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第1章 魔法を極めた王、異世界に行く
16:珍客-2
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「……貴公がこの森を荒らす根源か」
水龍は上半身まで一気に姿を現し、背中の羽を広げて威嚇する体制で魔力の持ち主に声をかけた。目は白目をむき、怒りに震えているような表情をして、声はなるべく低く威圧的に。
万が一先に攻撃されても一度だけ無効化する魔法を発動しておき、相手の出方を伺う。あくまでも水龍が絶対王者だと印象付けるためだ。
しかし声をかけても相手からの反応はない。何かしらの返答や攻撃があってもおかしくないはずだが、本当に何の反応も返ってこないのだ。
驚き腰が抜け言葉すら発声出来なくなった可能性を考えてゆっくり30秒数えたが、やはり反応はない。
不思議に思った水龍が白目をやめてゆっくり視界を取り戻す。
「原初の森を荒らす……ん?」
水龍が目を戻すと、反応がない理由に気付いた。先程の魔力の持ち主が地面に倒れている事を。
あの恐ろしい気配はすでに消え去っており、目の前には若い人間が地面に横たわっているだけだ。これでは何も反応がないのは当然だろう。
「もしかして……死んでるの!?」
水龍は焦った。もしこの湖の近くで人が死んだとなれば、龍が人間に手を下したと思われてもおかしくない。
そうなると自分を討伐しようとする人間達が大量に来てしまうのではないかと。平和に過ごそうとしたくても、大量の人間が自分を討伐しにくる姿は想像したくない。
慌てて倒れている人間の近くに行こうと水龍が陸へ上がった。
水龍は自分の体の大きさを自由に変えることが出来る。ポンと音がすると、人間の頭ぐらいのサイズまで小さくなり、羽を使って倒れている人間に近付いていった。
「ヤバいなぁ……死んでるよねこの人……」
水龍が死んでいる人間に近付いて見ると、やはり呼吸もしておらず心臓も動いていない。さっきまであった魔力は間違いなくこの人間から発せられたものだが、死んでしまっているなら話すらできない。
周りに誰かいないか見渡してみると、今まではなかった家などがあることに気付いた。
「ここに住んでたのかな? ん……向こうにももう1人いるけど……。あ、今この姿見られたらヤバいじゃん! 僕が殺したって思われちゃう!」
死んだ人間の近くに龍がいたと目撃されたら終わる。間違いなく殺人犯だと思われるだろう。そう考えた水龍だったが、逃げたとしてもこの湖には龍がいるのがバレているので詰んだ状態だと気付いた。
あんま大きな魔力を持っている闇属性の魔法使いを殺せるのは、この森でも龍ぐらいだと思われるだろうと。
「もー。最悪だよ! どうしよう……」
起きないと思いながらも、水龍は倒れている人間のほっぺたを前足でペシペシ叩いていた。万が一もう1人が起きてきたら、回復魔法を必死にかけるいい龍だと思ってもらえるようにスタンバイすることにしたのだ。
多分そんな姿を見たとしても自分が殺したと思われそうだが、なんとかやり過ごせる奇跡を信じるしかなかった。
そんな思いを馳せながら改めて人間たちのいる場所をゆっくり見回してみると、水龍が気になるのを見つけた。
「あ! お肉だ! お肉あるじゃん!!」
基本的に水中で過ごしているので魚はよく食べていたが、陸地にいる動物の肉はあまり食べていない。
水龍が本気を出せば狩りをすることなど造作もないが、基本的にはめんどくさくてその辺にいる魚だけ食べてあとは寝るだけの暮らしだった。
久々に肉を見て興奮した水龍は、吊るされた肉をちぎると倒れている人間の近くに持ってきてちびちびと食べ始めた。
「んー、美味しいなぁ。やっぱ肉っていいよなぁ」
小屋にいる人間がいつ起きてもいいように、倒れている人間の近くで待機しながらの食事。
久々の肉をゆっくり堪能し最後の一口を食べ終わり、うとうとし始めた瞬間それは訪れた。
「ぷはっ!! はぁ……はぁ……ハイヒール!」
「えっ!? あ、ハイヒール!」
死んでいたと思った人間が息を吹き返したのだ。しかも人間の近くに転がっていた魔石と勘違いされたのか、水龍を掴むとそのまま胸に押し当てられた。
水龍も眠気でうとうとしていたせいで、急に伸びてきた手に抗うことができず、むしろハイヒールと言われ命令されたのかと勘違いして魔法を発動した。
その違和感に先に気づいたのが、先ほどまで死んでいた人間ーーもといアーベルだ。
「え? ん?」
アーベルは握っているはずの魔石が横に転がっているのを見ると、自分が握っているのはナニかとマジマジと見つめる。
水龍も握られたままアーベルの顔の前に持ってこられてしまい、困ったような顔をしながらアーベルに話しかけた。
「あ、どうもこんばんは……」
水龍は上半身まで一気に姿を現し、背中の羽を広げて威嚇する体制で魔力の持ち主に声をかけた。目は白目をむき、怒りに震えているような表情をして、声はなるべく低く威圧的に。
万が一先に攻撃されても一度だけ無効化する魔法を発動しておき、相手の出方を伺う。あくまでも水龍が絶対王者だと印象付けるためだ。
しかし声をかけても相手からの反応はない。何かしらの返答や攻撃があってもおかしくないはずだが、本当に何の反応も返ってこないのだ。
驚き腰が抜け言葉すら発声出来なくなった可能性を考えてゆっくり30秒数えたが、やはり反応はない。
不思議に思った水龍が白目をやめてゆっくり視界を取り戻す。
「原初の森を荒らす……ん?」
水龍が目を戻すと、反応がない理由に気付いた。先程の魔力の持ち主が地面に倒れている事を。
あの恐ろしい気配はすでに消え去っており、目の前には若い人間が地面に横たわっているだけだ。これでは何も反応がないのは当然だろう。
「もしかして……死んでるの!?」
水龍は焦った。もしこの湖の近くで人が死んだとなれば、龍が人間に手を下したと思われてもおかしくない。
そうなると自分を討伐しようとする人間達が大量に来てしまうのではないかと。平和に過ごそうとしたくても、大量の人間が自分を討伐しにくる姿は想像したくない。
慌てて倒れている人間の近くに行こうと水龍が陸へ上がった。
水龍は自分の体の大きさを自由に変えることが出来る。ポンと音がすると、人間の頭ぐらいのサイズまで小さくなり、羽を使って倒れている人間に近付いていった。
「ヤバいなぁ……死んでるよねこの人……」
水龍が死んでいる人間に近付いて見ると、やはり呼吸もしておらず心臓も動いていない。さっきまであった魔力は間違いなくこの人間から発せられたものだが、死んでしまっているなら話すらできない。
周りに誰かいないか見渡してみると、今まではなかった家などがあることに気付いた。
「ここに住んでたのかな? ん……向こうにももう1人いるけど……。あ、今この姿見られたらヤバいじゃん! 僕が殺したって思われちゃう!」
死んだ人間の近くに龍がいたと目撃されたら終わる。間違いなく殺人犯だと思われるだろう。そう考えた水龍だったが、逃げたとしてもこの湖には龍がいるのがバレているので詰んだ状態だと気付いた。
あんま大きな魔力を持っている闇属性の魔法使いを殺せるのは、この森でも龍ぐらいだと思われるだろうと。
「もー。最悪だよ! どうしよう……」
起きないと思いながらも、水龍は倒れている人間のほっぺたを前足でペシペシ叩いていた。万が一もう1人が起きてきたら、回復魔法を必死にかけるいい龍だと思ってもらえるようにスタンバイすることにしたのだ。
多分そんな姿を見たとしても自分が殺したと思われそうだが、なんとかやり過ごせる奇跡を信じるしかなかった。
そんな思いを馳せながら改めて人間たちのいる場所をゆっくり見回してみると、水龍が気になるのを見つけた。
「あ! お肉だ! お肉あるじゃん!!」
基本的に水中で過ごしているので魚はよく食べていたが、陸地にいる動物の肉はあまり食べていない。
水龍が本気を出せば狩りをすることなど造作もないが、基本的にはめんどくさくてその辺にいる魚だけ食べてあとは寝るだけの暮らしだった。
久々に肉を見て興奮した水龍は、吊るされた肉をちぎると倒れている人間の近くに持ってきてちびちびと食べ始めた。
「んー、美味しいなぁ。やっぱ肉っていいよなぁ」
小屋にいる人間がいつ起きてもいいように、倒れている人間の近くで待機しながらの食事。
久々の肉をゆっくり堪能し最後の一口を食べ終わり、うとうとし始めた瞬間それは訪れた。
「ぷはっ!! はぁ……はぁ……ハイヒール!」
「えっ!? あ、ハイヒール!」
死んでいたと思った人間が息を吹き返したのだ。しかも人間の近くに転がっていた魔石と勘違いされたのか、水龍を掴むとそのまま胸に押し当てられた。
水龍も眠気でうとうとしていたせいで、急に伸びてきた手に抗うことができず、むしろハイヒールと言われ命令されたのかと勘違いして魔法を発動した。
その違和感に先に気づいたのが、先ほどまで死んでいた人間ーーもといアーベルだ。
「え? ん?」
アーベルは握っているはずの魔石が横に転がっているのを見ると、自分が握っているのはナニかとマジマジと見つめる。
水龍も握られたままアーベルの顔の前に持ってこられてしまい、困ったような顔をしながらアーベルに話しかけた。
「あ、どうもこんばんは……」
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