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罰
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「探すってどこをだ?…危ないから止めてくれ!」
それは本心だった。和也にまで何か起きたら。健太はそう思った。
「大丈夫だ。じっとしてられないしな。お前だって、家族が拐われたら同じ事するだろ?」
言葉が出てこなかった。同じ事をするだろう。和也の気持ちが分かったのだ。
「止められるから、警察には言うなよ。行くから切るぞ。じゃあな」
和也はそう言うと、電話を切った。
健太の耳に、電話の終了を知らせる無機質な音が鳴り響いている。
健太は携帯電話を握り締めたまま、また動かなくなった。止められなかった自分を責めているのだろう。そして、そのまま夜が明けた。
日の光が、部屋のカーテンを差している。一睡もしていない。できる訳がない。
健太は徐に立ち上がると、スーツを脱ぎ捨てた。そして、Gパンに黒のシャツに着替えると、家を飛び出した。
アパート前に停めた車で待機していた利根川がそれに気付き、車から飛び出した。
「篠原さん!何かありましたか!?」
駆け寄ってくる健太に向かい、利根川は叫んだ。
「…いえ、何もありません」
利根川の目の前で足を止め、健太は答えた。
「…そうですか?…会社に行かれるのですか?」
利根川は健太の服装を見て首を傾げた。昨日はスーツを着ていた。通勤する服装ではないと思ったのだろう。
「いえ、会社は暫く休みます」
「それではどちらに?」
「…田島さんを探しに行こうと思いまして」
「えっ?!それは危険だから止めて下さい!捜査はこちらでやりますので!絶対止めて下さい!」
利根川は睨み付けるように言った。
「でも、じっとしてられな…」
「絶対止めて下さい!犯人は篠原さんを狙っているかも知れません!篠原さんがそのような事をすれば、護衛している我々も危険なんです!いいですね!?」
利根川は健太の言葉を遮り、威嚇するように大声を上げた。
「…はい」
自分だけではない。利根川達も危険な目にあうかもしれない。健太はそう答えるしかなかった。
「では、家に戻ってください」
健太は静かに頷くと、利根川に背を向け、力無い足取りで帰って行った。
健太がアパートの自室に入ったのを見届けた利根川が車に戻った。
そのタイミングで、買い出しをしていた日村が戻ってきた。
「何かありましたか?」
日村は異変に気付いたようだ。
「…いや、何でもない。大丈夫だ」
利根川は答えると、遠い目をした。
自室に戻った健太は、畳に倒れ込んだ。そして何もできない自分の不甲斐なさに、歯を食い縛った。和也は今も、遥を探しているだろう。自分は何もできない。涙が勝手に出てきた。
ただ時間だけが過ぎて行く。
それは本心だった。和也にまで何か起きたら。健太はそう思った。
「大丈夫だ。じっとしてられないしな。お前だって、家族が拐われたら同じ事するだろ?」
言葉が出てこなかった。同じ事をするだろう。和也の気持ちが分かったのだ。
「止められるから、警察には言うなよ。行くから切るぞ。じゃあな」
和也はそう言うと、電話を切った。
健太の耳に、電話の終了を知らせる無機質な音が鳴り響いている。
健太は携帯電話を握り締めたまま、また動かなくなった。止められなかった自分を責めているのだろう。そして、そのまま夜が明けた。
日の光が、部屋のカーテンを差している。一睡もしていない。できる訳がない。
健太は徐に立ち上がると、スーツを脱ぎ捨てた。そして、Gパンに黒のシャツに着替えると、家を飛び出した。
アパート前に停めた車で待機していた利根川がそれに気付き、車から飛び出した。
「篠原さん!何かありましたか!?」
駆け寄ってくる健太に向かい、利根川は叫んだ。
「…いえ、何もありません」
利根川の目の前で足を止め、健太は答えた。
「…そうですか?…会社に行かれるのですか?」
利根川は健太の服装を見て首を傾げた。昨日はスーツを着ていた。通勤する服装ではないと思ったのだろう。
「いえ、会社は暫く休みます」
「それではどちらに?」
「…田島さんを探しに行こうと思いまして」
「えっ?!それは危険だから止めて下さい!捜査はこちらでやりますので!絶対止めて下さい!」
利根川は睨み付けるように言った。
「でも、じっとしてられな…」
「絶対止めて下さい!犯人は篠原さんを狙っているかも知れません!篠原さんがそのような事をすれば、護衛している我々も危険なんです!いいですね!?」
利根川は健太の言葉を遮り、威嚇するように大声を上げた。
「…はい」
自分だけではない。利根川達も危険な目にあうかもしれない。健太はそう答えるしかなかった。
「では、家に戻ってください」
健太は静かに頷くと、利根川に背を向け、力無い足取りで帰って行った。
健太がアパートの自室に入ったのを見届けた利根川が車に戻った。
そのタイミングで、買い出しをしていた日村が戻ってきた。
「何かありましたか?」
日村は異変に気付いたようだ。
「…いや、何でもない。大丈夫だ」
利根川は答えると、遠い目をした。
自室に戻った健太は、畳に倒れ込んだ。そして何もできない自分の不甲斐なさに、歯を食い縛った。和也は今も、遥を探しているだろう。自分は何もできない。涙が勝手に出てきた。
ただ時間だけが過ぎて行く。
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