殺しの美学

村上未来

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捜査

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「平山竜二の泊まる所など、考えてなかった」

 美玲は目をぱちくりとし、城山を見詰めた。

「考えてない?どうしてですか?」

「考えてないものは考えてなかったからだ。他に理由はなかろう」

「普通は考えそうですが。本当に考えてなかったのですか?」

「話を聞いていないのか?考えてなかったぞ」

 美玲の表情は、なんら変化していない。
 感情のない美玲から、嘘を読み取る事は難しいだろう。
 城山は質問を変えた。

「…そうですか…ところで何故、大切な話し合いをするのに、関係の無い榊原さんがお宅に居るのですか?」

「それは私が普通ではないからだ。故に、榊原茜に中正に判断してもらおうと思ったのだ」

「…そうですか。それは園山さんが頼まれたのですか?榊原さんから申し出てこられたのですか?」

「私から頼んだのだ。私には感情だけでなく、一般常識も欠落している部分があるからな」

 それからも質問という名の尋問が続く中、時刻は夜十二時を回ろうとしていた。

「…今日はもう遅いですから、日を改めてお話を聞かせてください」

 城山はそう告げると、茜から話を聞き終えた広田と共に、美玲の部屋を出た。
 マンション前には車が止まっている。その車に乗り込むと、城山は口を開いた。

「榊原茜の方は、何か収穫はあったか?」

「いぇ、大して収穫はなかったです。そちらはどうでしたか?」

 運転席に座りエンジンを掛けながら、広田は視線を助手席の城山に向ける。

「…特になかったが…園山美玲は何か隠してるな」

 感情を読み取れないながらも、城山は美玲に対し、少しの違和感を感じた。
 その少しの違和感が事件解決に繋がる事を、城山は身を持って経験している。
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