殺しの美学

村上未来

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捜査

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「…平山さんに恨みを持つ人間に心当たりはありませんか?」

「…いえ、竜二は誰にでも優しいから、恨みを買うような人間じゃないです」

「…そうですか」

 一方リビングでは、美玲に対しての聞き込みが続いていた。

「…夜の十時にこちらに来る予定だったのですね」

 城山は手帳にメモを取っている。

「うむ」

 美玲は首を何度も振った。

「平山さんは何をしにこちらに伺うつもりだったのですか?」

「話し合いをする為に、私が平山竜二を呼び出したのだ」

「話し合い?どういった内容を話し合おうと思われたのですか?」

 城山はメモを取る手を止め、美玲を見詰めた。

「家にある家具や荷物の分配についてだ。それと結婚資金を貯めていたからな。それの分配に付いても話し合おうとしていたのだ」

 美玲は茜から指示された言葉を脳内で蘇らせながら答えた。

「そうですか…でも夜に話し合う必要があったのですか?日を改めて話し合っても良かったのではないですか?」

「…うむ、そうだな」

 城山はその一瞬の間を見逃さなかった。

「何か今日でなければならない理由があったのですか?」

「理由などないぞ」

「本当ですか?どうして今日でなければならなかったのですか?」

 美玲を怪しいと判断した城山は、疑いの目を向けている。

「理由などないぞ」

 美玲は茜の指示通り、想定していない質問に対して、こう答え続けた。

「そうですか…では、話し合った後は、平山さんはこちらに泊まる予定だったのですか?荷物の分配や貯金の分配をするなら、一時間やそこらじゃ終わらないと思うのですが、終電を迎えた平山さんは、どうするおつもりだったのですか?」
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