約束ノート

村上未来

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病院

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「あの子は重要参考人ですからね…どうしても話が聞きたいんですが…あの子が暮らしていた所で、人が八人も死んでしまったんですよ」

「それでも私は…」

「新たな犠牲者がでるかもしれないんだ!」

 利根川は沢尻の言葉を遮り、睨み付けた。

「…分かりました…でも明日にして下さい。それと、私も同席させて頂くのが条件です」

「…分かりました。明日出直します」

 利根川は八重草を引き連れ帰って行った。
 沢尻の足は、出てきたばかりの健太の居る病室に向かった。 

「あら、先生どうかしましたか?」

 健太のベッドの横で、にこやかに立っている香織は振り返り尋ねた。

「…ちょっと、健太君に話があってね」

 沢尻はそう言い、難しい顔をした。

「お話?」

 健太はキョトンとした表情を浮かべている。

「うん…健太君。火事になった日の事を覚えてる?」

 沢尻はベッド側にある椅子に腰掛け、深刻な表情で尋ねた。

「えっ?…ひぃ!」 

 健太は大きな悲鳴を上げた。
 院長の町子が生きながら焼かれる姿。人肉の焼ける臭い。それらがフラッシュバックしている。

「ぐちゅっ!」

 燃え盛る音の中に、その音が加わった。
 零士の体が燃えている。
 その手には、血だらけのハンマーが握られている。
 健太は焦点の合わない瞳で、体を激しく震わせた。

「健太君!どうしたの!?」

 沢尻は健太の体を揺すった。

「ひぃ!うわゎゎゎゎゎ!」

 健太は零士に掴まれたと思ったのだろう。体を激しく揺さぶり、沢尻の手から逃れようとしている。

「健太君!健太君!先生だよ!怖いこと起きないから安心して!」

 沢尻は健太の体を、強く抱き締めた。

「うわゎゎゎゎゎ!」

 その叫び声を残し、健太は気を失った。

「…健太君?」

 沢尻は、急に静かになった健太の顔を覗き込んだ。
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