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いつもの夢
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死に行く町子から背を向けた零士は、満面の笑顔を浮かべ健太を見詰めた。
「…後は僕達だけだね」
零士はそう言うと、床に転がったポリタンクを掴み健太に振りかざした。
健太は目をギュッと瞑った。
「…空だ」
残念そうな表情を浮かべ、零士はポリタンクを投げ捨てた。
健太はその言葉を聞き、恐る恐る目を開けた。
すぐ目の前に、鬼の形相を浮かべる零士の顔があった。
「ひぃ!」
健太は床に座った状態のまま、後退った。
「行くな!ここで死ぬんだ!」
零士は健太の足首を捕まえようと、身を屈めた。しかし、零士の手が健太に届く事はなかった。燃え盛る町子が苦しさのあまり、零士の足首を掴んだのだ。
零士は掴まれていない方の足で、町子を蹴り続けている。
その隙に健太は必死で這いつくばり、零士の元から離れだした。
零士のパジャマのズボンがメラメラと燃え始めた。
「あの子達にも火を付けた!あとは健太君!君だけなんだ!…僕等は生きてちゃだめなんだ!」
町子に足首を捕まれたまま、零士は叫んだ。
辺りは零士がこぼしたガソリンに引火したのか、激しく燃え上がっている。
零士の姿は火に飲まれて見えない。
健太はいも虫のように廊下を這っている。本能が体を前へと進めているのだ。
バキバキと木が燃える音が木霊する。
天井付近は真っ黒な煙が充満している。
煙を吸っているせいだろう。健太の意識が朦朧としてきた。
本能が生きろと、叫んでいる。
健太は無意識に近い状態で、体を動かし続けた。
周りは炎に包まれ、暗闇だった世界をオレンジ色に染めている。
熱波が健太を襲うが、それでも前へ前へと進んだ。
零士の元から離れ、十五分程経過した。
出口まであと一歩。
健太の意識は、そこで完全に途絶えた。
「…後は僕達だけだね」
零士はそう言うと、床に転がったポリタンクを掴み健太に振りかざした。
健太は目をギュッと瞑った。
「…空だ」
残念そうな表情を浮かべ、零士はポリタンクを投げ捨てた。
健太はその言葉を聞き、恐る恐る目を開けた。
すぐ目の前に、鬼の形相を浮かべる零士の顔があった。
「ひぃ!」
健太は床に座った状態のまま、後退った。
「行くな!ここで死ぬんだ!」
零士は健太の足首を捕まえようと、身を屈めた。しかし、零士の手が健太に届く事はなかった。燃え盛る町子が苦しさのあまり、零士の足首を掴んだのだ。
零士は掴まれていない方の足で、町子を蹴り続けている。
その隙に健太は必死で這いつくばり、零士の元から離れだした。
零士のパジャマのズボンがメラメラと燃え始めた。
「あの子達にも火を付けた!あとは健太君!君だけなんだ!…僕等は生きてちゃだめなんだ!」
町子に足首を捕まれたまま、零士は叫んだ。
辺りは零士がこぼしたガソリンに引火したのか、激しく燃え上がっている。
零士の姿は火に飲まれて見えない。
健太はいも虫のように廊下を這っている。本能が体を前へと進めているのだ。
バキバキと木が燃える音が木霊する。
天井付近は真っ黒な煙が充満している。
煙を吸っているせいだろう。健太の意識が朦朧としてきた。
本能が生きろと、叫んでいる。
健太は無意識に近い状態で、体を動かし続けた。
周りは炎に包まれ、暗闇だった世界をオレンジ色に染めている。
熱波が健太を襲うが、それでも前へ前へと進んだ。
零士の元から離れ、十五分程経過した。
出口まであと一歩。
健太の意識は、そこで完全に途絶えた。
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