修行大好き魔王様、異世界でもみっちり修行して世界を回るそうです

ねっとり

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森を出て世界へ

29:道中

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 森を出るまでの間、お互いに自己紹介をしておいた。外に出ると、そこには騎士団が乗ってきていた馬が繋がれていた。馬車などはなく、ここから村を2個経由して街へ向かうらしい。
 まぁ俺達には身体強化される魔力布衣もあるし、森を毎日走って体力も作っていたから馬について行くぐらいなら問題ないだろう。
 そんな話をすると、騎士達には驚かれた。

「エリィ、ブルー。走るけどいいよな?」
「はーい」
「僕も平気ー」

 騎士団の面々も最初は半信半疑だったが、馬と同時に走り出して目を丸くした。馬と同じスピードどころか、若干抑え気味で走っている。1時間ほど初めて見る景色を堪能しながら馬達について行き、途中の昼休憩時に金髪美人ーー名前はヘイムリアと言うそうだーーが俺達に話しかけてきた。

「休憩したい時はいつでも言ってくれ。このペースなら夕方過ぎには最初の村に到着できるだろう」
「わかった。俺たちは大丈夫だから、そちらのペースに合わせるよ」

 エリィとブルーにも確認したが、特別疲れてもなさそうだ。森での修行の成果が出ているのだろう。体力は何をするにも大事だからな。

 昼休憩が終わりさらに走る。途中2回ほど休憩を挟むと、ようやく目的の村が見えてきた。
 さすがに3時間近く走ってきたので、エリィもブルーも少し疲れが見える。こりゃ体力の修行はまだまだ続けないとな。
 そんなことを考えていると、ヘイムリアが村の入り口に向かっていった。

「ようこそいらっしゃいましたソルダム騎士団の皆様」
「あぁ村長殿、出迎え感謝する」

 ヘイムリア達はこの周辺を警備するために、日替わりで別の騎士団と交代しながらよく立ち寄るらしい。村は小さいながらもそれぞれの家庭に活気があり、賑やかないい雰囲気だ。

「おや? そちらの方々は?」
「この方達はフリード様のお客様だ。一緒にドータヌの街まで向かっている」
「おぉ、フリード様! それでしたらぜひ宴を開きましょうぞ」

 村長が俺たちの方を見ると、急に宴だと言い始めた。歓迎されるのは嬉しいんだが、別に何かしてる訳でもないのに施しばかり受けるのは少し気が引ける。
 エリィもブルーも同じ気持ちらしく、せっかくだから森で貯めた食料を提供することにした。

「おぉ、これは状態もいいし……なんとありがたい。些細ささやかではありますが、ぜひ宴を楽しんでくださいませ」

 そう言われると、村の奥に案内された。この村には普段から騎士団も泊まることがあるので、空家を3軒ほど用意してあるらしい。ヘイムリア曰く、今日はここで休んで明日出発すそうだ。

 村の中心には広場も用意されていて、そこに村人達が椅子やテーブルを運んでくる。騎士団のメンバーも空家に鎧を脱ぎ捨てて手伝い始めているので俺達も一緒にやることにした。
 村長達には最初遠慮されたが、せっかくの宴なら一緒に準備するところからした方がいい。エリィもブルーもやる気満々だし、全員で用意すれば時間も短くて済むだろう。

 辺りもすっかり暗くなった頃、いよいよ宴がスタートした。広場の中心には薪を組み込んで大きな炎が舞い上がる。
 俺たちが提供した食材以上に料理が振る舞われ、ブルーはずっと目を輝かせながら飯を頬張り続けている。騎士団も顔馴染みの村人と話したり、エリィは子供達に好かれたりなど思い思いに宴を楽しんだ。
 前世でもあまり大人数で食事をする機会がほとんどなかった俺は、なんとなくだが端っこで1人酒に口をつけて様子を見ていた。

「アーベル殿は賑やかな場が苦手なのかな?」

 そんな俺に声をかけてきたのはヘイムリアだ。鎧からはわからなかったが、すらっとした細身の体に豊満な胸。エリィに負けずとも劣らない美人だ。
 さっきまで村長と飲んでいたが、俺が1人なので気にして話しかけてくれたのか。

「まぁ……な。この世界で知ってる顔はあそこの2人だけだし」

 言った瞬間に「しまった」と思った。この世界で、なんて言ったら怪しまれるかもしれない。だが、そんな予想を裏切るようにヘイムリアが口を開いた。

「そうか。深くは聴かないが、3人は水龍様に保護されて育ったのだろう? なら、今後はこうやってもっと色んな人と関わりを持つといい」
「あー、そうだな」

 どうやら俺達を孤児か何かと勘違いさせたっぽいな。まぁ深く聴かれないならありがたいし、わざわざこっちから喋るような内容でもない。
 その後も雑談を交えながら喋っていると、エリィが今度は村の男達と喋ってる事に気付いた。まさか……エリィは誰にもやらんぞ?

「アーベル殿、この村を見てほしい。ほら、エリィ殿も誰からも差別される事なく楽しんでいるではないか」

 その言葉にハッとした。口では亜人差別はしないと言われて着いてきたのだが、確かにこの村でエリィに余所余所しい態度をとる人間がいないのだ。あまりにも自然に馴染んでいたので気にならなかったが、本当に亜人差別はないらしい。

「……ありがとうな」
「いや、お礼ならフリード様に言ってくれ」

 よかった。そう心の底から思うことが出来た。今までのトラウマに負けまいという気持ちは本物だったのだろう。それでも村人がエリィを特別視などせず、普通に接してくれたおかげで今のあの笑顔がある。

「本当にいい領主がいるんだな」
「もちろんだ。フリード様ほど出来た人間を私は知らない」

 ヘイムリアがフリードの話を始めると、どんどん熱が入っていき話が一向に途切れる気配が無くなった。さらに騎士団がお酒を運んでくるものだから、俺もヘイムリアからお酌をされて飲み続けいく。ヘイムリアはどんどん酔っ払っていき、最後の方は言葉にならないほど呂律が回らなくなって酔い潰れた。
 そんな団長を見た一人の騎士ーー名をカームだったかーーが、ヘイムリアの近くまでやってきた。

「旦那、付き合ってもらってすまねーな」
「いや、俺も楽しかったしな」

 さらにカームから酒を受け取り口をつける。さっきまで飲んでいたのよりも若干アルコール度数が高いのか、口当たりがまた違う旨い酒だ。

「団長はフリード様を親のように思っててね。もちろん俺たちもフリード様を慕ってる。ほんと、あんな野郎どもが……」
「ん?」
「あ、すまない。忘れてくれ。明日もまた移動するから、早めに寝たほうがいいぞ。ヘイムリア団長と同じぐらい酒を飲めるなら、明日二日酔いになるかもだしな」

 カームがヘイムリアを肩に担ぐようにして運んで行く。周りを見ると村人達もそれぞれの家に帰っていき始めており、どうやら宴会は自然解散になっていた。
 俺もまだ食べてるブルーとほろ酔い状態のエリィを捕まえて当てがわれた家まで運んでいく。

「ししょぉ。楽しいれすよー」
「僕もー。料理美味しかったー」
「はいはい。明日もあるんだから、もう寝ますよ」

 家はそれなりに広くベットも3つ用意されていた。二人にクリアをかけて汚れを落としてやると、それぞれのベットに潜り込む。
 明日はまた別の場所に村に向かうそうなので、また景色を見ながら旅を楽しむ事にしよう。
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