49 / 298
約束ノート
12
しおりを挟む
「…うん、飲もう」
健太はそれ以上、言葉を繋げなかった。
健太は遥の為に、新たなビールと、刺身盛り合わせ、焼き鳥、唐揚げ、サラダを注文した。ビールが来るまでの間、二人に会話はなかった。
いくら女心に鈍感な健太でも、遥が何を言いたかったのか分かったのだ。健太も遥の事は好きだ。しかし、和也の事を考えると、素直な気持ちになれなかったのだ。
健太は和也の恋を応援すると決めた日から、遥の事を諦めた。だから、遥の気持ちは嬉しくもあり、悲しくもあった。
二人はその後、盛り上がる事なく、坦々と酒を煽った。
「…そろそろ行こうか?」
居酒屋に入ってから一時間程経ち、健太は伝票を持ち立ち上がった。
「えっ?…はい」
遥は泣きそうな顔で立ち上がった。健太はその表情を見て抱き締めたい感情に駆られたが、遥に背を向けた。
居酒屋を出た二人は、無言のまま駅に着いた。
改札を潜りホームに着くと、丁度電車が到着していた。二人は電車に乗り込んだ。
車内は混んでいた。扉の近くで二人は体を密着させて立っている。遥から発せられる酒の匂いに混じり、優しいシャンプーの匂いが健太の鼻を擽っている。
駅に着く度、車内はより混んでいく。健太と遥は、抱き合う形の体勢で無言で立っていた。時折見上げる遥の視線に、健太はドギマギしている。
「…次は田上、田上…」
電車のアナウンスが、遥の降りる駅名を告げた。
電車はスピードを落とし、ゆっくりとホームに滑り込む。そして、扉が開いた。
遥は名残惜しそうな顔をして、電車から降りると手を振った。
健太も混雑する車内から、手を振り返した。そして扉は閉まった。ゆっくりとホームから離れ出す電車。扉の向こうで手を振り続ける遥を、健太は切なそうに見ていた。
アパートに着いた健太は、シャワーを浴び、遥の事を考えていた。
諦めるしかないと自分に言い聞かせても、否定する自分がいる。健太は悶々としたまま、眠りに就いた。
次の日の朝。健太は会社の喫煙室で和也と顔を合わせた。
「おはよう」
「…おはよう」
健太は負い目を感じながらも、挨拶を返した。
健太はそれ以上、言葉を繋げなかった。
健太は遥の為に、新たなビールと、刺身盛り合わせ、焼き鳥、唐揚げ、サラダを注文した。ビールが来るまでの間、二人に会話はなかった。
いくら女心に鈍感な健太でも、遥が何を言いたかったのか分かったのだ。健太も遥の事は好きだ。しかし、和也の事を考えると、素直な気持ちになれなかったのだ。
健太は和也の恋を応援すると決めた日から、遥の事を諦めた。だから、遥の気持ちは嬉しくもあり、悲しくもあった。
二人はその後、盛り上がる事なく、坦々と酒を煽った。
「…そろそろ行こうか?」
居酒屋に入ってから一時間程経ち、健太は伝票を持ち立ち上がった。
「えっ?…はい」
遥は泣きそうな顔で立ち上がった。健太はその表情を見て抱き締めたい感情に駆られたが、遥に背を向けた。
居酒屋を出た二人は、無言のまま駅に着いた。
改札を潜りホームに着くと、丁度電車が到着していた。二人は電車に乗り込んだ。
車内は混んでいた。扉の近くで二人は体を密着させて立っている。遥から発せられる酒の匂いに混じり、優しいシャンプーの匂いが健太の鼻を擽っている。
駅に着く度、車内はより混んでいく。健太と遥は、抱き合う形の体勢で無言で立っていた。時折見上げる遥の視線に、健太はドギマギしている。
「…次は田上、田上…」
電車のアナウンスが、遥の降りる駅名を告げた。
電車はスピードを落とし、ゆっくりとホームに滑り込む。そして、扉が開いた。
遥は名残惜しそうな顔をして、電車から降りると手を振った。
健太も混雑する車内から、手を振り返した。そして扉は閉まった。ゆっくりとホームから離れ出す電車。扉の向こうで手を振り続ける遥を、健太は切なそうに見ていた。
アパートに着いた健太は、シャワーを浴び、遥の事を考えていた。
諦めるしかないと自分に言い聞かせても、否定する自分がいる。健太は悶々としたまま、眠りに就いた。
次の日の朝。健太は会社の喫煙室で和也と顔を合わせた。
「おはよう」
「…おはよう」
健太は負い目を感じながらも、挨拶を返した。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)その後
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合つまた。
その後、大学を卒業した祐輔(ユウスケ)の新たなストーリーが始まった。
全15話を予定
【完結】不貞された私を責めるこの国はおかしい
春風由実
恋愛
婚約者が不貞をしたあげく、婚約破棄だと言ってきた。
そんな私がどうして議会に呼び出され糾弾される側なのでしょうか?
婚約者が不貞をしたのは私のせいで、
婚約破棄を命じられたのも私のせいですって?
うふふ。面白いことを仰いますわね。
※最終話まで毎日一話更新予定です。→3/27完結しました。
※カクヨムにも投稿しています。
秘書と社長の秘密
廣瀬純七
大衆娯楽
社内の調査のため、社長・高橋健一はこっそり秘書・木村由紀と不思議なアプリで入れ替わることに。
突然“社長役”を任された由紀と、自由に動ける立場を手に入れた高橋。
ふたりの秘密の入れ替わり作戦は、どの様な結末になるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる