194 / 298
もう一人の自分
7
しおりを挟む
小羽は歯を食い縛った。湧き出る感情を飲み込んでいるように見える。暫くそうしていた。そして、小羽は口を開いた。
「…謙太君が、霞ちゃんの運命の人だからだよ!僕が霞ちゃんと結婚しなきゃ、一生守れないじゃないか!」
そう言った小羽の笑顔は苦しそうだ。
年配の刑事が優しげに尋ねた。
「篠原謙太君が霞ちゃんの運命の人って、どうしてそう思ったのかな?」
「…霞ちゃんが、ダウジ」
小羽は言葉を止めた。霞が天使だという事を誰にも言わないと約束ノートに書いた事を思い出したのだ。それは、天使の力だと思っているダウジングの事も言わないという事だ。
「ダウジ?ダウジってなんだい?」
年配の刑事は、小羽を優しげに見詰めている。
「言えない!言えないけど、霞ちゃんの運命の人は、篠原謙太君なんだよ!」
ダウジングの話題から早く逃れたいのだろう。小羽は腕をブンブンと上下に振った。
「…約束ノートは誰に言われて書き始めたの?」
話題を変えた年配の刑事は、どこまでも優しげだ。顔もそうだが、声も話し方も穏やかそのものだ。その穏やかさが、壊れそうな小羽の心をとどまらせている。
小羽は約束ノートに書いた言葉を頭に広げた。小羽にとって約束ノートは絶対だ。書いた言葉の全てが頭に入っている。
約束ノートの事を誰にも言ってはいけないと書いてはいない。優に書かされていた事を言ってはいけないと書いてはいない。
「お母さん!」
苦しそうな笑顔のまま、小羽は元気に答えた。
「今のお母さん?それとも小羽君を産んでくれたお母さんかな?」
中年の刑事は、小羽が産みの親と死別している事を知っていた。
小羽は一瞬怯えた表情を浮かべたが、直ぐに笑顔を作った。
「今のお母さんだよ!」
「…今のお母さんだね…約束ノートに書いた約束を破るとどうなるのかな?」
「…わ、わ分かんない!や約束破った事ないもん!」
動揺しながら嘘を吐く小羽の脳裏に、幼い頃に約束を破り、優から激しい虐待を受けた記憶が鮮明に蘇った。優から虐待を受けた事を誰にも言わないと、小羽は約束ノートに書いている。
「…そうかい…分かった…頑張ったね」
それを悟った年配の刑事は、涙を浮かべ、小羽の肩を温かな手で包んだ。
小羽の苦しそうな笑顔から、堪えていた涙が零れ落ちた。
小羽は目を力強く閉じ止めようとしたが、壊れたダムのように涙は止め処なく溢れてきた。
次の日。警察は小羽の部屋から、約束ノートを発見した。
「…謙太君が、霞ちゃんの運命の人だからだよ!僕が霞ちゃんと結婚しなきゃ、一生守れないじゃないか!」
そう言った小羽の笑顔は苦しそうだ。
年配の刑事が優しげに尋ねた。
「篠原謙太君が霞ちゃんの運命の人って、どうしてそう思ったのかな?」
「…霞ちゃんが、ダウジ」
小羽は言葉を止めた。霞が天使だという事を誰にも言わないと約束ノートに書いた事を思い出したのだ。それは、天使の力だと思っているダウジングの事も言わないという事だ。
「ダウジ?ダウジってなんだい?」
年配の刑事は、小羽を優しげに見詰めている。
「言えない!言えないけど、霞ちゃんの運命の人は、篠原謙太君なんだよ!」
ダウジングの話題から早く逃れたいのだろう。小羽は腕をブンブンと上下に振った。
「…約束ノートは誰に言われて書き始めたの?」
話題を変えた年配の刑事は、どこまでも優しげだ。顔もそうだが、声も話し方も穏やかそのものだ。その穏やかさが、壊れそうな小羽の心をとどまらせている。
小羽は約束ノートに書いた言葉を頭に広げた。小羽にとって約束ノートは絶対だ。書いた言葉の全てが頭に入っている。
約束ノートの事を誰にも言ってはいけないと書いてはいない。優に書かされていた事を言ってはいけないと書いてはいない。
「お母さん!」
苦しそうな笑顔のまま、小羽は元気に答えた。
「今のお母さん?それとも小羽君を産んでくれたお母さんかな?」
中年の刑事は、小羽が産みの親と死別している事を知っていた。
小羽は一瞬怯えた表情を浮かべたが、直ぐに笑顔を作った。
「今のお母さんだよ!」
「…今のお母さんだね…約束ノートに書いた約束を破るとどうなるのかな?」
「…わ、わ分かんない!や約束破った事ないもん!」
動揺しながら嘘を吐く小羽の脳裏に、幼い頃に約束を破り、優から激しい虐待を受けた記憶が鮮明に蘇った。優から虐待を受けた事を誰にも言わないと、小羽は約束ノートに書いている。
「…そうかい…分かった…頑張ったね」
それを悟った年配の刑事は、涙を浮かべ、小羽の肩を温かな手で包んだ。
小羽の苦しそうな笑顔から、堪えていた涙が零れ落ちた。
小羽は目を力強く閉じ止めようとしたが、壊れたダムのように涙は止め処なく溢れてきた。
次の日。警察は小羽の部屋から、約束ノートを発見した。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)その後
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合つまた。
その後、大学を卒業した祐輔(ユウスケ)の新たなストーリーが始まった。
全15話を予定
【完結】不貞された私を責めるこの国はおかしい
春風由実
恋愛
婚約者が不貞をしたあげく、婚約破棄だと言ってきた。
そんな私がどうして議会に呼び出され糾弾される側なのでしょうか?
婚約者が不貞をしたのは私のせいで、
婚約破棄を命じられたのも私のせいですって?
うふふ。面白いことを仰いますわね。
※最終話まで毎日一話更新予定です。→3/27完結しました。
※カクヨムにも投稿しています。
秘書と社長の秘密
廣瀬純七
大衆娯楽
社内の調査のため、社長・高橋健一はこっそり秘書・木村由紀と不思議なアプリで入れ替わることに。
突然“社長役”を任された由紀と、自由に動ける立場を手に入れた高橋。
ふたりの秘密の入れ替わり作戦は、どの様な結末になるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる