187 / 298
小羽
11
しおりを挟む
「ああ、殺せばいいんだよ」
ホームレスだと思われる格好をした大柄の老人は、冷めた目をして言った。
「…殺す?…どうやって?」
青年は顔を青ざめさせている。
「こうやってだよ」
老人はいつの間にか持っていたナイフで、青年の首元を斬りつけた。
「…えっ?」
驚く青年の首からは、夥しい量の血が噴出している。
「首の頸動脈を狙って斬りつけるんだよ…三十分もすれば死ぬからな」
「…な、な、な、なんでだよ!」
青年は首を必死に抑え、後退りした。
「お前が殺し方を聞くから、レクチャーしてるんだろ…早く殺したい場合は、こうだよ」
老人の持つ血塗れのナイフが、青年の胸に突き刺さった。
「胸のこの辺りに心臓があるからね…うまくやらないと骨に当たるんだよ…初心者は首切ってから心臓狙った方がいいよ…って聞こえてないか」
老人はナイフを投げ捨て、青年に背を向けた。
老人は歩き出した。そして、この世を去った青年に後ろ手で手を振り、永遠の別れを告げた。
テレビから視線を外した小羽は立ち上がった。虚ろな目。覚束ない足取り。小羽は机の前の椅子に座った。
机の引き出しを開けた。中には約束ノートが入っている。小羽は虚ろな目をしたまま、ノートを取り出した。
ペンを握った小羽は、ノートを開いた。
『霞ちゃんの運命の人しのはらけんた君を殺す。僕が霞ちゃんと結婚する』
書き殴ったばかりの文字を見詰める小羽は、微動だにしていない。
眼球は動かない。何かを見ているようで何も見ていないような目。小羽はそんな目でノートを見詰めたまま朝を迎えた。
鳥のさえずる声が鼓膜を刺激し、小羽は漸く我に返った。
何か見ている。小羽は自分が見詰めているノートの文字を読んだ。
『霞ちゃんの運命の人しのはらけんた君を殺す。僕が霞ちゃんと結婚する』
顔を青ざめさせた小羽は、大量の油汗を垂れ流し始めた。
約束ノートは絶対だ。約束ノートに書いた約束は、守らなければならない。
「だだだ駄目だよ…ひひ人を…ここ殺すなんて僕でできないよ」
顔面蒼白の小羽はガタガタと体を震わせ、開かれたままの約束ノートから顔を背けた。
部屋の中で何かのアラームが鳴り響いた。体をびくつかせた小羽は、目覚まし時計のアラームを震える手で止めた。
部屋のドアを開けた。行かなければならない。部屋を出た小羽は、静かに階段を降るとリビングへと向かった。
リビングのドアを開けた小羽は呟いた。
「…おはようございます」
いつもなら、優に嫌みを言われて始まる朝。しかし、そこに優の姿はなかった。
小羽はキョロキョロと辺りを見回しながらドアを閉めると、洗面所に向かった。
鏡には青白い顔の小羽が映っている。小羽は鏡を見る事なく歯を磨き、顔を洗った。
タオルで顔を拭いた小羽は、鏡に映る自分と目が合った。鏡の中の小羽の頬が歪んだ。そして、口を開いた。
ホームレスだと思われる格好をした大柄の老人は、冷めた目をして言った。
「…殺す?…どうやって?」
青年は顔を青ざめさせている。
「こうやってだよ」
老人はいつの間にか持っていたナイフで、青年の首元を斬りつけた。
「…えっ?」
驚く青年の首からは、夥しい量の血が噴出している。
「首の頸動脈を狙って斬りつけるんだよ…三十分もすれば死ぬからな」
「…な、な、な、なんでだよ!」
青年は首を必死に抑え、後退りした。
「お前が殺し方を聞くから、レクチャーしてるんだろ…早く殺したい場合は、こうだよ」
老人の持つ血塗れのナイフが、青年の胸に突き刺さった。
「胸のこの辺りに心臓があるからね…うまくやらないと骨に当たるんだよ…初心者は首切ってから心臓狙った方がいいよ…って聞こえてないか」
老人はナイフを投げ捨て、青年に背を向けた。
老人は歩き出した。そして、この世を去った青年に後ろ手で手を振り、永遠の別れを告げた。
テレビから視線を外した小羽は立ち上がった。虚ろな目。覚束ない足取り。小羽は机の前の椅子に座った。
机の引き出しを開けた。中には約束ノートが入っている。小羽は虚ろな目をしたまま、ノートを取り出した。
ペンを握った小羽は、ノートを開いた。
『霞ちゃんの運命の人しのはらけんた君を殺す。僕が霞ちゃんと結婚する』
書き殴ったばかりの文字を見詰める小羽は、微動だにしていない。
眼球は動かない。何かを見ているようで何も見ていないような目。小羽はそんな目でノートを見詰めたまま朝を迎えた。
鳥のさえずる声が鼓膜を刺激し、小羽は漸く我に返った。
何か見ている。小羽は自分が見詰めているノートの文字を読んだ。
『霞ちゃんの運命の人しのはらけんた君を殺す。僕が霞ちゃんと結婚する』
顔を青ざめさせた小羽は、大量の油汗を垂れ流し始めた。
約束ノートは絶対だ。約束ノートに書いた約束は、守らなければならない。
「だだだ駄目だよ…ひひ人を…ここ殺すなんて僕でできないよ」
顔面蒼白の小羽はガタガタと体を震わせ、開かれたままの約束ノートから顔を背けた。
部屋の中で何かのアラームが鳴り響いた。体をびくつかせた小羽は、目覚まし時計のアラームを震える手で止めた。
部屋のドアを開けた。行かなければならない。部屋を出た小羽は、静かに階段を降るとリビングへと向かった。
リビングのドアを開けた小羽は呟いた。
「…おはようございます」
いつもなら、優に嫌みを言われて始まる朝。しかし、そこに優の姿はなかった。
小羽はキョロキョロと辺りを見回しながらドアを閉めると、洗面所に向かった。
鏡には青白い顔の小羽が映っている。小羽は鏡を見る事なく歯を磨き、顔を洗った。
タオルで顔を拭いた小羽は、鏡に映る自分と目が合った。鏡の中の小羽の頬が歪んだ。そして、口を開いた。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)その後
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合つまた。
その後、大学を卒業した祐輔(ユウスケ)の新たなストーリーが始まった。
全15話を予定
【完結】不貞された私を責めるこの国はおかしい
春風由実
恋愛
婚約者が不貞をしたあげく、婚約破棄だと言ってきた。
そんな私がどうして議会に呼び出され糾弾される側なのでしょうか?
婚約者が不貞をしたのは私のせいで、
婚約破棄を命じられたのも私のせいですって?
うふふ。面白いことを仰いますわね。
※最終話まで毎日一話更新予定です。→3/27完結しました。
※カクヨムにも投稿しています。
秘書と社長の秘密
廣瀬純七
大衆娯楽
社内の調査のため、社長・高橋健一はこっそり秘書・木村由紀と不思議なアプリで入れ替わることに。
突然“社長役”を任された由紀と、自由に動ける立場を手に入れた高橋。
ふたりの秘密の入れ替わり作戦は、どの様な結末になるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる