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森を出て世界へ
30:てがかり-2
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村を出た俺たちは、また走り続けた。今回も数回の休憩を経て村へと向かって行く。道すがら魔物に何度か襲われたが、俺たちの敵ではない。エリィもブルーも簡単に敵を殲滅し、その殲滅力に騎士団がボーゼンとする場面も。
そんな道中で騎士団も「客人だけにやらせる訳にはいかない」と魔物と対峙し、その強さを垣間見ることが出来た。
ま、俺から言わせれば発展途上だ。魔力も上手く使えてないし、身体能力と鍛錬した剣技で敵を葬っている。ただ、スキルを使うと飛躍的に攻撃力などが上がり、殲滅スピードも段違いになる。魔法と同じように口に出すことをトリガーにして発動しているのだろうか。
そういえば盗賊の頭もそんな事を口に出してでいたっけな。前の世界には無かった技術、この能力を俺も手に入れられれば、俺はさらに強くなれる。
休憩時にスキルについて聞いてみた。エリィから聞いていたのとほぼ同じで、やはりスキルは武器がないと発動しないと言う。さらにスキルは天性のものと鍛錬した結果で獲得することが多く、鍛錬に関してはスキルの説明がある本が存在する、と。ただ、本を読んでその通りに鍛錬しても身につかないこともあると事だ。
なるほどね。街についてから時間があるなら、そのスキル本を探してみるのも面白いかもな。
そんな事を考えながらも走っていくと、夕方前には二つ目の村に到着した。ここも例に漏れず、騎士団たちを迎えるようの家が用意されており、さらには宴もあるそうだ。
そんな話を聞きながら村の入り口に向かうと、村の中央付近に人だかりが出来ている。どうやら真ん中には数人のフードを被った怪しい人間がいて、周りの村人たちに向かって何か叫んでいるらしい。
その異様な光景にヘイムリアを先頭に、全員が馬を降りて近付いていく。すると、大きな声で叫んでいる内容が聞こえてきた。
「この世界は人間の手によって支配されなければならないのです!」
「なっ……」
フードを被った人間は、それぞれが順番に言葉を発していた。「亜人など滅びても構わない」だの「人間以外は全て家畜と同等」だの、酷い言いようだ。どうやらコイツらが、人間至上主義の「聖人協会」らしい。
そんな姿を見たヘイムリアが人垣を分けて前まで進むと、フードの奴らの前に立ちはだかった。
「貴様ら! フリード様の領内でその宗教勧誘は禁止だ!」
すると1番前にいたフードが前に出てきた。大人しく引き下がるわけでもないらしい。
村人もヘイムリアが現れたことによって、少し安堵したような表情だ。
「何を! 神は我々聖人教会にこそ祝福を与えているのです! 我々はそのお手伝いをしているだけなのですぞ!」
「だからその手伝いが禁止なのだ! 即刻去れ!」
ヘイムリアが村の入り口を指差して退去するように指示している。だが、それでも「人間が1番偉い」だの「神は人間だけを愛している」だの「亜人のせいでこの世が荒れている」だの喚いている。
あの駄女神が人間だけを愛してるなんて思わんけどな。多分菓子でも食いながらなるようになれって考えてるだろ。
「またこの近くで亜人による村の襲撃がありました! 亜人を放置しているからこそ起きた悲劇! この村も襲われるかもしれませんぞ!」
「その盗賊どもの件はすでに解決している! 貴様らに言われるような事ではない!」
話が噛み合わないとはこの事だろう。ヘイムリアが何を言っても一番前の男は発言を訂正しない。それどころかヘイムリアの話を一切聞かずにしゃべりたい事を喋り続けてる感じだ。
あんなに話が通じないとなると、こりゃ時間がかかるだろうな。
そんな事を考えていると、前にいたフードの男がこっちを指差し始めた。
「ほらごらんなさい! 亜人が! 亜人がこの村を襲いにきていますぞ! 亜人などがいるから人間が犯罪に走るのです!」
ちょっと殺そうと思ったが、さすがに公衆の面前で公開処刑してはいい印象がなくなるだろう。エリィは急に目線がこっちに集まったのを感じ、少し隠れるように俺のそばにやってきた。
すると、村人の一人が声を上げた。
「なぁにバカなこと言っとんのだ。こんなめんこい子が犯罪なんてするわけねーべよ」
「そうだそうだ!」
「人間にだって悪いヤツはいるぞー!」
「そうだそうだー!」
一人の言葉を皮切りに、村人達が一斉に喋り出した。その声はフードの男の声を遮り、何を発しても村人に届いていない。
ヘイムリアもちゃっかりそれに便乗し、さっきから「出て行け!」だの「かーえーれ!」だの言っている。ヘイムリア以外の騎士は、剣に手を当てフード達が何をしてもすぐ対処できるように構えながらプレッシャーを放っている。
フードの人間は何を言っても理解されない事に苛立った様子を見せると、「フリードも終わりが近いのだ! 亜人に肩入れをする領民ども、後悔してからでは遅いからな!」と捨て台詞を吐いて逃げていった。
村からそいつらが居なくなると、なぜか歓声があがる。そしてその中心には怪しい奴らを追い払ったとヘイムリアが感謝されていた。
あれ? あいつ便乗してただけじゃね?
そんな道中で騎士団も「客人だけにやらせる訳にはいかない」と魔物と対峙し、その強さを垣間見ることが出来た。
ま、俺から言わせれば発展途上だ。魔力も上手く使えてないし、身体能力と鍛錬した剣技で敵を葬っている。ただ、スキルを使うと飛躍的に攻撃力などが上がり、殲滅スピードも段違いになる。魔法と同じように口に出すことをトリガーにして発動しているのだろうか。
そういえば盗賊の頭もそんな事を口に出してでいたっけな。前の世界には無かった技術、この能力を俺も手に入れられれば、俺はさらに強くなれる。
休憩時にスキルについて聞いてみた。エリィから聞いていたのとほぼ同じで、やはりスキルは武器がないと発動しないと言う。さらにスキルは天性のものと鍛錬した結果で獲得することが多く、鍛錬に関してはスキルの説明がある本が存在する、と。ただ、本を読んでその通りに鍛錬しても身につかないこともあると事だ。
なるほどね。街についてから時間があるなら、そのスキル本を探してみるのも面白いかもな。
そんな事を考えながらも走っていくと、夕方前には二つ目の村に到着した。ここも例に漏れず、騎士団たちを迎えるようの家が用意されており、さらには宴もあるそうだ。
そんな話を聞きながら村の入り口に向かうと、村の中央付近に人だかりが出来ている。どうやら真ん中には数人のフードを被った怪しい人間がいて、周りの村人たちに向かって何か叫んでいるらしい。
その異様な光景にヘイムリアを先頭に、全員が馬を降りて近付いていく。すると、大きな声で叫んでいる内容が聞こえてきた。
「この世界は人間の手によって支配されなければならないのです!」
「なっ……」
フードを被った人間は、それぞれが順番に言葉を発していた。「亜人など滅びても構わない」だの「人間以外は全て家畜と同等」だの、酷い言いようだ。どうやらコイツらが、人間至上主義の「聖人協会」らしい。
そんな姿を見たヘイムリアが人垣を分けて前まで進むと、フードの奴らの前に立ちはだかった。
「貴様ら! フリード様の領内でその宗教勧誘は禁止だ!」
すると1番前にいたフードが前に出てきた。大人しく引き下がるわけでもないらしい。
村人もヘイムリアが現れたことによって、少し安堵したような表情だ。
「何を! 神は我々聖人教会にこそ祝福を与えているのです! 我々はそのお手伝いをしているだけなのですぞ!」
「だからその手伝いが禁止なのだ! 即刻去れ!」
ヘイムリアが村の入り口を指差して退去するように指示している。だが、それでも「人間が1番偉い」だの「神は人間だけを愛している」だの「亜人のせいでこの世が荒れている」だの喚いている。
あの駄女神が人間だけを愛してるなんて思わんけどな。多分菓子でも食いながらなるようになれって考えてるだろ。
「またこの近くで亜人による村の襲撃がありました! 亜人を放置しているからこそ起きた悲劇! この村も襲われるかもしれませんぞ!」
「その盗賊どもの件はすでに解決している! 貴様らに言われるような事ではない!」
話が噛み合わないとはこの事だろう。ヘイムリアが何を言っても一番前の男は発言を訂正しない。それどころかヘイムリアの話を一切聞かずにしゃべりたい事を喋り続けてる感じだ。
あんなに話が通じないとなると、こりゃ時間がかかるだろうな。
そんな事を考えていると、前にいたフードの男がこっちを指差し始めた。
「ほらごらんなさい! 亜人が! 亜人がこの村を襲いにきていますぞ! 亜人などがいるから人間が犯罪に走るのです!」
ちょっと殺そうと思ったが、さすがに公衆の面前で公開処刑してはいい印象がなくなるだろう。エリィは急に目線がこっちに集まったのを感じ、少し隠れるように俺のそばにやってきた。
すると、村人の一人が声を上げた。
「なぁにバカなこと言っとんのだ。こんなめんこい子が犯罪なんてするわけねーべよ」
「そうだそうだ!」
「人間にだって悪いヤツはいるぞー!」
「そうだそうだー!」
一人の言葉を皮切りに、村人達が一斉に喋り出した。その声はフードの男の声を遮り、何を発しても村人に届いていない。
ヘイムリアもちゃっかりそれに便乗し、さっきから「出て行け!」だの「かーえーれ!」だの言っている。ヘイムリア以外の騎士は、剣に手を当てフード達が何をしてもすぐ対処できるように構えながらプレッシャーを放っている。
フードの人間は何を言っても理解されない事に苛立った様子を見せると、「フリードも終わりが近いのだ! 亜人に肩入れをする領民ども、後悔してからでは遅いからな!」と捨て台詞を吐いて逃げていった。
村からそいつらが居なくなると、なぜか歓声があがる。そしてその中心には怪しい奴らを追い払ったとヘイムリアが感謝されていた。
あれ? あいつ便乗してただけじゃね?
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