転移事故に巻き込まれたオッサン、《鑑定》と《インベントリ》をハッキングして最強になってしまう

邪神ミケネコタマス

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第2話:オッサン、神様に会う

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目が覚めるとそこは、何も無い真っ白な空間でした。そう。何も無い。俺の身体もない。感覚もない。見えているのか目を閉じているのか分からないこの感覚は、32年生きてきて初体験だ。開いてる?閉じてる?ねぇ、俺の瞼知らない?

「落ち着くのだ、那賀 健人よ」

わぁ。びっくりした。たぶんね。たぶん。何せ感覚が無い。心臓が跳ねた感覚もない。でもびっくりした、と思う。ねぇ俺どうなってる?何とかしてくれ。気味が悪い。

「分かった分かった。 ...ほれ、これで良かろう」
「おぉ」

身体の感覚がある。五感もある。特に思い入れが無いと思っていたが、どうやらそうでも無かったみたいだ。凄く安心である。

「よいか、貴殿は死んだ。転移事故だ」

死んだ、死んだ。死んだ? なるほど。あれが死んだ感覚か。2度は経験したくないな。まぁそれは有り得ないのだが。

「いや、それがそうでもないのだ。転移事故で、貴殿の右半身は異世界に送り込まれた。魔王と呼ばれる輩が件の異世界を追放されたようでな。その反動で貴殿が引きずり込まれた訳だが、右半身だけでは足りぬ。とはいえ、あの世界はまだ未熟。自ずからバランスを保てる程成熟しておらん」
「はぁ...えっとつまり?」
「貴殿を蘇生し、異世界に送り込む。だが案ずるな。安全な場所に送り届けよう。それと貴殿が見知らぬ世界で生きていけるよう、便宜も図る。それでは良いか」
「いや、なにが? 1から10まで全部意味わからん」
「ふむ。しかしすまぬ。時間も無いのだ。既に件の世界は収縮しつつある。貴殿に責任は無いとはいえ、あの世界の全生命とは変えられぬ」

ははぁ。説明下手だな? 分かるぞ、その気持ち。俺も良く説明下手だって言われるし。でもそうか。相手はこんな気持ちなのか。もっと相手の言葉を聞いてあげなきゃな。

全身が光に包まれて、なにか優しいチカラで解かれていく。痛みも恐怖もない。ただ、自分という存在が小さく分解されていく。

「あちらに着いたら本を読め。渡しておく」
「うす」

何がなにやらさっぱりだが、どうやら俺には死ぬ事すら許されないらしい。やっぱり子孫を残すまでは死ぬなって事なのだろうか。生物としての責任がどうたらみたいな。まぁあんまり興味もないけども。

あれ、てか待ってくれ。魔王が追放されたとか云々ってどういう事ですか。ハッピーエンドした後って事?そうだよね?そうだと言ってよ。

「魔王は邪神の使徒。勇者に敗れて追放された。まぁ貴殿が関わる程の事でもあるまい。ゆっくりスローライフでも楽しむが良い」

そっかぁ。そっかぁ...えぇ...
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