ちょっと不思議なツアー旅行店 〜日本は魅力がいっぱいですよ!〜

ねっとり

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プロローグ:バイトの始まり

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 都内某所。
 そこは八人の王子がいたとかいないとか言われる場所。
 そんな所に1人の女子高生が住んでいた。

 今はバスに乗って物思いにふけている。
 彼女の名前は『|天童結花(てんどうゆか)』、高校2年生だ。
 華の高校生活……と言う訳ではない。

 両親は転勤族であり、今まで友達が出来た覚えは少ない。
 今も両親は海外出張に行っているため、基本的には1人だ。
 兄弟もおらず、近所付き合いもほとんどない。
 漠然と高校生活を送っていた。

(あー、バイトしたいなぁ……)

 別にお金に困ってる訳ではない。
 むしろ毎月十分なお金が振り込まれているので、余らせているほど。
 しかし彼女の趣味は服やアクセサリーではなく、本を読むこと。
 それゆえそこまでお金がかからない生活を送っている。

(なーんかないかなぁ……でもブラックは嫌だなぁ……)

 バイトをしたいと思い始めたのは最近だ。
 学校にいても、周りはキラキラしていて馴染めそうにない。
 人と話したいが、友達の作り方は忘れた。
 いつも1人で本を読んでいる。
 話しかけられることも少ない。
 話しかける勇気もない。
 簡単に言えば、人の温もりが欲しかったのだ。

 ぼーっとしながら窓の外を見る。
 いつもの景色、いつもの日常。
 これから帰って夕飯まで時間を潰すだけの毎日だ。

「◯◯通過します」
「あっ」

 結花が気付いた時には遅かった。
 自分が降りる筈のバス停を通り過ぎている。
 ぼーっとしすぎたのだ。
 次で降りて戻るしかないだろう。

 結花は近くにあるブザーを押して、次のバス停を待った。
 改めて車内を見回すと、結花以外乗客がいない。
 今日は早めに学校が終わったとは言え、ここまでガラガラなのは初めてだ。

 次のバス停はすぐに到着した。
 見た覚えがない場所。
 1つ乗り過ごすだけで異世界に来た気分になる。

 結花は反対側のバス停を探して向かった。
 周りは殆どが畑だ。
 ここでスローライフしたら……などと小説を思い出す。

(ま、現実にはありえないよね)

 結花は誰に聞かれてる訳でもないツッコミをしながらバス停に立った。
 もう間も無く次のバスが来るだろう。
 その時、バス停に張り紙があるのに気付いた。

(ん?  なにこれ……バイト募集……中?)

 そこには大きくバイト募集中と書かれた紙が貼られていた。
 場所は駅の近くだ。
 仕事はお客様のツアー対応。
 土日祝しかやっておらず、結花の条件にはぴったりだ。
 だが……時給は650円。安すぎる。

(何これ……最低賃金割ってない?)

 別にお金には困ってないが安すぎる。
 普段なら見向きもしないが、何故かこの求人に惹かれているのに気付いた。
 見学も可能。一度見に行くだけなら……。
 そう考えているとバスがやってきた。
 結花はその場所をスマホで写真を撮りバスに乗り込む。
 明日は土曜だ。見学しに行ってもいいだろう。
 結花が筈に乗り込むと、求人の紙がスッと消えた。



 ◇



 その場所はすぐに見つかった。
 駅から歩いて5分。商店街の通りを1つ曲がった場所にあるビルの2F。
 いつも通る場所だが、こんな所にお店があるとは思わなかった。

 ビル横の階段から上にあがる。
 階段を登りきるとドアがあり、インターフォンも一緒にある。
 結花は勇気を出してそのインターフォンを鳴らした。

 すると中からドタドタと人が走る音がした。
 音はドアの前で一度止まると、今度は深呼吸する音。
 どうやら相手も緊張しているらしい。
 ゆっくり3秒ほど数えるとドアが開いた。

「すいません、新聞はいらないんですが……」
「違いますよ!?」





「いやーすまんすまん。てっきりいつもの新聞屋かと思ってさ」

 結花は事務所の応接間に通された。
 ドアから入ってすぐに応接間。
 そこからさらにふた部屋ほど繋がっているらしい。
 部屋は非常に簡素な作りになっている。
 何処の国のお土産かわからない物まで飾ってあった。

「えっとバイト募集の張り紙を見たんだっけ?」
「あ、はい。そうです」

 結花が珍しそうに周りを見ていると、この店の主人だろう男がコーヒーを出してきた。
 その男は黒髪でサラサラヘアー。眉毛に前髪がかかるほど長い。
 切れ長の目とすっきりとした鼻。薄い唇が全体を表している。
 どう見てもイケメンだ。
 身長もあり、全体的に細身。
 まるでおとぎ話の王子様のような男である。

