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引導
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「──────は?」
それは、おかしな光景であった。
目の前で完全なる死を遂げたはずの冥府の王が、息を吹き返したのだから。
いや、そんなものではない。
魂そのものが、無くなっていたのに…
絶対に復元は出来ないのに…
どうやって…まさか作り直したのか?一から?
いや、そんなことは人間に出来る芸当ではない。
「貴様…神か!いや、神ですらないな…お前も侵略者とかいうやつか…しかしどうやって《絶死》を…」
「…はぁ、うるさいなぁ…」
「は?」
「うるさいよ…君。うん。何を言ってるのかはよくわからなけどさぁ、神だとか能力だとか冥界だとか天界だとか地獄だとかそんなもんどうでもいいだろ」
「…」
「能書きなんてどうでもいい。その場で求められるのはなんだ?強さだ!強さだけだ!この世は!純粋な強さ!」
「────」
──少年、絶句。
そして、理解に至る。
この世の強さはピラミッド型で出来ていて、単純に邪神よりもこいつの方が層が上だったというだけ。
ただ、こいつの方が強かっただけだ。
「お前…名前は確か…」
「加藤賢治って言ってるだろう…はぁ。でも、あんたのことは爺さんからいろいろ聞いたよ…めちゃくちゃ強いらしいじゃん?」
「爺さん…?というか、どうやってここに来たんだ…?」
ここは冥界。本来死者のみしか来られないはずだぞ。
「知らね。でも、あんたの声が聞こえたからきた」
「声…?」
まさか、助けを呼ぶ声のことか…?
はっ、笑わせる…ならばこいつは冥界の住人ではないか。既に死人と言うことだろ──
「いやぁ、風呂入ってたから、遅れたわ…」
「────」
冥界の住人ではない。
恐らく、生きている。
ならば、こいつは──
「…」
少年は初めて畏怖という感覚を覚えた。
──ならばこいつは、地上から俺の声を聞いたってことか?
「お前…地上から俺の声を聞いたのか…?」
「うん」
即答であった。その態度には余裕が溢れていた。
あり得ない。それはもう…言葉には表せないが、西から日が出るとか、岩に草が生えるとかそういう次元でのあり得ないではない。
あり得ない…あり得ない…
「…なぁ、あんた…」
「…なんだ…?」
「ちょっとお願いごとがあるんだけど、いいかな?助けたお礼にさ…」
「…別に構わないが…」
「じゃあさ」
賢治は少年に言った。
「俺と手合わせしてくれよ」
「──何を言うかと思えば…」
そんなことか。
ならば、邪神に勝ったこいつは俺に当たり前に勝てるだろう──と少年は思った。
しかし、賢治は違った。
「俺の師匠に勝ったんだぜ…あんた…しかもデコピンで…じゃあアンタは俺の師匠の師匠みたいなもんだよ…」
「は、はぁ?」
「だからこれは、手合わせだ…」
賢治は手合わせと言って、少年から少し距離をとって、構えた。
「…?本当にするのか…」
「あぁ」
少年は賢治と同じように距離を取り、構える。
「冥府の王、頼む…」
「はい。では、両者構えて────」
──冥界に風はない。だが、風が吹いた気がした。
「─────はじめっ!!!」
少年は先に動く。
そして、持てる限り全ての能力を駆使して戦った。
「はっ、はっはっ…」
もちろん最初から全開の100%…いや、120%だ。
どんなものでも使った。
自分のありうる限りの力を全て使った。
無限のエネルギーをもつ少年が疲れるほどに使った。
「はぁーっ、はぁーっ、はぁっはぁっ…」
息も途切れ途切れ。汗は滝のように落ちる。
「…」
だが、当たらない。
加藤賢治には一撃も当たらない。
どんな攻撃だろうが当たらない。
殴ろうが蹴ろうが、どれだけ加速しようが魔法を使おうが事実を変更しようが魂を破壊しようが神の力を使おうが、当たらない。
かすりもしない。
「…はぁーっはぁーっ」
そこで少年は理解した。
──そうか。
と。
──これは引導なのだ
と。
ならば、最高のもてなしをしようではないか。
「────っぁぁぁぁぁぁあ!!!」
最大出力──黒き瘴気!!
「《戦術》…抜掌」
戦いは─────
◇
太陽が眩しく照る。青空が広がっていた。
「…」
墓があった。
男は墓参りをした。
そして、ある墓の前に座り込んだ。
「…なぁ、どうなんだろう」
「…」
墓が答える訳も無い。
「…俺は、強くなれたのか…」
「…」
静かだった。
ひっそり閑だった。
風が、吹いた。
「…それじゃあな」
青年は立ち上がって、去って行く。
それは、とても悲しいことのようであったし、とても嬉しいことのようでもあった。
「──爺さん」
────第一部 最強の漢 完。
─────────────
作者コメント。
第二部は三人称と一人称視点をもっとちゃんと分けたいです。
あと、第二部はいつ投稿するのか未定です。
あと、最後のあれ、爺さん生き返らせればよくね?って思われた方。
あっ、それはご想像にお任せします。
それでは、第二部で~
それは、おかしな光景であった。
目の前で完全なる死を遂げたはずの冥府の王が、息を吹き返したのだから。
いや、そんなものではない。
魂そのものが、無くなっていたのに…
絶対に復元は出来ないのに…
どうやって…まさか作り直したのか?一から?
いや、そんなことは人間に出来る芸当ではない。
「貴様…神か!いや、神ですらないな…お前も侵略者とかいうやつか…しかしどうやって《絶死》を…」
「…はぁ、うるさいなぁ…」
「は?」
「うるさいよ…君。うん。何を言ってるのかはよくわからなけどさぁ、神だとか能力だとか冥界だとか天界だとか地獄だとかそんなもんどうでもいいだろ」
「…」
「能書きなんてどうでもいい。その場で求められるのはなんだ?強さだ!強さだけだ!この世は!純粋な強さ!」
「────」
──少年、絶句。
そして、理解に至る。
この世の強さはピラミッド型で出来ていて、単純に邪神よりもこいつの方が層が上だったというだけ。
ただ、こいつの方が強かっただけだ。
「お前…名前は確か…」
「加藤賢治って言ってるだろう…はぁ。でも、あんたのことは爺さんからいろいろ聞いたよ…めちゃくちゃ強いらしいじゃん?」
「爺さん…?というか、どうやってここに来たんだ…?」
ここは冥界。本来死者のみしか来られないはずだぞ。
「知らね。でも、あんたの声が聞こえたからきた」
「声…?」
まさか、助けを呼ぶ声のことか…?
はっ、笑わせる…ならばこいつは冥界の住人ではないか。既に死人と言うことだろ──
「いやぁ、風呂入ってたから、遅れたわ…」
「────」
冥界の住人ではない。
恐らく、生きている。
ならば、こいつは──
「…」
少年は初めて畏怖という感覚を覚えた。
──ならばこいつは、地上から俺の声を聞いたってことか?
「お前…地上から俺の声を聞いたのか…?」
「うん」
即答であった。その態度には余裕が溢れていた。
あり得ない。それはもう…言葉には表せないが、西から日が出るとか、岩に草が生えるとかそういう次元でのあり得ないではない。
あり得ない…あり得ない…
「…なぁ、あんた…」
「…なんだ…?」
「ちょっとお願いごとがあるんだけど、いいかな?助けたお礼にさ…」
「…別に構わないが…」
「じゃあさ」
賢治は少年に言った。
「俺と手合わせしてくれよ」
「──何を言うかと思えば…」
そんなことか。
ならば、邪神に勝ったこいつは俺に当たり前に勝てるだろう──と少年は思った。
しかし、賢治は違った。
「俺の師匠に勝ったんだぜ…あんた…しかもデコピンで…じゃあアンタは俺の師匠の師匠みたいなもんだよ…」
「は、はぁ?」
「だからこれは、手合わせだ…」
賢治は手合わせと言って、少年から少し距離をとって、構えた。
「…?本当にするのか…」
「あぁ」
少年は賢治と同じように距離を取り、構える。
「冥府の王、頼む…」
「はい。では、両者構えて────」
──冥界に風はない。だが、風が吹いた気がした。
「─────はじめっ!!!」
少年は先に動く。
そして、持てる限り全ての能力を駆使して戦った。
「はっ、はっはっ…」
もちろん最初から全開の100%…いや、120%だ。
どんなものでも使った。
自分のありうる限りの力を全て使った。
無限のエネルギーをもつ少年が疲れるほどに使った。
「はぁーっ、はぁーっ、はぁっはぁっ…」
息も途切れ途切れ。汗は滝のように落ちる。
「…」
だが、当たらない。
加藤賢治には一撃も当たらない。
どんな攻撃だろうが当たらない。
殴ろうが蹴ろうが、どれだけ加速しようが魔法を使おうが事実を変更しようが魂を破壊しようが神の力を使おうが、当たらない。
かすりもしない。
「…はぁーっはぁーっ」
そこで少年は理解した。
──そうか。
と。
──これは引導なのだ
と。
ならば、最高のもてなしをしようではないか。
「────っぁぁぁぁぁぁあ!!!」
最大出力──黒き瘴気!!
「《戦術》…抜掌」
戦いは─────
◇
太陽が眩しく照る。青空が広がっていた。
「…」
墓があった。
男は墓参りをした。
そして、ある墓の前に座り込んだ。
「…なぁ、どうなんだろう」
「…」
墓が答える訳も無い。
「…俺は、強くなれたのか…」
「…」
静かだった。
ひっそり閑だった。
風が、吹いた。
「…それじゃあな」
青年は立ち上がって、去って行く。
それは、とても悲しいことのようであったし、とても嬉しいことのようでもあった。
「──爺さん」
────第一部 最強の漢 完。
─────────────
作者コメント。
第二部は三人称と一人称視点をもっとちゃんと分けたいです。
あと、第二部はいつ投稿するのか未定です。
あと、最後のあれ、爺さん生き返らせればよくね?って思われた方。
あっ、それはご想像にお任せします。
それでは、第二部で~
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