約束ノート

村上未来

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光と闇

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 音は自分達が奏でるゴミを踏む音しか聞こえない。
 廊下はそれ程長くはない。屋敷という訳ではなさそうだ。玄関に直ぐに辿り着いた。玄関の前に、二階へと続く階段がある。そこからも何の音も聞こえてこない。家族は今、家に居ないか、もしくは、青木は独りで住んでいるのかもしれない。
 玄関もゴミで溢れていた。ゴミに囲まれるように、何足かの脱ぎ揃えられていない靴が見える。ハイヒールなどの女物はない。その中に、見覚えのある靴を雅史は見付けた。

「これ、雅史の靴だ」

 青木がその靴を拾い上げ、履きやすいように揃えた。
 靴を履いた二人は、玄関のドアを開け外に出た。外は暗かった。光は家から漏れる明かりと、月明かりしかない。この明かりで見える家は周りにはなかった。隣家とは、離れているのかもしれない。
 玄関の前は開けている。どのぐらい開けているかは、乏しい明かりでは分からない。その開けたスペースに一台の車が停まっている。青木がその車に乗り込んだ。
 雅史は助手席のドアを開けた。車の中は家の中とは違い、清潔に保たれている。雅史は助手席に乗り込んだ。
 車がバックをして、ハンドルを左に切りながら前に進んだ。何度も切り返さないで済む所を見ると、玄関の前は広いようだ。
 青木はアクセスを踏み込んだ。ヘッドライトが道を照らしている。道に設置されている灯りは乏しい。店の灯りも見当たらない。どうやら、山を走っているようだ。
 道を下っている。少し走ると、左手に民家のような建物が見えてきた。この家が隣家なのかもしれない。程なくして、大きな道に突き当たった。その道は幾つもの店が連なっている。青木は左にハンドルを切った。
 
「なぁ、どこまで探すんだ?」

 雅史が苛立ったような声を上げた。
 車に乗ってから三十分は経っている。その間、青木は車を停める素振りさえ見せていなかった。

「…家から近いと、警察に使った公衆電話がバレた時、俺が疑われるだろ?」

 青木はまだ、車を停めようとはしなかった。

「…全て終わったら、一緒に死ぬんだろ?だったら、捕まってもいいだろう?」

 雅史は無論、一緒に死ぬ気などない。苛立ちを飲み込み、ハンドルを握る青木に視線を向けた。
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