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第1章 魔法を極めた王、異世界に行く
20:盗賊団-1
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原初の森から十数キロ離れた場所にある、のどかで平和な村。住人は子供も含めて全部で30人程が暮らしており、あるものは畑を耕し、あるものは木を切り倒し、あるものは動物を狩って生計を立てていた。
近隣の街から行商人が月1度訪れ、村民と売買をして立ち去っていく。その時に必需品や切り倒した木材や加工品を売り、毎年小さなお祭りを開催するなど、小さな村はそれなりの幸せを噛み締めながら生活していた。
そんなのどかなある日、ぞろぞろと男たちが村の入り口までやってきた。ひと際大きな男が村を一瞥すると、大声で村人全員に聞こえるように叫んだ。
「ヒャッハー! 抵抗するなら殺せ! 女は犯せ! 子供は奴隷として捕まえろ! 全ての財は俺たちのものだ!」
「「「「ヒャッハー!!!」」」」
そんな平和な村の日常は、盗賊の出現により一瞬で崩された。盗賊は溜め込んでいた財を奪い、刃向かってきた若い男を殺し村を蹂躙。村に住む娘も盗賊により酷い扱いを受け、このまま地獄が続くのかと思われた時、救いの手が差し伸べられた。
村の1人が盗賊が来た時にすぐに逃げ出し、近くを見回っていた騎士団7名を捕まえて戻ってきたのだ。この地を収める領主は、最近増え続ける盗賊や山賊対策に力を入れており、実力で選ばれた騎士団を巡回と警戒させ治安維持に奮闘していたのだ。
「奴らは最近ここらを荒らす賞金首ディグドの盗賊団だ! 各自住人を助けつつ、盗賊は生死を問わない! やれ!」
騎士団の強さは凄まじかった。盗賊団の配下は抵抗する間もなく殺され、どんどん住人が助けられていく。
全部で20人いた盗賊は、騎士団攻撃を受け半壊。騎士団の襲撃にいち早く気付いた盗賊団の頭ディグドは、数名の部下を連れて逃げ出していた。
「お頭ぁ! どこへ逃げるんでゲスかぁ!?」
「原初の森だ! あそこなら奥の方まではこねぇはずだ!」
(クソッ! 騎士団が近くにいるなんて聞いてねぇぞ!)
盗賊団は追ってくる騎士団へ、脱落する仲間を見捨てながら逃げ続けた。すでに殺されたり捕まった盗賊たちによって追撃の手は次第に緩み、原初の森に入った時には騎士団の姿が見えなくなっていたが、盗賊団の人数も5人まで減っていた。
もう何時間走ったかわからない。腹も減り疲れもあるが、森の奥まで行かなければ安全とは言えないので、盗賊達は歩みを止めることなく中へと入っていく。
「お、お頭ぁ……。ここには水龍って化け物が……」
「バカやろう! そんなの噂だ噂! ほとぼりが冷めるまでここに隠れてやり過ごすぞ」
「水龍の怒りを買うのは勘弁ですぜ……」
「あぁ!? んじゃせっかくだから龍がいる湖まで行ってやろうじゃねーか。もし水龍がいたらとっ捕まえて売り捌いて儲けてやんよ!」
ディグドは伝承を知っている。その上で大きな湖の方まで逃げれば、ここの国の人間は伝承に従い奥まで来ないと踏んでいた。幸いにも、少し足を踏み入れれば食える果実がある事も確認している。あとは水さえあれば数日生き延びられるので、騎士団が諦めたらアジトへ戻ろうと考えていた。
その水は水龍がいるという湖で手に入る。この森の湖は飲むことが出来るとも聞いており、水魔法が使えた部下が捕まった今ではそこに頼るしかない。
森の入り口から1時間以上歩き続けていると、急にディグドが立ち止まった。
「おい、全員ちょっと止まれ」
「へい」
近隣の街から行商人が月1度訪れ、村民と売買をして立ち去っていく。その時に必需品や切り倒した木材や加工品を売り、毎年小さなお祭りを開催するなど、小さな村はそれなりの幸せを噛み締めながら生活していた。
そんなのどかなある日、ぞろぞろと男たちが村の入り口までやってきた。ひと際大きな男が村を一瞥すると、大声で村人全員に聞こえるように叫んだ。
「ヒャッハー! 抵抗するなら殺せ! 女は犯せ! 子供は奴隷として捕まえろ! 全ての財は俺たちのものだ!」
「「「「ヒャッハー!!!」」」」
そんな平和な村の日常は、盗賊の出現により一瞬で崩された。盗賊は溜め込んでいた財を奪い、刃向かってきた若い男を殺し村を蹂躙。村に住む娘も盗賊により酷い扱いを受け、このまま地獄が続くのかと思われた時、救いの手が差し伸べられた。
村の1人が盗賊が来た時にすぐに逃げ出し、近くを見回っていた騎士団7名を捕まえて戻ってきたのだ。この地を収める領主は、最近増え続ける盗賊や山賊対策に力を入れており、実力で選ばれた騎士団を巡回と警戒させ治安維持に奮闘していたのだ。
「奴らは最近ここらを荒らす賞金首ディグドの盗賊団だ! 各自住人を助けつつ、盗賊は生死を問わない! やれ!」
騎士団の強さは凄まじかった。盗賊団の配下は抵抗する間もなく殺され、どんどん住人が助けられていく。
全部で20人いた盗賊は、騎士団攻撃を受け半壊。騎士団の襲撃にいち早く気付いた盗賊団の頭ディグドは、数名の部下を連れて逃げ出していた。
「お頭ぁ! どこへ逃げるんでゲスかぁ!?」
「原初の森だ! あそこなら奥の方まではこねぇはずだ!」
(クソッ! 騎士団が近くにいるなんて聞いてねぇぞ!)
盗賊団は追ってくる騎士団へ、脱落する仲間を見捨てながら逃げ続けた。すでに殺されたり捕まった盗賊たちによって追撃の手は次第に緩み、原初の森に入った時には騎士団の姿が見えなくなっていたが、盗賊団の人数も5人まで減っていた。
もう何時間走ったかわからない。腹も減り疲れもあるが、森の奥まで行かなければ安全とは言えないので、盗賊達は歩みを止めることなく中へと入っていく。
「お、お頭ぁ……。ここには水龍って化け物が……」
「バカやろう! そんなの噂だ噂! ほとぼりが冷めるまでここに隠れてやり過ごすぞ」
「水龍の怒りを買うのは勘弁ですぜ……」
「あぁ!? んじゃせっかくだから龍がいる湖まで行ってやろうじゃねーか。もし水龍がいたらとっ捕まえて売り捌いて儲けてやんよ!」
ディグドは伝承を知っている。その上で大きな湖の方まで逃げれば、ここの国の人間は伝承に従い奥まで来ないと踏んでいた。幸いにも、少し足を踏み入れれば食える果実がある事も確認している。あとは水さえあれば数日生き延びられるので、騎士団が諦めたらアジトへ戻ろうと考えていた。
その水は水龍がいるという湖で手に入る。この森の湖は飲むことが出来るとも聞いており、水魔法が使えた部下が捕まった今ではそこに頼るしかない。
森の入り口から1時間以上歩き続けていると、急にディグドが立ち止まった。
「おい、全員ちょっと止まれ」
「へい」
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