ちょっと不思議なツアー旅行店 〜日本は魅力がいっぱいですよ!〜

ねっとり

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商人とゲームセンター

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 今日はツアー代理店の営業日。
 朝から結花が出勤し、部屋の掃除に勤しんでいる。
 店長はタバコをふかしながら、書類とにらめっこをしていた。

 結花がバイトを始めてから2週間。
 前回の3人組以外に来客はない。
 その間色々と店長と話し、結花も多少なりとも知識がついた。

 一番驚いたのは異世界の多さだ。
 地球以外では一つぐらいしかないと思っていたが、実際は無数にあるらしい。
 そして色んな場所にツアー紹介者がいて、店長と連絡をとっているそうだ。
 たまに耳に手を当てて誰かと話しているのは、その紹介者だろう。
 いつもフランクに話をしていて、仲がいいのが伺える。

 そんな店長が壁にかかっていたカレンダーを見て結花に声をかけた。

「結花、お客さんだ。今日は常連さんだな」
「え?  あ、はい!」

 店長がそう話した瞬間、奥の扉が動いた音がした。
 異世界から人が来た合図だ。
 だが前回みたいに店長が迎えに行かない。
 どうやら常連は入り方を知っているらしい。

「はぁーい!  今月のタノシミをきました!」

 少し日本語が変な男だ。
 よくある言葉の訛りだろうか。
 ドアを勢いよく開けて入ってきた。

 男は結花を見て店長を見る。
 視線がすぐ結花に戻ってきた。
 いつもはいない人物に驚いたのだろう。
 見事な二度見だ。

「おジョーさん!  はじめまして!」
「えっ?  あ、はい」

 その男は商人のような出で立ちだ。
 体系はスリム。頭にはターバンのような物を巻いている。
 大きな袋を2つほど持っているが、中身に何か入っている気配はない。
 男は近づいて来ると、礼儀正しく挨拶をしはじめた。

「私は『ムンバ』って言いまーす!  おジョーさんお綺麗ですネ!」
「あ、結花っていいます。あ、ありがとうございます……」

 中々の濃いキャラに結花もたじたじだ。
 他にも結花の容姿を褒める褒める。
 少し栗色の入った美しい髪だとか、目が丸くて大きいので可愛いだとか。
 確かに結花は可愛いと言われたことはある。
 だがそれを信じることはなかった。
 単純に自分に自信がないのだ。
 しかしそんな結花の気持ちをよそにガンガン褒めて来るムンバ。
 結花も少し苦笑いだ。

「おう、仲良く出来そうだな。ちょっと俺は手が離せないから頼むわ」
「えっ!?」

 何処を見ればそう思うのだろうか。
 そんな疑問が浮かんできたが、ムンバはニコニコ笑っている。
 確かにややハンサムではあるが、流石に可愛い連呼は恥ずかしい。
 だが店長に言われては行くしかない。
 結花はムンバに向かって口を開いた。

「ムンバさんは何処に行きたいんですか?」
「はーい!  ゲームセンターです!」
「えっ?」




 ◇



 事務所から徒歩5分。
 有名なチェーン店のゲームセンターに到着した。
 ムンバは笑顔でずっとニコニコしている。

 結花がゲームセンターに来たのはいつぶりだろうか。
 中学時代に友達とプリクラを撮りにきた覚えはある。
 自分の顔のはずが、別人のように見えたのはいい思い出だ。
 それ以外ではゲームセンターに来た覚えがない。

   中に入るとビデオゲームなどもあった。
   どうやらどの台も『MIK』と言う人が一位を取っている。
   相当うまい人なのだろう。
   ぼーっとそれを眺めていると、ムンバが話しかけてきた。

「ユカさん。ぜひあれやりましょー!」

 ムンバがニコニコしながら指をさしたのはUFOキャッチャーだ。
 わざわざ異世界から来てすることがUFOキャッチャーとはなんとも言えない気分になる。
 だが本人は子供のように目を輝かせながら台へと向かった。

 結花は店長から経費として札束を渡されていた。
 その額、ざっと10万ほど。
 流石に高校生に持たせる大金ではないが、「ムンバがどうせつかうから」と無理やり渡された。
 ゲームセンターで10万……想像ができない。

 結花が両替機でお金を崩し、500円玉を渡す。
 ムンバがそれを台に入れると、ゲームが始まる。
 どうやらムンバは人形やぬいぐるみ狙いらしい。

 結花も目を離さないようにしながら奥の方まで見に行く。
 アニメや漫画のフィギュアやタオルにお菓子。
 しばらく見ない間に色々とバリエーションが増えていた。

「おジョーさん!  これプレゼントです!」
「えっ!?  いいんですか?」

 ムンバがとれたてほやほやの人形を渡して来た。
 それは少しデブった猫の形をしている。
 抱きしめるともふもふする感触が心地いい。

 お礼を言おうと顔をあげるとすでにムンバは別の台に移っていた。
 大きな袋がどんどん膨らんでいく。
 何度か両替機で両替をすると、さらに別の台へ向かって行った。

 大の大人がはしゃぎながらUFOキャッチャー。
 最初は恥ずかしい気もしたが、真剣な眼差しと嬉しそうな笑顔に段々と結花も自然な笑顔になって行く。
 何個目かの景品を取った時、ムンバが結花に話しかけて来た。

「おジョーさんやっぱ笑顔が可愛いですネ!」

 屈託のないムンバの笑顔。
 少し恥ずかしくなった結花も笑顔で返す。
 確かに仲がいいと言われるような光景だ。

 そして一通り景品を取り終わったムンバが階段を上って行く。
 上にあるのはメダルゲームだ。
 手慣れた手つきでコインを買いに行く。

 ゲームセンターに置いてあるコインゲームの種類は豊富だ。
 海外のスロットマシンのような格好をした台や、画面にトランプが表示されているもの。
 さらにはおもちゃの馬が走っていたり、めちゃくちゃ大きいコイン落としまである。
 見てるだけで目移りしそうな中、ムンバはコイン片手に奥へと進む。
 その先にあるのは……大きな馬のゲーム、スーパーホースだ。

 画面にはリアルに描かれた馬が走っている。
 ムンバはその席に着くと、カードを差し込んだ。
 どうやら馬を育てるゲームでもあるらしい。

「おジョーさん!  こっちで一緒にヨソウしてくださいー!」

 予想しろと言われてもわからない。
 ただムンバはニコニコしながら結花を見ている。
 そしてこのゲームの説明を始めた。

 ムンバはどう見ても30代後半ぐらいの男だ。
 しかし熱意ある解説に結花もドンドン聞いてしまう。
 真剣に話をするムンバと真剣に聞いている女子高生。
 外から見たら不思議なカップルにしか見えないだろう。

 こうして結花達はお金がなくなるまでゲームセンターを堪能した。



 ◇



「店長!  ただいま戻りました!」
「タダイマでーす!」

 2人が元気に事務所へ戻ると、ちょうど店長がお茶を入れているところだった。
 いつも同じぐらいの時間に帰って来ているらしい。
 あの後もメダルゲームをしたり、さらに音楽ゲームをしたり、またUFOキャッチャーをしたり。
 時間を忘れそうになる程楽しんで来た。

「店長!  私マンバケン当てたんですよー!?」
「おー、そいつはすげーや」

 まったく興味なさそうな店長。
 ムンバが店長に近寄ると、なにかを手渡ししている。
 そしてパンパンに詰められた袋を担ぐと、扉の方に歩き始めた。

「ユカさーん!  また来ますネ!」
「はーい!  ムンバさんもまたですー!」

 ムンバを見送ると、また静かな事務所が戻ってきた。
 店長が淹れたコーヒーを啜る音が聞こえてくる。

「んでどうだった?」
「はい、すごく楽しかったです!」
「ん、なら何よりだ」

 店長がムンバについて話を始める。
 彼の世界で商人をしていること。
 毎月一回子供達へのお土産として、こちらの世界でUFOキャッチャーをして行くらしい。
 さらにその世界に競馬を広めたのも彼だ。

 自分の世界で彼が笑顔になることは滅多にない。
 仕事の鬼。物事を多角的に見て、常に厳しい意見と改善をしに向かって行く。
 部下に任せるのも手だが、まだまだ働き続けたいらしい。
 だからこそ、地球こっちでは素の状態を保ちたいのと子供の笑顔を見るためにお土産は欠かさないそうだ。

「はぇー。お父さんって何処の世界も大変なんですね」
「そうだな。人間ってのは背負う物が多くなると責任が生まれてくる」

 ムンバの素は誰にでも気さくでいいお父さん。
 実際にメダルゲームをしている時に、何人か挨拶をされていた。
 言葉は通じないが、身振り手振りで会話をしようとする。
 最後は必ず笑顔でハンズアップだ。

「ここのツアー旅行店はどんなお客様でも笑顔にするためにある」

 店長がタバコをふかしながら呟いた。
 その気持ちは結花にも伝わる。
 人間の笑顔は何物にも変えがたい。
 そう言った店長の顔は誇らしかった。

「ま、あいつはただ遊ぶために来てもいるんだけどな」
「ふふっ。思いっきり楽しんでましたもんね!」

 お土産は子供達に喜ばれただろうか。
 結花は一つだけ貰った人形を大事そうに抱きしめた。
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