妃となった。
愛人であったリディア嬢が新しい王妃となり、アンはその日のうちに王宮を出ていく。
実家の伯爵家の屋敷へ帰るが、継母のダーナによって身を寄せることも敵わない。
アンは動じることなく、継母に一つの提案をする。
「私に娼館を紹介してください」
娼婦になると思った継母は喜んでアンを娼館へと送り出して──
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。