48 / 298
約束ノート
11
しおりを挟む
「…はい」
遥の瞳が、更に潤いを増した。それに伴い、健太の胸の鼓動が速まった。
「…じゃあ、居酒屋でも行こうか」
健太は直ぐに、遥から視線を外した。そして、駅前にある居酒屋を目指して歩き出した。
遥は健太の横には並ばず、一定の距離を保ちながら、後を追っている。
居酒屋に着いた。二人は座敷に通された。店内は混み合っている。酔いの回った者達の声が、絶え間なく聞こえてくる。
「…ビールでいい?」
俯く遥に、健太は尋ねた。
「…はい」
遥は俯いたまま答えた。
健太は店員を呼ぶと、グラスビールを二つ注文した。
それから暫く、二人の間に会話はなかった。俯き続ける遥に、健太は掛ける言葉が見付からなかったのだ。
「…何食べる?」
健太はメニューを開き、やっとの思いで言葉を出した。
「…お任せします」
遥は俯いたまま答えた。
「ビール、お待たせいたしました」
店員がビールを持ってきた。机の上に置かれたビールは、黄金色に輝き、見るからにキンキンに冷えている。普段なら旨そうと思えるのだろうが、今の健太は微塵も思わなかった。
「取り敢えず、乾杯しよう」
健太はグラスを手に取り、遥に向けて掲げた。遥もグラスを持ち、乾杯の体勢をとった。
「乾杯」
グラスをぶつけ合う音が、騒がしい店内に、虚しく響いた。
健太はグラスに口を付け、一口だけビールを飲み込んだ。遥はビールを一気に飲み干した。健太はその姿を見て、唖然とした。
「…遥ちゃん、どうしたの?」
健太は心配そうに声を掛けた。
「健太さん…」
漸く顔を上げた遥の瞳には、大粒の涙が溢れていた。
「遥ちゃん…」
健太はそれ以上言葉が出てこなかった。
「私…健太さんの事が…」
「…えっ?亅
健太の胸がズキリと痛んだ。
「…何でもないです…飲みましょう」
遥は涙を拭きながら、笑顔を作った。その笑顔は明らかに、無理矢理作ったものだった。
遥の瞳が、更に潤いを増した。それに伴い、健太の胸の鼓動が速まった。
「…じゃあ、居酒屋でも行こうか」
健太は直ぐに、遥から視線を外した。そして、駅前にある居酒屋を目指して歩き出した。
遥は健太の横には並ばず、一定の距離を保ちながら、後を追っている。
居酒屋に着いた。二人は座敷に通された。店内は混み合っている。酔いの回った者達の声が、絶え間なく聞こえてくる。
「…ビールでいい?」
俯く遥に、健太は尋ねた。
「…はい」
遥は俯いたまま答えた。
健太は店員を呼ぶと、グラスビールを二つ注文した。
それから暫く、二人の間に会話はなかった。俯き続ける遥に、健太は掛ける言葉が見付からなかったのだ。
「…何食べる?」
健太はメニューを開き、やっとの思いで言葉を出した。
「…お任せします」
遥は俯いたまま答えた。
「ビール、お待たせいたしました」
店員がビールを持ってきた。机の上に置かれたビールは、黄金色に輝き、見るからにキンキンに冷えている。普段なら旨そうと思えるのだろうが、今の健太は微塵も思わなかった。
「取り敢えず、乾杯しよう」
健太はグラスを手に取り、遥に向けて掲げた。遥もグラスを持ち、乾杯の体勢をとった。
「乾杯」
グラスをぶつけ合う音が、騒がしい店内に、虚しく響いた。
健太はグラスに口を付け、一口だけビールを飲み込んだ。遥はビールを一気に飲み干した。健太はその姿を見て、唖然とした。
「…遥ちゃん、どうしたの?」
健太は心配そうに声を掛けた。
「健太さん…」
漸く顔を上げた遥の瞳には、大粒の涙が溢れていた。
「遥ちゃん…」
健太はそれ以上言葉が出てこなかった。
「私…健太さんの事が…」
「…えっ?亅
健太の胸がズキリと痛んだ。
「…何でもないです…飲みましょう」
遥は涙を拭きながら、笑顔を作った。その笑顔は明らかに、無理矢理作ったものだった。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)その後
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合つまた。
その後、大学を卒業した祐輔(ユウスケ)の新たなストーリーが始まった。
全15話を予定
【完結】不貞された私を責めるこの国はおかしい
春風由実
恋愛
婚約者が不貞をしたあげく、婚約破棄だと言ってきた。
そんな私がどうして議会に呼び出され糾弾される側なのでしょうか?
婚約者が不貞をしたのは私のせいで、
婚約破棄を命じられたのも私のせいですって?
うふふ。面白いことを仰いますわね。
※最終話まで毎日一話更新予定です。→3/27完結しました。
※カクヨムにも投稿しています。
秘書と社長の秘密
廣瀬純七
大衆娯楽
社内の調査のため、社長・高橋健一はこっそり秘書・木村由紀と不思議なアプリで入れ替わることに。
突然“社長役”を任された由紀と、自由に動ける立場を手に入れた高橋。
ふたりの秘密の入れ替わり作戦は、どの様な結末になるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる