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少年
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それは、遺跡の中から現れる。
災厄の象徴。
恐怖の権化。
かつて神とも恐れられた存在が、その永きにわたる封印から──
──ビキビキッ
──解かれた。
───バキッ!!
◇
「ふぉふぉ、さてと、今宵は誰がくるかのう…」
この爺は、中部最強を下し、さらには数多の強者共を倒してきた、真の歴然の王者と呼べる化け物クラスの人間。
そんな彼は毎晩、この人気のない体育館にてひっそりと戦うことが趣味であった。
──強者と強者は引き合う性質にあるらしい。
毎晩、ここで精神統一、瞑想をしている彼は自分から足を運ばずとも、大抵の日は誰かが訪れてくる。
──そう、そして今日も訪問者が来た。
「ふぉふぉ…ん?なんじゃ…この異質な…」
──しかし、本日の訪問者は、あまりにも異質、歪である。
それは天井を突き破って下りてきた。
ふわりふわりと、通常人には出来ない動作で。
浮遊しているかの如く、ゆったりと下りてきた。
それは少年の姿をしていた。
外人のような銀髪に蒼い瞳を持っていた。
というか、青と言うより、紺色に近い。
「おや?来る場所を間違えてしまったか…やれやれ、こんなことなら力を1%くらいは解放しておくべきだったか…」
少年は、中性的な声で言った。
「…………」
爺はだらだらと冷や汗を流していた。
爺は、今まで人と対峙してきたつもりであるし、そのほかライオンだろうがワニだろうが恐竜だろうが、生物、という一括りに過ぎないと思っていた。
──だが、これは違う。
「か」
爺の息が詰まる。
──これは、生物ではない…
爺は、そう感じた。
「…ん?人ではないか…もし、問いたいのだが、良いかね?」
少年は爺に話しかけた。
「な、何でしょうか…」
爺は、跪いた。
中部最強を当たり前のように下したあの爺が、跪いたのだ。
「ふむ、君は利口なようだ。と言うか、僕の強さが分かるなんて、君中々強いんじゃない?うん。雑巾がけくらいには使えるよ~」
「はい…」
爺はうなだれるしかなかった。
ここまでの強者…いや強者とよんでいいのかすら分からない程の化け物を前にして、どうにか出来るはずもない。
──だが、その瞬間、爺の脳裏にある事象が浮かぶ。
──戦って…みたい。
「その、貴方は一体…?」
その前に素性を聞いた。
少年という見た目、ならばその生涯は短いはず。が、ここまでの力を手に入れているのだ。一体何者か…
「僕…僕かい?…うーん、僕はかつて…何と言われてたっけ?…えっと、《天災》だったかな…うーん。あまり覚えてないけれど、最近まで封印されてたんだ」
「ふ、封印?」
「あぁ、十二柱の神々と地球とイレギュラーな神全員が死力をもってして僕を封印したんだ…まぁ、とはいえもうその神々も大抵は死んでいるだろう…お?…邪神の馬鹿め…俺にこんなものを仕込んでいたのか…」
少年はベリベリべりぃと体中の皮膚を剥ぎ取った。
「ふぅ」
するとその皮膚から謎の瘴気が溢れ出す。それは漆黒であり、体育館程度をすぐに覆うほど大量に溢れてきた。
「むむ、やっぱりか…僕の力をここまで縛れるのは、三千世界を見渡してもやつしかいないだろうな…さてと、それじゃあそろそろ行かせてもらうけど…」
「…あの、一つよろしいでしょうか…?」
「ん?」
「わしと、戦って欲しいのです」
「戦ってほしい…僕に?正気かい?人間。僕に挑むにはせめて神殺しくらいしていないと…」
「そんなもん知らん、じゃがやりたいんじゃ」
「…ふぅ、良いだろう。どうやら君は直接戦闘が得意のようだね?ならば僕も同じくらいに土俵を下ろすか…」
少年はパァンと光を出すと、白いマントのようなものを羽織って光の中から現れた。
「さて、どうぞ、かかってきて」
「…っ!」
──爺は、先手から全力をもってして殴りかかった。
その威力は計り知れない。技を業まで昇華させ、更にそこに熟練の経験と直接戦闘能力が上乗せされる。
──が、
「ごめん…やはり人間では僕の土俵に立てないよ…」
──少年は無念といった様子で、ピンと指を弾いた。
それは、爺の額に当たり──
「あ、やべっ」
少年は力加減を間違えた。
──ギュルッ
──ギュルルルルッ
と、高速回転をしながら爺は体育館の壁に突っ込み、壁が見事に破壊され大きな穴があいた。
「…おぅ…だ、大丈夫~?」
「だ、大丈夫…じゃ」
「…やはり、僕は人間界にいない方が良いね…少し天界にいってくるよ…」
「ハ、はは…全く歯が立たなかったのう…修行のやり直しか…」
頭から大量の血を流しながら爺はガクッと顔を落とした。
──気絶した。
「…ではね…君に僕の寵愛があらんことを…」
──少年は飛翔し、どこかへ去って行った。
「…んぉっ!?何だこの穴…って爺さん!?誰かにやられたのか?」
「お、おお、賢治か…お主とわしも、大して変わらないのう…」
「は?」
「人という範囲では、大して変わらないと言うことか…」
「何言ってるんだ?」
「つまり、修行のやり直しじゃよ」
「…ハ、はぁ」
加藤賢治、あの戦いの後、爺に弟子入りしたのである。
「まぁ、頑張りましょうや」
賢治と爺は互いに拳をあわせた。
──パシッ
災厄の象徴。
恐怖の権化。
かつて神とも恐れられた存在が、その永きにわたる封印から──
──ビキビキッ
──解かれた。
───バキッ!!
◇
「ふぉふぉ、さてと、今宵は誰がくるかのう…」
この爺は、中部最強を下し、さらには数多の強者共を倒してきた、真の歴然の王者と呼べる化け物クラスの人間。
そんな彼は毎晩、この人気のない体育館にてひっそりと戦うことが趣味であった。
──強者と強者は引き合う性質にあるらしい。
毎晩、ここで精神統一、瞑想をしている彼は自分から足を運ばずとも、大抵の日は誰かが訪れてくる。
──そう、そして今日も訪問者が来た。
「ふぉふぉ…ん?なんじゃ…この異質な…」
──しかし、本日の訪問者は、あまりにも異質、歪である。
それは天井を突き破って下りてきた。
ふわりふわりと、通常人には出来ない動作で。
浮遊しているかの如く、ゆったりと下りてきた。
それは少年の姿をしていた。
外人のような銀髪に蒼い瞳を持っていた。
というか、青と言うより、紺色に近い。
「おや?来る場所を間違えてしまったか…やれやれ、こんなことなら力を1%くらいは解放しておくべきだったか…」
少年は、中性的な声で言った。
「…………」
爺はだらだらと冷や汗を流していた。
爺は、今まで人と対峙してきたつもりであるし、そのほかライオンだろうがワニだろうが恐竜だろうが、生物、という一括りに過ぎないと思っていた。
──だが、これは違う。
「か」
爺の息が詰まる。
──これは、生物ではない…
爺は、そう感じた。
「…ん?人ではないか…もし、問いたいのだが、良いかね?」
少年は爺に話しかけた。
「な、何でしょうか…」
爺は、跪いた。
中部最強を当たり前のように下したあの爺が、跪いたのだ。
「ふむ、君は利口なようだ。と言うか、僕の強さが分かるなんて、君中々強いんじゃない?うん。雑巾がけくらいには使えるよ~」
「はい…」
爺はうなだれるしかなかった。
ここまでの強者…いや強者とよんでいいのかすら分からない程の化け物を前にして、どうにか出来るはずもない。
──だが、その瞬間、爺の脳裏にある事象が浮かぶ。
──戦って…みたい。
「その、貴方は一体…?」
その前に素性を聞いた。
少年という見た目、ならばその生涯は短いはず。が、ここまでの力を手に入れているのだ。一体何者か…
「僕…僕かい?…うーん、僕はかつて…何と言われてたっけ?…えっと、《天災》だったかな…うーん。あまり覚えてないけれど、最近まで封印されてたんだ」
「ふ、封印?」
「あぁ、十二柱の神々と地球とイレギュラーな神全員が死力をもってして僕を封印したんだ…まぁ、とはいえもうその神々も大抵は死んでいるだろう…お?…邪神の馬鹿め…俺にこんなものを仕込んでいたのか…」
少年はベリベリべりぃと体中の皮膚を剥ぎ取った。
「ふぅ」
するとその皮膚から謎の瘴気が溢れ出す。それは漆黒であり、体育館程度をすぐに覆うほど大量に溢れてきた。
「むむ、やっぱりか…僕の力をここまで縛れるのは、三千世界を見渡してもやつしかいないだろうな…さてと、それじゃあそろそろ行かせてもらうけど…」
「…あの、一つよろしいでしょうか…?」
「ん?」
「わしと、戦って欲しいのです」
「戦ってほしい…僕に?正気かい?人間。僕に挑むにはせめて神殺しくらいしていないと…」
「そんなもん知らん、じゃがやりたいんじゃ」
「…ふぅ、良いだろう。どうやら君は直接戦闘が得意のようだね?ならば僕も同じくらいに土俵を下ろすか…」
少年はパァンと光を出すと、白いマントのようなものを羽織って光の中から現れた。
「さて、どうぞ、かかってきて」
「…っ!」
──爺は、先手から全力をもってして殴りかかった。
その威力は計り知れない。技を業まで昇華させ、更にそこに熟練の経験と直接戦闘能力が上乗せされる。
──が、
「ごめん…やはり人間では僕の土俵に立てないよ…」
──少年は無念といった様子で、ピンと指を弾いた。
それは、爺の額に当たり──
「あ、やべっ」
少年は力加減を間違えた。
──ギュルッ
──ギュルルルルッ
と、高速回転をしながら爺は体育館の壁に突っ込み、壁が見事に破壊され大きな穴があいた。
「…おぅ…だ、大丈夫~?」
「だ、大丈夫…じゃ」
「…やはり、僕は人間界にいない方が良いね…少し天界にいってくるよ…」
「ハ、はは…全く歯が立たなかったのう…修行のやり直しか…」
頭から大量の血を流しながら爺はガクッと顔を落とした。
──気絶した。
「…ではね…君に僕の寵愛があらんことを…」
──少年は飛翔し、どこかへ去って行った。
「…んぉっ!?何だこの穴…って爺さん!?誰かにやられたのか?」
「お、おお、賢治か…お主とわしも、大して変わらないのう…」
「は?」
「人という範囲では、大して変わらないと言うことか…」
「何言ってるんだ?」
「つまり、修行のやり直しじゃよ」
「…ハ、はぁ」
加藤賢治、あの戦いの後、爺に弟子入りしたのである。
「まぁ、頑張りましょうや」
賢治と爺は互いに拳をあわせた。
──パシッ
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