王道

こんぶ

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第二章 魔王軍戦

第十話 そして、ナヒリスカへ

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他者の転移を使う…これしかないことは現状分かっていることだ。
正確には、他所、だが。

「なるほど…その場所ならわたくし分かりますわ」

と言われ、

「明日案内しますわ」

と言われ、

「それでこうなったのか?」

「うん」

田原に答える。

今、目の前では金髪の美女と青髪の少女が言い争っている。

「…だからぁ!」

「何ですの?」

「キャラが被ってるんですわ!」

「そんなことしらないわよ!」

リリーとレヴァンが言い争っていた。

「…キャラ被ってるか?」

「別に…あ、でも口調は似てるよね」

「確かに…その点キティは優遇されてるよなぁ」


田原の頭にぺし、とチョップが入る。

「何が優遇よ」

「すまんすまん」

「しかし、いつまで争うつもりなのか…そろそろ転移所まで案内してほしい…」

転移所…それがこの街で唯一転移が出来る場所らしい。

「口調を変えなさい!!」

「いやですわー!」

「変えるのよー!」

「嫌ですわ!」

…リリーがぐにぃとレヴァンの頬をつねる。

「生憎わたくしのレベルは92、全くいたくないのですわ」

「くぅぅ、わたくしよりハイスペックだなんて…許せませんわ!」

「…」

「最近荒れてるねぇ、リリー」

「そうだね」

…どうしたんだよ…



「そろそろ行くぞ」

「わかりましたわ」

レヴァンはころっと移り変わる。
さっきまで争っていたのに。

「付いてきてください」

「ん」

俺達四人はレヴァンに付いて歩いて行く。

「遠いのか?」

「いえ、全然。近いですわ。まぁ、わかりにくいですけど」

「そう──」

その時だった。

バァン!!

街の中心部辺りで、何やら酷い爆音がしたのは。



「な、なん」

ゴゴゴゴゴ──

遅れてくる振動。

「っ!」

レヴァンは街の危機と悟り、すぐさま飛び立つ。

「なっ!田原、二人を任せた」

「あ、ちょっ」

俺もレヴァンを追う。

「何なんだ?」




ラフォーレティーナは街の広場に飛び出た。

「っ!」

ラフォーレティーナは息をのむ。そこには、凄惨な景色が広がっていた。

獅子と蛙を混ぜたような生物が、居住区を壊し、中の子供を食らう。

「いゃぁぁああ!!」

甲高い女性の声。恐らくはその子供の母親のものだろう。
その時だ──

シュルシュルシュルと、金色のブーメランが線を引き、蛙と獅子のようなものの混合生物を切り裂く。
そして、躊躇いもせずその中に一人の男が飛び込んだ。

「子供は無事だ」

そして、男は子供を母親に渡す。
そして──

「もう放すなよ」

と、一言。
母親は「ありがとうございます」と早口に礼を言い、逃げていく。

それと同時にダンッダンッと地面に足を着く音がする。上空から降りてきたのだろう。

そこにいたのは十人の男女だった。
全員がそれぞれの武装に身を包み、後光を纏うようなオーラを発している。
ラフォーレティーナが感じる力も強大であった。

ラフォーレティーナが見たその十人は、今まで見てきた人間達とは違う、相当な猛者たちであることが分かった。

全員を見る。

「これが、自治部隊よ」

レヴァンはラフォーレティーナに説明する。

なるほど、納得が行く。
この街での魔物被害の少なさに、だ。

ここまでの実力を持った者が集まるなんて、珍しい事だから。

「あ、あぁ、皆さんよろしく──」


──鳥肌が立った。

ラフォーレティーナは、勘違いしていた。
ここにいるのは、男女計十一人である。

「…」

ラフォーレティーナでさえ、気付けなかった。
真後ろにそいつはいた。

「うわぉ、僕に気付くなんて、やるね」

何者かと、ラフォーレティーナは思う。

「僕がこれの長だよ。治安部隊最高司令官。よろしくね」

「よろしく」

「…」

というか何故ラフォーレティーナの事を知っているのだろうか。

「君のことはレヴァンちゃんから聞いたんだよ」

ラフォーレティーナはなるほど、と納得した。

「…う゛もぉお”お”お”お”」

遠くからうなり声がする。魔物のようだ。

「…っ!?嘘だろ…」

そして、同時に気付く。
魔物に囲まれていた事に。

「じゅる?じゅるるるっ?」

ジキジキと姿を現す細い枝のような昆虫たち。しかも、大きい。一匹三メートルはある。

「ここは私がやるから、みんなは散ってくれ」

一人の治安部隊がそう言ったので、全員は街中に飛び散った。


そうして、ラフォーレティーナは屋根を駆ける。

「!?」

街に魔物が蔓延っている。魔獣大行進だ。

特に、一部分だけ魔物の量がおかしい。

「レヴァン!」

「分かってるわ!」

レヴァンに付いてこいと言わんばかりに名を叫べば、それに相槌をうつ。

「ベベベヘベ!」

「どっぅどぅっ!やゃや」

「もーんーもーんー」

様々な魔物が声を出しながら街の中央へ向かって行く。

「やめろっ!」

ラフォーレティーナは高速で飛んだ。
それは、青き閃光とも呼ばれているレヴァンが赤子のように思える速度である。

その速度でラフォーレティーナは魔物を殴りつけながら走って行く。
ラフォーレティーナ程のSTRがあると、触れるだけで魔物を殺すことも可能となる。

これは、スキル『対魔物』の能力が働いているからだ。
スキル『対魔物』とは、魔物に与えるものは、全てダメージのみである、という制約である。便利だが、時に不便でもある能力である。

その時、ラフォーレティーナは感じる。
異変に──


「あれは…」

「はあっ、はあっ、何?」

一匹だけ格が違うような魔物。

「あれは…っ沼主よ」

「沼主?」

「沼の王とも呼ばれる魔物…でもなんでこんなとこに…」

とりあえず、魔物を殲滅せんとラフォーレティーナは駆けながら魔物を殺していく。

「っ?」

「ブァン!」

沼主は、ラフォーレティーナに泥をかける。

「うへっ」

「ちょ!その泥は駄目よ!」

「なに」

その瞬間、沼主は火を吹いた。

ボオオっと、炎熱がラフォーレティーナを襲う。

常人なら焼きただれている。

だが、ラフォーレティーナ健在。

「一体何──」

その途端、ラフォーレティーナが爆ぜた。

「はっ?」

泥の部分がぼこぼこと膨れ上がり、

バン!

「あっち!」

しかし、大したダメージにはならなかった。

「う、嘘…治安部隊でも瀕死になるのに…」

そんなラフォーレティーナにレヴァンは驚愕する。

「レヴァン」

「何よ」

「前は俺がやる」

「だから?」

「後は任せた」

「任された!」

二人は仲良く、ぱしっと拳をあわせる。


「うおぉおぉぉ」

「あぁぁぁぁっ!」

二人は雄叫びあげ、突撃していく。


「いった!」

ラフォーレティーナはがしっと沼主を捕まえると、思いっきりへし折る。

が、

「あり?」

すかっとすり抜ける。

「…そうか、ほぼ非実態なのか…液体生物か…」

そして、沼主は再び復元する。しゅるしゅると渦を巻くように、生成され、継ぎ接ぎされ、再生する。

「ぶぉぉん!」

「『圧縮プレス』」

バンッ!!と、地面に陥没が出来る。
超圧力による不可視の攻撃。これを躱すのは至難だろう。

圧縮プレス』『圧縮プレス』『圧縮プレス』『圧縮プレス』…

バンッ!バンバンバンバンバンバンバン!!

地面がどんどん沈んでいく。

だが沼主は、泥として生きている。
が、先のラフォーレティーナの体についたように、爆発することが分かっているのだ。

「『獄炎球ヘルファイヤーボール』」

黒き炎を地面に空いた穴に投げ込む。

すると──


「っぶぁぁぁぁ!!」

盛大な悲鳴と共に、街に一本の火柱が立った。

「さぁ、行くぞ!!」



何時間か経った。
周りに魔物は全く確認できない。

魔物は死ぬととろぉと溶けていくのだ。
故に、死体は残らない。

「他の皆は?」

「さぁ、分かりませんわ」

そして再び中央に戻れば──

「あっ」

既に治安部隊の十一人は集合していた。

「放送しますね」

「放送?」

ここから、マイクを使って街中に放送するらしい。

『みなさん!魔物は消えました。再度言います。魔物は消えました!安全が確保されました!』

「…そうなのか」

ラフォーレティーナはほっとする。

そして想像する。あぁ、多分田原も相当頑張ったんだろうな、と。

「ふぅ、じゃあ、お疲れ様ですわ~」

その途端、レヴァンはぶっ倒れる。

「え?」

「大丈夫だ。こいつは任務が終わるといっつもぶっ倒れるんだよ」

「…」

ったく、とラフォーレティーナ。

(まぁ、いいか)

レヴァンは、幸せそうな寝顔をしていた。




「ここですわ」

あれから二日たった。

レヴァンが案内してくれる。
ここが、転移所らしい。


街はずれの小さな小道、その扉の前でレヴァンは止まった。

「ここ、かぁ」

「はい。ラフォーレティーナさん」

そっちの方が年上だけどな。

「ありがとうございました」

「何が?」

「いろいろ…」

「…なんだよ、いろいろって」

「ほ、っ、ほんとに、あ、ありがとうございました…ぅぅうー」

「泣かないでよ」

何なんだ。この人。めっちゃ面白いぞ。

「っ、キャラ被りは早く退場しなさいよ」

リリー!お前の方が退場されるぞ!?

「まぁ、大丈夫。魔王を必ず討ってくるよ」

「はい。無事でいて下さい…」

き、キャラ変わってるぅ!

「じゃあ、行くか」

「…あのっ!」

「?」

「また、遊びに来て下さい…」

「分かったよ…また、な」

「っ!ありがとうございます」

「じゃあな」

そして、俺は扉を開いた。



「アストレアは見つかったか?」

「いえ…」

「…くそ。いよいよ雲行きが危うくなってきた…まぁ、いい。そろそろ本会議が開かれる。その時の問題で訴えるか」



目の前には黒い円状の石が。
多分十人くらい入る広さで置いてある。

「これが転移装置なのね」

「その通りだキティ」

「なんで名前呼ぶのよ…」

「いや、キャラの書き分けってやつ?」

「おいーっ!それは言うなよ!」

田原に言われた…

「まぁ、いいか。ここに座標を入力して…」

「さてさて、のろうか」

「乗るぜ!」

「アタシが一番~」

「わたくしがっ!!」

おい、リリー…本気まじでどうした?

「…よし、設定した…さて、俺も乗るか」

俺も円状の石の上に乗る。
既に俺以外の三人は乗っている。

「じゃあ、行くぜ…いざ、ナヒリスカへっ!!」

そこで、光が俺達を包み込み──
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