修行大好き魔王様、異世界でもみっちり修行して世界を回るそうです

ねっとり

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森を出て世界へ

30:てがかり-3

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「見苦しい所を見せた、すまない」

 それから俺たちはそれぞれ通された宿に向かい、荷物を置くと村の宴に招待された。この村でもエリィに対して差別するような人間はおらず、子供から大人まで全員が受け入れている。むしろ一部に獣人の姿もあり、全員が仲良く酒を飲みつつ談笑していた。

「いや、大丈夫だ。あれが例の聖人教会って奴だろ?」

 ヘイムリアが酒を片手に俺の席までやってきた。先程のゴタゴタを謝りにきたのだろう。確かにあんな奴らがいるんじゃエリィの為にはならないが、先程の対応を見る限りは問題もなさそうだ。
 だが、ヘイムリアの顔は問題しかなさそうな表情をしている。

「そう……だな。フリード様さえ無事ならそうだろう」
「なんだ? 問題でもあるのか?」
「実はなーー」

 ヘイムリアがポツリポツリと話し始める。
 フリードは亜人に対して差別をしない。差別をしないが特別待遇をしてる訳でもない。全員が平等に暮らし、手に職をつけ努力が報われるような統治をしている。だから、人間にも亜人にも救いの手を伸ばす時は平等だし、犯罪などを起こした際の裁きも同じだと。
 それが気に食わないのが聖人教会。彼らは施しなどの全ての優先権が人間にあると主張しており、犯罪者などは厳しく罰するが亜人には一切の慈悲はない。そうする事によって人間の偉大さを知らしめて、この世界を人間だけで支配するのがいい事だと信じ込んでいる。
 さらには、数世代前に第一宗教として認められたのをいい事に国を裏から動かそうとしている節もあり、国の政治に対しても発言権が大きい。これには現在の国王も対抗できておらず、亜人に対しての差別意識は少ないものの声を上げられていないそうだ。

 ただフリードは違う。フリードの本名はフリード・ブルンクリーと言い、ブルンクリー一族は元々この一帯を統治していた。彼らは、聖人教会が台頭してくる前から亜人を受け入れ続けており、その技術や生活から人間達の発展に貢献できないかと模索し続けていた。
 数世代前の国王が国から全亜人を追い出す時には、命令に従う為に一度亜人達を領内から移住してもらった事はあるが、十数年後に亜人による国への貢献を示し、「ブルンクリー領内だけは亜人を住まわせてよい」に変化した。
 それも聖人教会から猛反発が出たが、当時の国王がなんとかしたそうだ。それ以来亜人はブルンクリー領内にはいるそうで、この国の他の地域にはいないだろうと。ただ、エリィの件を考えるともしかしたら隠れて亜人は住んでいるかもとの事だ。

「なるほどね。でもそれならブルンクリー家が衰退することはないんじゃないか?」
「そこなんだが……」

 さらにヘイムリアが言葉を続ける。その貢献も現在のフリードになってからは殆ど目新しい物がない。そこに教会が目をつけ、今までの技術だけでやっていけるのだからもう亜人を排除するべきだと声を上げ始めたそうだ。
 確かに今のフリードにはこれと言った目ぼしい貢献がある訳ではない。それでも領民からは慕われているし、街の鍛冶屋や魔術師達も新しい技術を生み出そうと毎日研究を重ねている。それでも技術の進歩などすぐに身を結ぶものでもないし、だからといって頑張っている人間や亜人を追い出すのはおかしい。
 それを教会は亜人がいるから遅れているだの、亜人が邪魔をしているだの文句を付けているそうだ。

 そんな状況だからこそ今はできる事ーー例えば領内や領外から来たお尋ね者や賞金首を狩って国に貢献してる事をアピールしているのだとか。たまたま今回俺達を迎えに来たのは人間の騎士だけだが、騎士団の中には亜人もいるらしい。体力や力に特化したドワーフや魔法部隊にいるエルフ、遊撃隊や偵察などをこなす獣人など。
 それぞれの得意分野を見つけ、この領内を守っているそうだ。

「領内で盗賊騒ぎや犯罪者が出始めたのはここ数年なんだ。そして聖人教会が騒ぎ始めたのも同時期」
「んじゃそいつらが事件を引き起こしてると?」
「私もそう思う。……だが、証拠がないんだ」

 今まで捉えた盗賊や犯罪者の中には人間も亜人もいた。しかし捕らえた後に罪人を教会がすぐ何処かに連れて行くらしい。そしてその後の詳細は不明。
 怪しいと思い、教会の内部を調べたこともあったが何も出てこなかった。その結果、教会はさらに勢いづいて今フリードが追い詰められてるという。

「なるほどね。まぁ俺達に被害がないならそれでいいさ」
「そうだな。そうはならない様に必ず私が守ってみせるよ」

 そう言ったヘイムリアは若干の悲しそうな顔を浮かべた。よっぽどこの領内での出来事に胸を痛めているのだろう。
 俺としては変なちょっかいを出される前に退散したいんだがな。とりあえず御礼を受け取ったらそのまま出ていくに越したことはなさそうだ。
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