「俺の名前は『天上呂功あまがみりょこう』だ。まぁ店長でいいよ」
「あ、私は天童結花って言います。結花って呼んでください」

 お互いに自己紹介をする。
 結花が持ってきた履歴書を受け取った店長がそれをまじまじと読んでいく。
 しばらく紙と睨めっこしていると、不意に口を開いた。

「あの紙を見たってことは素質もあるのか……」
「えっ?  なんですか?」
「あぁすまんすまん。こっちの話だ」

 店長がごまかすように手を振る。
 結花は頭に疑問符を浮かべたままだ。
 それからすぐに面接が始まるのかと思いきや、店長が腕時計を見始めた。

「これから実地見学をしよう。ちょうどお客さんが来る時間だ」
「え?  あ、はい!……でも制服とかは?」
「あーいらんいらん。そのままでいいよ。汚れることもないからな」

 ちょうどその時、奥の部屋から人の話し声が聞こえて来た。
 声からして若い男女だろう。
 店長がドアを開けてそちらの方へ向かう。
 そして中から出てきたのは、ファンタジーの世界にいそうな服や鎧を着た男女だ。
 剣や盾、杖まで持っている。

 しかも結花には何を喋ってるのかまったくわからない。
 むしろこの事務所にもう一つ出入り口がありそうには見えない。
 どこから来たのだろうか。

「えっ?  あの、えっ?」
「ん?  あぁすまんな。ちょっとこっち来い」

 そう店長に呼ばれて結花が近付くと、おでこのあたりに指を当てられた。
 店長が何かを呟くと結花の体が少し暖かくなる。
 そしてその感覚が消える頃には、やってきた3人組の言葉が理解できるようになっていた。

「えっ?  な、なんですかこれ……」
「まぁいいから。とりあえず見てなって」

 店長が笑顔で結花に答える。
 その疑問は解消出来そうにない。
 とりあえず結花も椅子に座り事の顛末を見届けることにした。

 どうやら3人組は美味しいご飯を食べたいらしい。
 特に肉を。
 あんまりお金はないと言っているが、店長は笑顔で大丈夫だと答えている。

(お肉かぁ。ここら辺だと速攻ステーキとかかな?  でもあそこ高いからなぁ……)

 そんな事を考えていると結花が呼ばれた。
 これから一緒に向かうらしい。
 男女は持っていた剣や盾をその場に置いている。
 1人の男の子がずっと「本当に魔物はいないのか!?  大丈夫なんだな!?」と言っていたのが印象的だ。
 現代日本に魔物がいるはずがない。
 結花は彼らの正体が少しだけ予想できていた。

(いやぁ……でもまさかねぇ?)

 店長に言われるがまま、一緒に事務所を出た。




「店長、ここは……」
「おう、安くて美味い肉が食える場所だ」

 事務所から徒歩6分。
 まず外に出た瞬間彼らは驚いて周りを見続けた。
 車など見た事ないのか。
 むしろ鉄の悪魔だと叫んですらいた。
 周りから見れば、田舎から出てきた中学生ぐらいに見えるのだろう。
 近くを通る人はニコニコしながらその姿を見守っていた。

 彼らには全てが珍しいらしい。
 駅前の高い建物を見てはダンジョンと叫んでいるし、車に人が乗っているのを見れば囚われていると指をさした。
 一緒にいる結花が少し恥ずかしくなる。
 だが女の子が「平和なんだね……」と漏らしたのを聞き逃さなかった。

 そして歩いて目的地に到着した。
 その場所は牛丼で有名なチェーン店だ。
 確かに肉が食べられる。
 安い。卵も追加して汁だくにしても最高。
 お財布にも優しい場所だ。
 しかしツアーとして来たお客さんに紹介する場所なのだろうか。

「店長。もうちょっといい所なかったんですか?」
「何を言うか。ここは安くて美味い。最高じゃないか!」
「いや、まぁそうですけど……」

 中に入って注文しようと席に着く。
 豊富なメニュー表を前にしてどれにしようかから目を輝かせている。
 一番前にいた男の子は、店長に2個頼んでいいか聞いているぐらいだ。
 店長はそれぞれの注文を聞くと券売機へ向かった。
 全員の分を買って席に戻ってくる。

「ミーナ!  見たかよ!  肉がいっぱいだぜ!?」
「いいから落ち着いて!  こっちが恥ずかしいわよ!」
「リック興奮しすぎだ。肉しか目がねぇな」

 3人が仲良さそうに笑っている。
 普段から一緒なのだろう。
 注文した牛丼が全員の前に運ばれて来た。

 箸の使い方がわからないらしく、3人はスプーンを借りて食べている。
 最初は米に戸惑っていたが、店長が卵をかけて一緒に食べる姿を見て真似をし始める。
 ……相当美味しかったのだろう。
 一瞬硬直した後、無言で掻き込み始めた。

 牛丼の並盛りは10分もしないうちに彼らの腹に収まってしまう。
 そのまま店を出て事務所まで戻る。
 彼らは持ってきた荷物を持ち上げると、来た時と同じ部屋へ向かった。

 その場には結花も呼ばれた。
 店長と一緒に向かうと、部屋の壁一面を覆うほど大きい門がある。
 それは真ん中に黒い渦を巻くように動いていた。

「ありがとー!  絶対またくるからな!」
「またよろしくお願いします!」
「次は別のギュードンを食べますからね!!」

 賑やかな3人組がその門へと帰っていく。
 黒い渦が繋がっている場所を映し出す。
 そこは……だだっ広い草原が見えた。

 結花も手を振り3人を見送った。
 そして完全に声が聞こえなくなると、結花は店長に顔を向ける。

「お?  なんか聞きたそうな顔だな?」
「もちろんですよ!  いきなり見学とか言われて訳わかりません!」
「ははは。そう怒るなよ。ちゃんと説明するからさ」




 応接間に戻ると、店長がコーヒーを淹れなおしてくれた。
 結花が一口啜ると、ほろ苦さと砂糖の甘さが絶妙にマッチしているのが感じられる。
 ふぅ、と一息つくと店長がニヤニヤした顔で結花を見てきた。

「それじゃ、何から説明しようかな」
「あの方たちは誰……いや何処から来たんですか?」
「理解が早くていいね。お察しの通り、彼らはこの世界の人間じゃない。異世界から来たんだ」
「……異世界!?」

 結花の予想通りだ。
 いや、絶対にありえないと思っていた予想通り。
 さすがに信じたくはないが、実際に見てしまっている。
 あの扉の奥は平原だった。
 さらに武器防具を装備した子供達。
 最初は理解できなかった彼らの言葉が、店長に触れられただけで理解出来るようになったのもそうだ。
 魔法……現代では確認されてない幻想ファンタジーでしか聞いたことのない言葉。
 ライトノベルなどでよく見るアレだろう。

「バイトとしての仕事はさっきと同じだ。彼らと一緒に行きたい場所へ付いていき、したい事をする。言葉が通じないからな」
「……なるほど」
「もちろん犯罪はなしだ。最も彼らが紹介する相手はそんな事をしないだろうがな」

 店長がバイトの説明をしていく。
 異世界から来た人を望みの場所へ連れて行き、その場を一緒に楽しむ事。
 基本的には店長も一緒だが、常連や近場・店長が手を離せない時は1人で行ってもらう。
 かかった費用は全部会社が出すから安心してほしい、と。

「そして結花。ここのルールだ」

 店長の雰囲気が変わる。

「一つ。ここでの話は他言無用だ。もし誰かに話せばーー」
「は、話したら……」
「誰も信じることはない。周囲からはいい年をして痛い子って認識になる」
「最低ですね!?」

 さらに店長は言葉を続けていく。
 一つ、顧客の詮索はしないこと。
 余計なトラブルに巻き込まれないために。
 一つ、顧客がこちらにいられるのは日本時間で48時間だけ。
 それ以上いると、時間軸がずれて元の世界に戻れなくなる。

「そして最後だ。バイトの時給は……650円!」
「それ法律違反ですからね!?」
「まぁ支払いが送れることもある」
「さらに最低じゃないですか!!」

 結花は自分で発言してなんだか、法律違反はすでに犯している気がしていた。
 彼らは異世界の住人なのだ。
 細かいことを言えば不法侵入にあたるかもしれない。
 この店に常識はあてはまりそうもなかった。

「もちろんバイトのメリットもあるぞ?」

 店長が働く上でのメリットを話し始めた。
 店が開くのは土日祝だけ。
 学生でも平日は勉学に集中出来るから安心!
 さらに顧客との旅行は全額会社持ち。
 一緒に楽しい日本旅行が出来る!

「そして……色んな人と出会える!」

 確かに結花の希望は人との触れ合いだ。
 だがそれはあくまでも日本人……いや地球人との事。
 しかし今日来た彼らは普通の人間だ。
 そしてあの美味しそうに、嬉しそうにご飯を食べる姿。
 結花はここでバイトするか悩んでいた。

 デメリットばかりではない。
 結花が考えてる間も店長がメリットを説明していく。
 今の生活は家でただ一人過ごすだけの生活。
 人と話すのも学校でたまにぐらいしかない。
 それなら……。

「わかりました。私、ここでバイトしたいです!」
「よぉし!  天童結花よ!  採用だ!」

 店長が嬉しそうな笑顔で結花を見る。
 その可愛らしい笑顔に一瞬結花は見惚れてしまった。
 そして店長が手のひらを上に向けながら結花に差し出す。

「ようこそ。異世界ツアー旅行店へ」
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