戦闘シーン 練習用

こんぶ

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凶撃

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天界の天使階級のように、地獄にも層がある。それは、『八大地獄』と呼ばれる。

上から順に、

《等活地獄》
《黒縄地獄》
《衆合地獄》
《叫喚地獄》
《大叫喚地獄》
《焦熱地獄》
《大焦熱地獄》
《無間地獄》

の以上八つで構成される。

少年は、その中で最も下層である《無間地獄》へと歩を進めた。

そこは、ほぼ永遠の苦しみが襲う場所。

「さて…ここにはいるかな?僕の相手…」

はて、少年が最後に八大地獄に来たのは、相当昔なので、地獄のことは少年は全くと言っていいほど覚えていなかった。

「いくぞっ!」

地上から自由落下で落ちれば最下層である《無間地獄》に着くまで約2000年かかるという。

──が、少年は、

「よっ」

世の中の物理法則をぶち切って、ほんの数秒で最下層まで到達した。

「さてと…ってあっち!」

そこは、少年であっても熱いと感じるほどの場所であった。

「…出力10%…」

少年を覆うようにまるで永遠の闇のような瘴気が発生する。
それは、少年の力の源であった。

瘴気、それは少年の本来の姿のようなものであった。

故に、瘴気は少年を守る。

だが、それでも…

「…ん、んん、熱い…」

創造神を下した力、その10倍近い力で己を守ってるはずだが、それでも少年は熱いと感じていた。

「お、おお…体が…燃え…る」

少年は、一歩ずつ、歩を進めるが、しかし体が少しずつ溶け始めていた。

「む…僕が…環境ごときに…むむ…」

ミキミキと溶けた部分が再生し始めた。

「ふぅふぅ…ふぅん!」

少年は自分の腹を自分で貫いた。

「…どうだ?」

そこから、もっと深い闇が溢れ出す。

「…うん。熱くない…適応した…ふぅ」

少年は、その苛烈な環境にも適応した。

「しかし、ここに罪人がおとされるのか…人ならばこんなところにいれば光の速さで溶けていくぞ…」

少年は、黒い瘴気を抑えながら自分の体に纏っていく。

「さてと…確かここには…うん?」

少年は耳をかたむけた。

何かが、聞こえる。


「ォォーン、ァィァァァアー」

「何だ、これは…」

少年が歩を進める度にそれは明確になっていく。

「アァァアァァァァアァア!!ゥォオオオオオオオ!アバア!いぎぃい“いい“いい“」

「…悲鳴か…」

聞こえる。人の、悲鳴が。

「…あれは」

前方から、ドシンドシンと巨大な何かが近づいてきた。

「ほぅ。鬼か」



それは元は人間であった。
原初の人間であった。しかし、パンドラとは違い、その原初の人間は罪人であった。

原初の罪人は、地獄へ行った。
初、地獄の人間であった。

そして、あらゆる鬼を倒していった。
様々な病気にかかったが克服した。
温度にも適応した。
鬼の菌ももらった。それは最初人の姿をしていたが、いつの間にか鬼となっていた。
殺した鬼の金棒も持ち、いつの間にか目が増えていた。
64の目が合った。
いつの間にか火がふけるようになっていた。
それは絶望的な苦しみを味わわせる炎熱であった。
いつの間にか傷を負わなくなった。
いつの間にか再生するようになった。
いつの間にか──etc…

──彼の名は、《聖者殺し》

最強の鬼である。

それは、神を一撃で屠るほどの力を内包した化け物であった。



《聖者殺し》は今日も人を殺していた。火を噴き、圧倒的な苦痛を延々と味わわせる。
特に、自分の事が強いと思っているやつをめっためたにするのは最高だ。
あるとき《聖者殺し》は、この空間に無理やり入ってきた者がいることを観測した。
以前にもこういう風にこの空間、俗称《無間地獄》に入ってきた者はいたが、みな《聖者殺し》の一撃で死んでいった。
宇宙の支配者だろうが、惑星を丸ごと喰う化け物だろうが、内包する力の差が圧倒的だった。
《聖者殺し》は無間地獄にあまねくモノタチを殺していった。
そこで、自分では内包する力が強すぎると気づき、分身を作りだした。
自分よりも圧倒的に弱い個体だ。
だが、それでも敵う者はいなかった。
《聖者殺し》は数多の分身を作った。
そして、思うがままに人を殺し、犯していった。
罪人だから、その一言で済まされた。
しかし、流石に退屈に感じてきた。
人間をコントロールするのは容易いし、神だって当たり前のように殺せる。
支配なんて単純だ。《聖者殺し》はこの《無間地獄》の空間そのものを支配しているのだから。
《聖者殺し》は一度も本気を出したことがない。
その神を越える力をもってすれば、分身だろうとも、やれないことはない。

様々な侵略者を喰らい、そのたびに様々な能力を獲得していった。

また、《聖者殺し》は知識も獲得していった。

様々な兵器を生み出すことも可能だし、分身だろうが、時空が自分のようなものだ。

「ん?」

《聖者殺し》は今日も侵略者を観測した。

現段階で侵略者を殺すのに最も手っ取り早いのは、《凶撃》と呼ばれる攻撃であった。
それはとても攻撃と呼べるものではなかった。
全ての時空を歪ませ、宇宙何千個を瞬時に消滅させるエネルギー弾を、何重にも重ねて放つ技である。

それと同時に例え相手が死なずとも《凶撃》により、相手の情報を全て読み込み、完全なる対応策を練り、相手から能力を奪い、あらゆる《弱体化デバフ》をかける。

分身一体一体が、それを同時に何千発も打ち込むのだ。負けるわけもなかった。
というより、《聖者殺し》には負けるという考えも概念もなかった。

──?

分身が次々と死んでいった。
《聖者殺し》は訳が分からなかった。
凶撃により相手の情報が送られてくるはずだが、本体には全く情報が送られなかった。

「あれか」

《聖者殺し》は目の前に少年を発見した。
さて、どうやって殺したものか。
金棒で一撃で叩き潰してやろう。
それとも火炎で焼くか。
《聖者殺し》の吹く火炎は、相手の防御など関係なく、万物を焼いた。
温度の問題ではなく、能力的、内包的な問題だった。

そして、《聖者殺し》は自分がこれから死ぬと理解した。

「…ん?」

何故死ぬ?意味が分からなかった。
《聖者殺し》は自分の死の原因が分からなかったし、死ぬと言ってももっと具体的な未来を予測できるはずだった。というより、《聖者殺し》にとっては時間は己とおなじようなものだ。
死という概念はあり得なかった。
絶対に自分は死ぬことはない、と思っていたのだ。
例え完全消滅されようとも再生能力が全て封じられても存在そのものが消滅させられても、必ず復活できるのだ。
なのに、死ぬ。
《聖者殺し》は、疑問でしか無かった。
自分を殺す方法など、自分でも分からない。
が、《聖者殺し》は死ぬことを避けようと過去へと遡った。

未来を見る。

やはり、この数刻先で、完全に途切れていた。

《聖者殺し》は理解できなかった。
故に、本来持つ完全なる力を覚醒させた。



《聖者殺し》は真の力を解放させた。あらゆる全能感が己を支配する。
今の自分に出来ないことはない。

そう信じ切った《聖者殺し》はとりあえず目の前にいた少年を踏み潰した。
そして、自分の死因を探そうと歩き出すが──

ブツリ、そこで《聖者殺し》の意識は途絶えた。



「…あれ?ただの魂完全破壊パーフェクトソウル・ブレイクなんだけど…死んじゃったか…まぁ、悪人みたいだし治さなくていいか…はぁ、張り合いなさ過ぎだよ…」

少年はさらに下への門を開くことにした。

両の手を合わせる。

「開門───冥界アビス

冥界への門が開く。

「さぁ、僕を楽しませてくれよ…」

そして、少年は門へ入り──

「すまないね…」

鬼を背に少年はぽつりと呟いた。


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