王道

こんぶ

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第二章 魔王軍戦

第十九話 勇者とはッ

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「かっこいいよね」

「ねー、誰かしら、あの人…」

街の片隅、そこで二人の女性が話し合っている。その二人の視線は今、一人の男性に向けられていた。

その男は、モデルのようなすらりとした体格で、若いように見える。

紺色のスウェットズボンを履き、上はチェック柄の服に何故かネクタイをしている。

そして、その男は黒いストローハットを深く被る、もう一人の男と話していた。

「…それで、どうでしたか?」

「あぁ。大当たりだ…見つけたよ…」

「っ、そうですか…」

男の声から、歓喜の念が伝わる。

「やったな、おい」

帽子を被る男が、もう一人の好青年を軽く小突く。

「いえ、これもあなたのおかげだ…ありがとう」

「はは、何を言う。全て君のカリスマだろう。なぁ?───」

「っ、それじゃまた」

男は足早に立ち去っていった。

それを見ていた女二人も散っていく。

そこには、帽子を被る男だけが残っていた。

「───勇者よ」

男はぽつりと呟いた。恐らくその声は、誰にも聞こえない程、小さかった。



僕は、貧しい村に生まれたらしい。

が、生まれてすぐこのギガに越してきたので、貧しい思いをしたことは、ほとんど無い。

両親は優しいし、よくあっていた。

だが…

ある日…魔物という存在が蔓延った…

街中にそれは、溢れかえり…

両親は帰らぬ人となった。

嘆き、悲しんだ。

しかし、そんな時気付いたんだ。

「僕にも何か出来るんじゃないかって…同じような事で苦しんでいる人がいるんじゃないかって…」

「ふーん。そうなのね。まぁ、あたしはあんたの生まれなんてどうでもいいんだけどね」

目の前に座る少女は、まるで王者のように僕にそう言った。


名前は──


「おっと、お取り込み中でしたかな?」

「ん?いや、大した事ではないよ」

ドアを開けて入ってくるのは執事であるピッチ。

「そうですか?では、お茶を持って参ります」

再びドアが閉められた。

「それで、何か話があるんでしょ?」

「あぁ。大魔術師様…」

大魔術師
エレーネ・レズヴィエート

「…様はいいわよ。で、何なの?」

「あぁ。重要な事が一つ」

「何、勿体ぶらないではやく」

「───見つけた」


「…は…それって、もしかして」


「あぁ。───魔王の居場所だよ」


「───確か、あんた依頼料を払ってくれたね」

「?あぁ」

「あんた、嘘はついていないみたいね。じゃあ、今回の依頼料、チャラで良いわよ」


「…え?」

「そりゃあそうでしょ。何せ、魔王の居場所だよ…全面戦争さ」

「…そうですね」



「それでは、そこで間違いないのですね?」

「あぁ。八聖様も六世様そこへ行ったっきりだからな…」

「いくら数値があろうと…ねぇ」

「数には敵わんよなぁ」

多数対少数は、絶対に、圧倒的に少数の方が不利。

どれくらいかと言えば、赤ん坊に世界一の舞踏家と戦わせるようなものだ。

少数が助かるためには、情けをかけて貰うしかない。

「で、それはいつ決行するのかしら?」

「…そうですね…来週にでも」

「…うふふふふふ、それはいい」

赤い服を着た艶めかしい女は、口を裂くようににぃと笑った。
首の皮が引きつり、嫌な音がする。
皮が千切れかかっているようだ。

「…全くその通りかと」

───七大罪

傲慢様は消えてしまいましたが、他六大罪様は皆健在。


──嫉妬、カリネ・ローラン

──憤怒、スーディオン

──怠惰、アガーネ

──強欲、サリヴォン

──暴食、バングリア

──色欲、インネクト


そして、イレギュラーが一人。


──虚栄、レイジング・エジリオン。


計、七人による部隊。
大罪部隊!

「それは素晴らしいわ!ッッワンダホゥ!!」

「左様で」

この方は、七大罪の一人。

色欲のインネクト様。

「インネクト様…あまり激しく動きますと…」

「分かっているわよ…でもこの体にも少し飽きてきたわね…まぁ、少しだから良いんだけどさ」

「…」

インネクト様の肉体は仮初めでしかない。

本体は…

あれは七大罪を彷彿とさせるには十分なものだ。


「でも、貴方たちも出撃するのでしょう?頑張りなさいよ」

「ええ」


我々、緑の団、青の団、赤の団の三つの団も出撃する。

「うふふふ。でも数は物凄いものね。貴方たち。確か、えーと」

「世界中から集めますから…」

「そうそう…確か──三百万…じゃなくて?」

「そうです」

「凄いわね~…数に勝つなんて出来ないのだから、数の有利は凄いわねー」

「そうですね」


ただし、それにだって例外はある。

圧倒的な個、だ。

「八聖様が帰ってきませんし、六世様も帰ってこない…何者かに負けたのでしょうか?」


「うーん、あの方達が負けるイメージが湧かないのだけれど…もし仮にそうだとしたら、厄介ね…私たちだけじゃあどうしようも無いかも…でも、貴方たちなら大丈夫よね?」

「そうですね」

数に勝てる者などいない。





─────「それはどうかな?」

「ッッ!?誰だ…!」

「お客さん~?」

インネクト様は全く焦りもせず鷹揚に言った。

「そうだよ。しかも本来は最上級のおもてなしをしないといけないくらいのね。…さてと、色々聞かせて貰ったよ…僕の干渉力ではこれが限界のようだ…だが、君たちのこと、聞かせてもらったぞ」

それは、少年の姿をしていた。
声は酷く中性的。男ともとれるし、女ともとれる。

「…お前は…何なんだ?」



「───この星、そのもの…なーんちって」


そして、それは消えた。目の前から、なんの脈絡も無く。

そして、その後、インネクト様が安堵の息をつく。

「ふぅー、良かったわね~殺されなくて」



「──え?」



「今の奴、魔王様並みに強かったわよ」


「えええっ!?」


「ああいう奴なのかしらね…もしかしたらあいつなのかもしれないわ…」

「八聖様をやったのが?」

「いや、それにしては少し不自然だったわ。それに私達が探してるのは、傲慢…」

「…戻ってくると良いですね… 傲慢様…」

「それは無いと思うけどね~」

「何故?」

「んー?何て言うか…勘なんだけれど…」

「はい」


「───傲慢も八聖様も…やったのは同じ奴だと思うのよね~…この世にいる…強者…しかも相当な…」

「…っ!そう言えば最近ギガで、勇者なるものが生まれたそうです…なんでも魔王を討てる唯一の存在だとか…まぁ、そんな訳は無いと思いますけど…」

「私もそう思うわよ~…勇者かぁ~…よく勇者って聞くけれど~…何なのかしらねー。勇者って」

「?さぁ?」

──勇者とは、何だ?






勇者かぁ。

僕が勇者だもんな。

勇者って何だろう。

無償で人を救う人?

英雄?

んー。

勇者とは?



「───勇者とはッ、己の名声に関係なく、常に光であるものの事を指すのだぁーっ!人は、虫のように、勝手に光を求めてしまう生き物っ!故にその光っ!模範となる者こそ勇者なのだッッ!」


「何言ってんだよ…レンデル…」

レンデル…僕の親友だ。

「それが、勇者だろう?フフッ」

──まぁ、よく分かんないけど相槌をうっとくか。



「そうかもね」


こんなんでいいんだよ。

勇者なんて。

てきとーで。


「あぁ、そうそう。ブレイブ…」

「なんだ?」

「なんか、きてたぞ。面会がどうたらこうたらって」

「あー、空いてる時に適当に差し込んでおいてくれ」

「了解」


勇者とは何か。



(分かるわけ無いか~)

それは、酷く抽象的なものなのだから。



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