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第1章 魔法を極めた王、異世界に行く

24:遠隔-2

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「よしよし、次はその魔力玉を動かすぞ。目を開けて、俺の近くにある土壁まで動かしてみろ。手などを使って勢いをつけるのは禁止だ」

 俺はアースウォールで2人の前に壁を作り出した。目標までは3mもない距離だ。
 普段の魔法なら簡単に届かせる事はできるが、今回は魔力操作だけで魔力玉をぶつける必要がある。
 魔力と魔素は体から離れると途端に制御が難しくなるからな。それは体から遠いほど難しく、さらに同時に動かすとなるとちゃんと鍛錬が必要だ。
 思った通り2人とも苦戦しているが、どうやらエリィの方がコントロールは上手いらしい。
 もうあとちょっとの距離まで動かしている。

「むー! 僕も負けない!」
「ふぅ……。本当に難しいですねこれ」

 そうだな、修行の中でも少し上の段階だから難しいだろう。それでも2人とも感覚を掴み始めているのか、少しずつ飛距離は伸びている。
 しばらくは滞留と操作を中心にして修行させれば、そこにさらに並列軌道などを入れてレベルアップさせていけるだろう。

 本来ならもうちょっと楽な認識の仕方もあるが、あえて基礎からやらせることによって後々の修行に応用できる方がいい。例えばブルーなんかは上級以上を使う時は、この修行と同じようなことをしているはずなんだ。
 ただ無意識でやっている、またはそういうものだと認識しているから出来るだけで、原理を知ればさらに理解が深まるだろう。

「ししょー。僕には難しいよぉ」

 噂をすればなんとやらだ。そうだな、せっかくだしブルーには魔法の実践をしてもらうか。

「そうだな、ブルーは上級以上の魔法だと何が使える?」
「えっとねー、この前の激流波デラウェイブでしょ? あと落氷柱ラクヒョウ堅水牢ウォープリズン水循環治療ウォサキュレ、あとは吹雪嵐スノーストームかなぁ今パッと思いつくのは」
「んじゃこの的に吹雪嵐スノーストームをぶつけてみてくれ。威力は抑えろよ?」

 俺が別の場所に出した土壁にブルーが対峙する。魔力の流れを見ている限り、ちゃんと威力は抑えてくれそうだ。ブルーが手を前に出し的に向かって魔法名を呟く。
 スノーストームは的の足元から発生し、包み込むようにしてその場で回転を始める。ブルーも威力を抑えるために魔力をコントロールして、スノーストームの範囲を頑張って縮めているのだろう。
 その的は風と氷による鋭い斬撃が発生し、ズタボロになっていく。ものの3分ぐらいで的が倒れ、ブルーが褒めてと言わんばかりの顔をしていた。

「よしブルー、凄いぞ!」
「へっへーん」
「んで、どうやってあの的の足元から魔法を出した?」
「え、だってこの魔法はそう言うもの……あ! そうか!」

 ブルーも何かを掴んだらしい。自分が持っている常識も魔法を使う上では非常に重要だ。当たり前だと思っている事にもヒントは存在する。
 そんな様子を見ていたエリィもヒントを掴んだのか、さっきよりもスムーズに魔力玉が動くようになり始めた。
 いいぞいいぞ。こうやって切磋琢磨する相手がいるのは美しいものだ。
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