250 / 298
連続する狂気
10
しおりを挟む
「分かった、落ち着くんだ…裏切られたぐらいで人生棒に振る気か?」
利根川は逆上する男を落ち着かせる為、ゆっくりとした口調で話し掛けている。
「…うるさい!お前に俺の気持ちが分かるか!こいつを殺して俺も死ぬんだ!」
男は利根川の言葉を聞き、少しは正気を取り戻したのかもしれない。ガクガクと震え始めた。
小羽は健太の部屋の前で笑顔で立っている。
無地の白いシャツの上から羽織っている黒のジャンパー。そのジャンパーのポケットから、折り畳み式の小型のナイフを取り出すと、刃の部分を摘まみ上げた。
その機能を活かせる形になったナイフを見詰め、小羽は玄関のドアノブを握った。
静かな音を立てドアが開いた。小羽は鍵が掛かっていない事を知っていたかのように、平然としている。
一歩踏み出した。そして、ドアを閉めた小羽は、土足のまま部屋の中に侵入した。
健太は畳の上で踞り、微動だにしていない。小羽には気付いていない様子だ。小羽はそんな健太に歩み寄っている。
健太の目の前に辿り着いた。暫くすると、健太は気付いた。目の前に誰かいる。
薄汚れたGパンを辿るように、健太は顔を上げた。
「会いたかったよ。篠原健太君」
小羽がにっこりと笑った。
一瞬、思考が停止した。だが、直ぐにそれが誰か分かった。田宮が見せた写真の青年だ。
「…速水小羽」
健太は顔を青ざめさせ、立ち上がろうとした。
「おっと、動かないでね。刺しちゃうよ」
小羽は右手に持つナイフを健太の顔の前に突き出した。
健太は立ち上がろうとした姿勢から座り直し、小羽を睨み付けた。
「…お前が家族を誘拐したのか?」
「家族?…あぁ、誘拐したよ。今から家族の元へ案内してあげるよ」
小羽はナイフを健太の顔の前でひらひらと踊らせた。
「俺の命は奪って構わない…だが、家族に手を出したら許さないぞ!」
健太は力強く叫んだ後、立ち上がった。
「おっと、今すぐ死にたいのかな?でも死ぬ前に、家族に合わせてあげるよ。行こう」
小羽はナイフの先を玄関の方に向けた。行けという事だ。口を噤んだ健太は、玄関に向かおうとした。だが、小羽が声を掛けた。
「携帯電話は置いて行ってね」
健太はズボンのポケットから携帯電話を取り出すと、畳の上に投げ捨てた。
「うん、いい子だ。じゃあ、行こう」
小羽は健太の背中にナイフを突き付けた。
健太は玄関に向かって、歩き出した。その瞳には、命を奪われる悲壮感は無い。どこか力強さがある。家族を救う事を考えているのだろう。
利根川は逆上する男を落ち着かせる為、ゆっくりとした口調で話し掛けている。
「…うるさい!お前に俺の気持ちが分かるか!こいつを殺して俺も死ぬんだ!」
男は利根川の言葉を聞き、少しは正気を取り戻したのかもしれない。ガクガクと震え始めた。
小羽は健太の部屋の前で笑顔で立っている。
無地の白いシャツの上から羽織っている黒のジャンパー。そのジャンパーのポケットから、折り畳み式の小型のナイフを取り出すと、刃の部分を摘まみ上げた。
その機能を活かせる形になったナイフを見詰め、小羽は玄関のドアノブを握った。
静かな音を立てドアが開いた。小羽は鍵が掛かっていない事を知っていたかのように、平然としている。
一歩踏み出した。そして、ドアを閉めた小羽は、土足のまま部屋の中に侵入した。
健太は畳の上で踞り、微動だにしていない。小羽には気付いていない様子だ。小羽はそんな健太に歩み寄っている。
健太の目の前に辿り着いた。暫くすると、健太は気付いた。目の前に誰かいる。
薄汚れたGパンを辿るように、健太は顔を上げた。
「会いたかったよ。篠原健太君」
小羽がにっこりと笑った。
一瞬、思考が停止した。だが、直ぐにそれが誰か分かった。田宮が見せた写真の青年だ。
「…速水小羽」
健太は顔を青ざめさせ、立ち上がろうとした。
「おっと、動かないでね。刺しちゃうよ」
小羽は右手に持つナイフを健太の顔の前に突き出した。
健太は立ち上がろうとした姿勢から座り直し、小羽を睨み付けた。
「…お前が家族を誘拐したのか?」
「家族?…あぁ、誘拐したよ。今から家族の元へ案内してあげるよ」
小羽はナイフを健太の顔の前でひらひらと踊らせた。
「俺の命は奪って構わない…だが、家族に手を出したら許さないぞ!」
健太は力強く叫んだ後、立ち上がった。
「おっと、今すぐ死にたいのかな?でも死ぬ前に、家族に合わせてあげるよ。行こう」
小羽はナイフの先を玄関の方に向けた。行けという事だ。口を噤んだ健太は、玄関に向かおうとした。だが、小羽が声を掛けた。
「携帯電話は置いて行ってね」
健太はズボンのポケットから携帯電話を取り出すと、畳の上に投げ捨てた。
「うん、いい子だ。じゃあ、行こう」
小羽は健太の背中にナイフを突き付けた。
健太は玄関に向かって、歩き出した。その瞳には、命を奪われる悲壮感は無い。どこか力強さがある。家族を救う事を考えているのだろう。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)その後
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合つまた。
その後、大学を卒業した祐輔(ユウスケ)の新たなストーリーが始まった。
全15話を予定
【完結】不貞された私を責めるこの国はおかしい
春風由実
恋愛
婚約者が不貞をしたあげく、婚約破棄だと言ってきた。
そんな私がどうして議会に呼び出され糾弾される側なのでしょうか?
婚約者が不貞をしたのは私のせいで、
婚約破棄を命じられたのも私のせいですって?
うふふ。面白いことを仰いますわね。
※最終話まで毎日一話更新予定です。→3/27完結しました。
※カクヨムにも投稿しています。
秘書と社長の秘密
廣瀬純七
大衆娯楽
社内の調査のため、社長・高橋健一はこっそり秘書・木村由紀と不思議なアプリで入れ替わることに。
突然“社長役”を任された由紀と、自由に動ける立場を手に入れた高橋。
ふたりの秘密の入れ替わり作戦は、どの様な結末になるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる