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第1章 魔法を極めた王、異世界に行く

24:遠隔-1

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 盗賊団の襲撃から2ヶ月。あれからこの森に侵入者はなく、首も回収されていたので騎士団は本当にここまで入ってこないのだろう。修行に集中できるのはありがたいことだ。

「師匠? 師匠のアレってどうやるんですか?」
「ん?」

 ダンジョンタイムアタックで遊んでいると、不意にエリィが訪ねてきた。どうやら魔法を体から出すのではなく、空中で生成し発動させる方法が気になったようだ。
 確かに今のブルーもエリィも基本的に魔力を練ってから手や足から発動させるのが主流だ。俺がタイムアタックしてる時に、視界に入った魔物を手をかざしたりせず空中から放つのが気になったのだろう。
 これにはブルーも教えてほしいとせがんで来た。

「師匠のアレ、僕もやってみたけど上手くいかないんだよなぁ」
「ブルーも? なんとなーく感覚はわかるんだけど、発動しようとしても上手くいかないのよね」

 2人とも俺の戦いを見て学ぼうとする心意気が素晴らしい。確かにアレはまだ教えてなかったな。
 アレは色々と複合させる方法だから……ま、やってみて出来なければまた基礎からやっていけばいいか。

 俺たちはダンジョンを後にしてアジトまで帰ってきた。
 2人には地面に座ってもらい、肩の力を抜いてリラックスしてもらう。

「これから2人にしてもらうのは、純粋に魔力や魔素だけを感知する魔力感知センシングだ。以前魔素を感じた応用だ」
「「はい!」」
「心を鎮めて、魔素や魔力を目を閉じた状態で感じなさい。そして目を開けずに、俺が何個か魔力玉を出すから、同じ数の魔力玉出しなさい」

 俺が二つの魔力玉を出すと、2人とも両手の上に魔力玉を出してきた。さすがにここまでは基本の応用なので問題なく出来ている。
 さて、お題はその次だ。

「よしいいぞ。そしたら次は、作った魔力玉を両手で前に押し出し、両手を手前に引いても動かないようにその場に留めてみろ」

 2人とも手で魔力玉を前に出す。そして手を引いてその場に魔力玉を置いてくるはずが、どうしても手の動きに合わせて戻ってきたり霧散してしまう。
 何度か繰り返しやってみるが、留まっても数秒だけだ。段々と2人からため息や声が漏れ始める。

「ヒントだ。魔素を感知して魔力玉に組み込むようにしてみろ。手を離すときは魔力をゆっくり細くするイメージをして、無くなっていく魔力と同じ量の魔素を取り込ませるんだ」
「「はい!」」

 魔力感知センシングによって、魔力玉に感知した外部からの魔素を取り込ませるようにコントロールする。その場で魔力を留めておくのは魔力滞留マナステイと呼ばれる複合技だ。
 魔力滞留マナステイに関しては、空間把握と綿密な魔力操作を必要とし、視覚に頼るより感覚でわからせた方がいい。
 2人とも何度か繰り返すうちに、短時間だが魔力をその場に残すことに成功しはじめた。
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