ミッション

こんぶ

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日本編

想像以上の速さ

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俺は銃を構えて、そして、銃口をワニに向け、集中して、照準を合わせる。コイツも二足歩行なのか…なら、当てやすいな…

「フゥーッ、フゥーッ」

カチッ



バァゥン!



両方からの不可視の超圧力!

それをワニは─


ビャゥン!

と、下に躱したのだ。

「ッて!」

躱した!?あの図体で!?

んな事出来るのかよ…

「俺達で何とか動きを止める…その間にあんたが撃ってくれ」

「ッ、分かった!」

俺以外の人物が囮になる。

何というか、非常に申し訳無くなる。

「よっしゃ、来いや」

と、ジーがヨーヨーを回して、ぶんと振る。

遠心力と手袋の力の相乗効果で、先端部は途轍もない速度のヨーヨー。

それをワニは、


バシン、とその巨大な鱗で受け止めた。

「!?」

そして逆に、ヨーヨーをワニに飲み込まれる。

「ええっ?」

ジーは主武器を失う。

「くぅ!」

今、照準を合わせた所で、また躱されて仕舞うだろう。

どうしたらいいんだ?

「俺と!京香で行く!ソンは援護についてくれ」

正神タイセンが言う。

正神タイセンは弓を番えて、矢を放つ。

その速度と威力は、恐るべきものだろう。

しかしワニは、それを当たり前のように躱す。そして─

「「うぉぉ!?」」

ワニは、ぶんと尻尾を振った。
その長い長いリーチに、回避仕切れずジーと正神タイセンが巻き込まれる。

だが─


がんっ!と、ワニの頭がぐらりとふらついた。

それと同時にワニはずんと、転ぶ。

「っおお」

それは、ソンと京香だった。

京香がワニの顔面を殴りつけ、ソンが足下を薙ぎ払う。

そして、そこに俺が撃つ!

カチッ


バァゥン!


ビクッ

と、ワニが飛び起きて、またもや俺の圧縮砲プレスを避ける。

しかし、避けると言うことは、当たったら相当なダメージを受けるか、或いは死ぬかだ。

ならば、もっとれっきとした隙を作ればいい。

「俺が準備する!四人で何とか足止めをしてくれ!」

「「!了解」」

よし。

と、俺は歩き出し、砂浜の方へ向かった。

──────────────────


「グルゥルルルルル」

と、凶器のような声を漏らすワニ。

その周りには、そのワニの体躯からすれば、大きめの虫程度であろう小さな人間が四人、取り巻きのようにワニの近くにいた。

「はぁはぁ、どうする?」

「いけんのか?これ…ハァハァ」

「そんなことは考えるな…常に勝利を考えろ」

「そうだ。諦めたら、何事も成すことは出来ない!」

四人は互いを励まし合い、戦意を高める。

「で、どうするよ?」

ジーが問うた。

「…まずは肉弾戦の二人がワニを転ばせる。そして俺がワニの眼を狙う」

「眼を?」

「あぁ、流石に眼球は脆い筈だ」

「分かった。で、俺はどうする?」

「ジーは、隙をついてワニ肉弾戦達に紛れてくれ」

「オーケー」

「よし…いくか」

ワニは、やれやれ、やっと話し合いが終わったか、と言った表情で、四人を見つめる。

まるでそれが、酷く無駄であるように。

「ッ!?来たぞぉ!」

ワニは、超高速で尻尾を振り回し、四人を吹き飛ばす。
筈だった。

「てや!」

「はっ!」

ソンが足場を掬い、京香が体の至る所を殴る。

「グッ!ウルルルルル!」

そして、ワニはズドンと倒れ込む。

「今だッ」

正神タイセンは矢を眼にめがけて放つ。

シュピンと、消えいるような速度で、矢はワニの眼球を貫いた。

「ッッ!グゥウッウウウウウウウ!!」

ワニは苦しむ。

苦しむ。

「追撃だ!ついげっ!」

そこで正神タイセンは言葉を途切れさせた。

理由は簡単だ。

ワニの口にくわえられたからである。

正神タイセンさぁん!!」

「っ!今助けます!」

「あぁ!」

他の三人が、必死に正神タイセンを助け出そうとする。

京香はワニを殴りつけにかかり、ソンは斧をもっと大きくして薙ぎ払い、ジーはただ殴りつける。

しかし、全てが躱される。

「っ!?さっきより早い!」

「ちくしょお!」

ワニは後光を引くほどの速度で的確に攻撃を避けていく。

そして、そこでようやく咥えられた正神タイセンは口を開く。

「いいっ!お前らもう俺の事は諦めろ!」

「なっ!何で」

そこで正神タイセンは、半泣きになりながら言った。

「ねぇ、もう、ねぇんだよ」

「?何が?」

「俺の下半身、もうねぇんだよ」

「ッッッ!?」

「だから!最後の腹いせに、ぶち込んでやるよ」

と、正神タイセンは手に持つ弓で矢を放つ。口内に向けてだ。

それは、バチンと音を立てて、正神タイセンの体ごと、一緒に貫いた。

そして、タイセンは、ワニの胃の中へ落ちていった。

「っ!正神タイセンさぁん!!!」

と、悲痛な叫びを上げたのは、京香だった。

「うぅ、うっ、うううう、死んだ…目の前で…が…」

人が目の前で死ぬ。

それは、とてもじゃないが形容しがたい体験だった。

「ううっ、オゲッ!」


京香は、吐いた。

サリィの時は状況が全く分からず、何も感じなかったというのに。

「っ!」

そして、ワニがまた途轍もない速さで突っ込み、噛みちぎろうとしたとき─

急にワニは、ダンッと横に移動した。


「こいよ、クソ爬虫類が」

それは、怒りをあらわにした、新井だった。

──────────────────

「こいよ、クソ爬虫類が」

そう挑発し、ワニを誘う。


「ッルアアアア!」

ワニはどんどんと、突っ込んできた。


「っおお!?」

それを全速で、紙一重で躱す。

「あっぶねー」

もう少しで体ごと持って行かれるところだった。

「よし」

そして、もう一度走り出す。

「グゥウッウウウウウウウ!」

そして、俺は、何とか所定の位置についた。

「さぁ、こいよ」

ワニは馬鹿正直に真っ直ぐに突っ込んできた。

そこで─


カチッ



バァゥン!

と、圧縮砲プレスを撃つ。

そう、それが狙いだ──


「っしゃ!」

だが、躱される。


「んなっ!?」


「グゥフゥウ」


そこでワニは勝ち誇ったような声を出す。
そして、ゆっくりゆっくり近づいてくる。

俺の瞳を見つめながら。

「ひっ」

嫌だ!死にたくない!

「グゥフゥウ!ルルゥ!!」

バン、と襲いかかってくるワニは─


ヒューンと落ちて行った。

─さっきのが狙いな訳ねーだろ。

本命は落とし穴。

やっぱり爬虫類は知能が足りないなぁ。

「グ─」

高速で登ってこようとするワニに対して俺はそれよりも速く銃を撃った。


「どうだ?逃げ場がないだろ?」

カチッ




バァゥン!



べちゃん!



と、ワニは肉と髄液の塊となって潰れた。


「っっふぅ!」


戦死したのは正神タイセンか…

「チクショウ」


後で弔ってやるか…

にしても、森の連中は大丈夫か?

心配になる。

「次は森に行くぞっ」





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