17 / 28
日本編
想像以上の速さ
しおりを挟む俺は銃を構えて、そして、銃口をワニに向け、集中して、照準を合わせる。コイツも二足歩行なのか…なら、当てやすいな…
「フゥーッ、フゥーッ」
カチッ
バァゥン!
両方からの不可視の超圧力!
それをワニは─
ビャゥン!
と、下に躱したのだ。
「ッて!」
躱した!?あの図体で!?
んな事出来るのかよ…
「俺達で何とか動きを止める…その間にあんたが撃ってくれ」
「ッ、分かった!」
俺以外の人物が囮になる。
何というか、非常に申し訳無くなる。
「よっしゃ、来いや」
と、ジーがヨーヨーを回して、ぶんと振る。
遠心力と手袋の力の相乗効果で、先端部は途轍もない速度のヨーヨー。
それをワニは、
バシン、とその巨大な鱗で受け止めた。
「!?」
そして逆に、ヨーヨーをワニに飲み込まれる。
「ええっ?」
ジーは主武器を失う。
「くぅ!」
今、照準を合わせた所で、また躱されて仕舞うだろう。
どうしたらいいんだ?
「俺と!京香で行く!ソンは援護についてくれ」
と正神が言う。
正神は弓を番えて、矢を放つ。
その速度と威力は、恐るべきものだろう。
しかしワニは、それを当たり前のように躱す。そして─
「「うぉぉ!?」」
ワニは、ぶんと尻尾を振った。
その長い長いリーチに、回避仕切れずジーと正神が巻き込まれる。
だが─
がんっ!と、ワニの頭がぐらりとふらついた。
それと同時にワニはずんと、転ぶ。
「っおお」
それは、ソンと京香だった。
京香がワニの顔面を殴りつけ、ソンが足下を薙ぎ払う。
そして、そこに俺が撃つ!
カチッ
バァゥン!
ビクッ
と、ワニが飛び起きて、またもや俺の圧縮砲を避ける。
しかし、避けると言うことは、当たったら相当なダメージを受けるか、或いは死ぬかだ。
ならば、もっとれっきとした隙を作ればいい。
「俺が準備する!四人で何とか足止めをしてくれ!」
「「!了解」」
よし。
と、俺は歩き出し、砂浜の方へ向かった。
──────────────────
「グルゥルルルルル」
と、凶器のような声を漏らすワニ。
その周りには、そのワニの体躯からすれば、大きめの虫程度であろう小さな人間が四人、取り巻きのようにワニの近くにいた。
「はぁはぁ、どうする?」
「いけんのか?これ…ハァハァ」
「そんなことは考えるな…常に勝利を考えろ」
「そうだ。諦めたら、何事も成すことは出来ない!」
四人は互いを励まし合い、戦意を高める。
「で、どうするよ?」
ジーが問うた。
「…まずは肉弾戦の二人がワニを転ばせる。そして俺がワニの眼を狙う」
「眼を?」
「あぁ、流石に眼球は脆い筈だ」
「分かった。で、俺はどうする?」
「ジーは、隙をついてワニ肉弾戦達に紛れてくれ」
「オーケー」
「よし…いくか」
ワニは、やれやれ、やっと話し合いが終わったか、と言った表情で、四人を見つめる。
まるでそれが、酷く無駄であるように。
「ッ!?来たぞぉ!」
ワニは、超高速で尻尾を振り回し、四人を吹き飛ばす。
筈だった。
「てや!」
「はっ!」
ソンが足場を掬い、京香が体の至る所を殴る。
「グッ!ウルルルルル!」
そして、ワニはズドンと倒れ込む。
「今だッ」
正神は矢を眼にめがけて放つ。
シュピンと、消えいるような速度で、矢はワニの眼球を貫いた。
「ッッ!グゥウッウウウウウウウ!!」
ワニは苦しむ。
苦しむ。
「追撃だ!ついげっ!」
そこで正神は言葉を途切れさせた。
理由は簡単だ。
ワニの口にくわえられたからである。
「正神さぁん!!」
「っ!今助けます!」
「あぁ!」
他の三人が、必死に正神を助け出そうとする。
京香はワニを殴りつけにかかり、ソンは斧をもっと大きくして薙ぎ払い、ジーはただ殴りつける。
しかし、全てが躱される。
「っ!?さっきより早い!」
「ちくしょお!」
ワニは後光を引くほどの速度で的確に攻撃を避けていく。
そして、そこでようやく咥えられた正神は口を開く。
「いいっ!お前らもう俺の事は諦めろ!」
「なっ!何で」
そこで正神は、半泣きになりながら言った。
「ねぇ、もう、ねぇんだよ」
「?何が?」
「俺の下半身、もうねぇんだよ」
「ッッッ!?」
「だから!最後の腹いせに、ぶち込んでやるよ」
と、正神は手に持つ弓で矢を放つ。口内に向けてだ。
それは、バチンと音を立てて、正神の体ごと、一緒に貫いた。
そして、タイセンは、ワニの胃の中へ落ちていった。
「っ!正神さぁん!!!」
と、悲痛な叫びを上げたのは、京香だった。
「うぅ、うっ、うううう、死んだ…目の前で…人が…」
人が目の前で死ぬ。
それは、とてもじゃないが形容しがたい体験だった。
「ううっ、オゲッ!」
京香は、吐いた。
サリィの時は状況が全く分からず、何も感じなかったというのに。
「っ!」
そして、ワニがまた途轍もない速さで突っ込み、噛みちぎろうとしたとき─
急にワニは、ダンッと横に移動した。
「こいよ、クソ爬虫類が」
それは、怒りをあらわにした、新井だった。
──────────────────
「こいよ、クソ爬虫類が」
そう挑発し、ワニを誘う。
「ッルアアアア!」
ワニはどんどんと、突っ込んできた。
「っおお!?」
それを全速で、紙一重で躱す。
「あっぶねー」
もう少しで体ごと持って行かれるところだった。
「よし」
そして、もう一度走り出す。
「グゥウッウウウウウウウ!」
そして、俺は、何とか所定の位置についた。
「さぁ、こいよ」
ワニは馬鹿正直に真っ直ぐに突っ込んできた。
そこで─
カチッ
バァゥン!
と、圧縮砲を撃つ。
そう、それが狙いだ──
「っしゃ!」
だが、躱される。
「んなっ!?」
「グゥフゥウ」
そこでワニは勝ち誇ったような声を出す。
そして、ゆっくりゆっくり近づいてくる。
俺の瞳を見つめながら。
「ひっ」
嫌だ!死にたくない!
「グゥフゥウ!ルルゥ!!」
バン、と襲いかかってくるワニは─
ヒューンと落ちて行った。
─さっきのが狙いな訳ねーだろ。
本命は落とし穴。
やっぱり爬虫類は知能が足りないなぁ。
「グ─」
高速で登ってこようとするワニに対して俺はそれよりも速く銃を撃った。
「どうだ?逃げ場がないだろ?」
カチッ
バァゥン!
べちゃん!
と、ワニは肉と髄液の塊となって潰れた。
「っっふぅ!」
戦死したのは正神か…
「チクショウ」
後で弔ってやるか…
にしても、森の連中は大丈夫か?
心配になる。
「次は森に行くぞっ」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
月弥総合病院
僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる