265 / 298
二人
13
しおりを挟む
死んでいるのか?山口と飯島の頭に、その言葉が浮かんだ。その時、男がゆっくりと椅子から立ち上がった。
「…手を上げろ」
そう言った山口の額には、緊迫の汗が滲んでいる。
男は手を上げる事無く、ゆっくりと振り向いた。その顔は、喜怒哀楽、どの感情にも当てはまらないような表情をしている。例えるならば能面のような顔。それに一番近いかもしれない。
「手を上げろ!」
飯島と山口が、同時に叫んだ。
「…」
男は銃口を向けられているというのに、眉一つ動かさない。
男が無言でゆっくりと上着の内ポケットの中に右手を差し込んだ。
山口は男の行動に危険を感じ、拳銃の照準を男の右腕に合わせた。
「ゆっくりと右手を出せ!」
男は生気の感じられない瞳で、山口と飯島を交互に見ている。
男がゆっくりと上着から右手を出した。その手には、ナイフが握られている。
飯島が全身に汗を掻きながら叫んだ。
「ナイフを捨てろ!撃つぞ!」
その瞬間、男はナイフで自らの首を斬り付けた。
頸動脈を切断したのだろう。男の首から鮮血が溢れ出ている。
「おい!」
飯島と山口は男に駆け寄り、ナイフを握る右手を掴んだ。
男は声を上げる事無く、その場に跪いた。
「おい!しっかりしろ!」
飯島は男の首に手を当て、止血を試みる。男に力はない。男の右手を掴んでいなければ、倒れ込んでいるだろう。
「…救急車を一台頼む!男が首を切った!」
男から手を放した山口は、携帯電話で救急車を要請した。
「しっかりしろ!今、救急車を呼んだからな!」
飯島は右手を掴んだまま、ゆっくりと床に男を寝かせた。
「…止まりませんね」
電話を終えた山口も、とめどなく溢れ出る男の首に手をあてがうが、壊れた蛇口のように血液は止まる事はなかった。
「飯島さん!…どうしたんですか?」
部屋に入ってきた他の刑事が、床に広がる血の海を見て、目を見開いている。
飯島が首を力無く振り答えた。
「自分で首を切った。今救急車を要請した所だ…他に誰か見付かったか?」
「…全部屋調べましたが、誰も居ませんでした」
刑事は深刻な表情で答えた。
「…手を上げろ」
そう言った山口の額には、緊迫の汗が滲んでいる。
男は手を上げる事無く、ゆっくりと振り向いた。その顔は、喜怒哀楽、どの感情にも当てはまらないような表情をしている。例えるならば能面のような顔。それに一番近いかもしれない。
「手を上げろ!」
飯島と山口が、同時に叫んだ。
「…」
男は銃口を向けられているというのに、眉一つ動かさない。
男が無言でゆっくりと上着の内ポケットの中に右手を差し込んだ。
山口は男の行動に危険を感じ、拳銃の照準を男の右腕に合わせた。
「ゆっくりと右手を出せ!」
男は生気の感じられない瞳で、山口と飯島を交互に見ている。
男がゆっくりと上着から右手を出した。その手には、ナイフが握られている。
飯島が全身に汗を掻きながら叫んだ。
「ナイフを捨てろ!撃つぞ!」
その瞬間、男はナイフで自らの首を斬り付けた。
頸動脈を切断したのだろう。男の首から鮮血が溢れ出ている。
「おい!」
飯島と山口は男に駆け寄り、ナイフを握る右手を掴んだ。
男は声を上げる事無く、その場に跪いた。
「おい!しっかりしろ!」
飯島は男の首に手を当て、止血を試みる。男に力はない。男の右手を掴んでいなければ、倒れ込んでいるだろう。
「…救急車を一台頼む!男が首を切った!」
男から手を放した山口は、携帯電話で救急車を要請した。
「しっかりしろ!今、救急車を呼んだからな!」
飯島は右手を掴んだまま、ゆっくりと床に男を寝かせた。
「…止まりませんね」
電話を終えた山口も、とめどなく溢れ出る男の首に手をあてがうが、壊れた蛇口のように血液は止まる事はなかった。
「飯島さん!…どうしたんですか?」
部屋に入ってきた他の刑事が、床に広がる血の海を見て、目を見開いている。
飯島が首を力無く振り答えた。
「自分で首を切った。今救急車を要請した所だ…他に誰か見付かったか?」
「…全部屋調べましたが、誰も居ませんでした」
刑事は深刻な表情で答えた。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)その後
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合つまた。
その後、大学を卒業した祐輔(ユウスケ)の新たなストーリーが始まった。
全15話を予定
【完結】不貞された私を責めるこの国はおかしい
春風由実
恋愛
婚約者が不貞をしたあげく、婚約破棄だと言ってきた。
そんな私がどうして議会に呼び出され糾弾される側なのでしょうか?
婚約者が不貞をしたのは私のせいで、
婚約破棄を命じられたのも私のせいですって?
うふふ。面白いことを仰いますわね。
※最終話まで毎日一話更新予定です。→3/27完結しました。
※カクヨムにも投稿しています。
秘書と社長の秘密
廣瀬純七
大衆娯楽
社内の調査のため、社長・高橋健一はこっそり秘書・木村由紀と不思議なアプリで入れ替わることに。
突然“社長役”を任された由紀と、自由に動ける立場を手に入れた高橋。
ふたりの秘密の入れ替わり作戦は、どの様な結末になるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる