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第1章 魔法を極めた王、異世界に行く

23:対人戦-2

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「やっぱ出来損ないだなてめーは! ご主人様のアレでもしゃぶって抱かれるのが似合ってる性処理道具なんだよ!」
「……」

 おーおー、めっちゃ睨みつけてるじゃん。リングに上がったエリィは、ディグドの口撃に対して冷静さを保とうとしている。
 今みたいな直線的な攻撃だけしてても避けられ反撃されるのがオチだ。そうなるとエリィは別の手を考えなければならない。
 さて、今度は何をするかな?

「その口塞いでやる!」
「はん! イキがんなよ雌豚!!」

 エリィがウォーターボールを発動させ、ディグドに向かって投げつける。それも一発だけではなく、連続で何発もだ。
 ディグドもその魔法を剣で叩き落とし、避けて、食らったとしても怯まずにエリィへと突っ込んでくる。エリィも移動しながら魔法を放ち、なんとか距離を取ろうとするが追い詰められた。

「ほらほらほらぁ! スキル!」

 ディグドが掛け声と同時に剣を大きく振りかぶると、エリィは腕に魔力を集中させながら頭の上に伸ばし、衝撃を受け止める体制に入る。

「バーカ」

 だが剣は振り下ろされる事なく、代わりに鋭い蹴りがエリィの空いた腹部に突き刺さった。意識してなかった腹部への衝撃はエリィを簡単にリング外へと弾き飛ばし、痛みは今までにないものとなっているだろう。
 しかし、俺が気にしてるのはそこじゃない。エリィは本当に覚悟できているのか?

「エリィ、何度も言わせるな。どんな怪我だろうが治してやるから、ちゃんと全力で戦え」
「……!」

 あえて殺傷性の低いウォーターボールしか使ってない上に、注いだ魔力も魔素も少ない。無意識なのか意識的になのかは知らないが、エリィの実力はこんなものではないはずだ。

「大技を使う必要はない。今はリングだが、戦うのが街中や狭い洞窟の可能性もあるからな。だが、手を抜くのは許さん」
「……はい」

 エリィがもう一度リングに戻る。ディグドは「後3回!」なんて呟きながら余裕の表情で、また口撃を開始した。
 だが今回は大丈夫そうだ。エリィの面構えが、先程とは別人になっている。怒りに任せるだけでなく、コントロールして目の前にいる敵を倒す事に覚悟を決めている表情だ。
 エリィの周りに魔力の小さな塊がふわふわと滞留し始めた。

「ロックニードル」
「はん、多属性持ちマニフォルドってか? だからお前の魔法は軽いんだよ!」

 エリィから放たれた魔法はディグドに届く前に剣で弾き落とされる。すると、ロックニードルが地面とぶつかった衝撃で砂埃が舞った。
 間髪入れずに何発もエリィがロックニードルをディグドへ放ち、何度も落とされるとだんだんと視界が悪くなっていく。
 どうやらエリィはあえて脆くロックニードルを作ったのかな?

「バカめ! 俺様にはてめーの場所がわかんだよ!」
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