ラピスラズリの夢

sweet martini

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第3章

吐露

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「私は16歳になったばっかりで、婚約者がいたんです。
結婚は2年後の予定だったのに、急に今週の日曜日にことになってしまって。
父親もぐるで、明日迎えが来ると聞いて逃げ出してきました。
それで私の好きだった人を訪ねたんです。」
ナタリーはここでちょっと話を止めた。
ギルバートのことを話すのがやっぱりためらわれるのだ。
でも、話すって決めたことだもの。
そう言い聞かせて、彼女は話を続けた。
「私は婚約者の男に抱かれるなら彼がいいと思いました。
でも実は、彼は結婚してたんです。
その結婚相手を傷つけたのが私の婚約者で、私は復讐するために抱かれたんです。
何も考えられずに、そのまま逃げ出してきました。
その時にアルさんに助けられて…」

「そうか、つらい思いをしたな。」
アルがナタリーの頭を撫でる。
「あの時は死のうとも思ってました。
もうすべてがどうでも良くて、アルさんに本当に助けられたんです。
私の婚約者がアルさんだったらいいのにって思います。」
ナタリーはアルを見上げた。
整った甘い顔立ちに黒い髪。
「かっこよくて、優しくて、素敵ですもん。」
「ちょっと!
あなたたち私の存在忘れてない?」
リザが叫ぶ。
「恋愛劇場はもう終わりよ!」
2人は目を見合わせるとそろって吹き出した。
下手に慰めるのではなく、明るい空気にしてくれるのが心地よかった。
「もう4時じゃない。
寝る前に日が昇っちゃうわよ。
ナタリーは裏部屋を貸してあげるからそこで寝なさい。
アルはどうする?」
「ああ、おれは帰るよ。
おやすみ。」
彼は扉の前まで行くと、また振り返った。
「俺もナタリーは可愛いと思うよ。」
そうして出て行ってしまった。
「え?!」
ナタリーはほおを染めて閉じたドアを見つめていた。
あれはただの社交辞令かしら、それとも私は期待してもいいのかしら。
「ベッドに入った?
電気を消すわよ?」
「今行きます!」
彼女は布団にもぐると目を閉じた。
さっきのアルの言葉が耳の奥に聞こえる気がする。
やっぱり自分は惚れやすいのかしら。
興奮してて寝付けなさそうだと思ったのも束の間、彼女は眠りに落ちた。
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