追放された雑用係、実は世界最強の魔導具師だった 〜気づいたら女神も勇者もひれ伏してました〜

たまごころ

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第2話 勇者たちの裏切りと、ひとつの決意

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王都からの馬車で運ばれること半日、レオンは久々に文明の香りを感じていた。石畳の街道、大理石の門、そして人の喧騒。田舎の静けさに慣れた今では、すべてがやけに眩しく見える。  
「……こういう所、もう縁がないと思ってたんだけどな」  
馬車の窓越しに見える王都グランズ。かつて彼が所属していた“勇者パーティ”も、ここを拠点にしていた。嫌な記憶がじわりと蘇ってくる。

馬車が城門をくぐると、案内の騎士が無言で先導し、王城の奥にある白い塔へと導いた。  
塔の中は静寂に包まれており、壁面に神紋が刻まれている。そこにいたのは、銀髪をゆるやかに束ねた一人の司祭だった。彼女はレオンを見ると、柔らかく頭を下げた。  
「お越しくださり感謝します。私は聖女セリナ。陛下に代わり、事情をご説明いたします」  
「えっと……俺、こういう場に慣れてなくて。どういう話なんでしょうか?」

セリナはわずかに微笑み、杖を床に立てた。  
「昨日、あなたが村で発動させた光。その波動を神殿の観測装置が検出しました。千年前に記録された“創造の権能”と同質の魔力……あなたは、それを発揮できる可能性があります」  
「権能? そんな大層なものを俺が?」  
「実際に検証しなければわかりません。ただ、王国としては放置できない案件です」

レオンは頭を掻きながらため息をついた。  
「俺はただ道具を直しただけですよ。あれだって偶然光っただけで」  
「偶然にしては、神殿の結界を三重で反応させるほどの魔力でした」  
「……そんなに?」  

セリナの眼差しは真剣だった。彼女の背後の壁に刻まれた紋がゆっくりと明滅し、彼の存在が本物であることを告げているように見える。  
「陛下はまもなく直接お越しになります。それまでこちらの部屋で待機を——」

その時、扉が勢いよく開いた。甲冑を鳴らしながら入ってきたのは、かつての仲間──勇者アレンだった。  
「やっぱりお前だったか、レオン!」  
レオンが思わず息をのむ。堂々とした立ち姿、金髪をなびかせる姿。昔は羨望の対象だった。だが今、その視線は冷たく敵意を帯びている。

「何しに来たんだ? いや、来るなって言っても仕方ないか。王命だもんな」  
レオンが苦笑すると、アレンは鼻で笑った。  
「村で怪しい力を使ったって報告があったが……まさか、雑用のお前が神の力を? 笑わせるな」  
「お前、まだそんなこと言うのか」  
「当然だ。お前は戦場で何もできなかった。ポーション管理すらまともにできず、俺たちがどれだけ苦労したか——」  
「それを言うなら、お前らが壊した装備を直してたのは誰だと思ってる」  
思わず声が荒くなる。セリナが間に割って入った。  
「お二人とも、ここは神殿内です。感情的なやり取りはご遠慮を」  

アレンは一瞥して舌打ちした。  
「こんな奴を呼ぶ必要、ほんとにあんのかよ」  
「決定権は陛下にございます」  
「フン、好きにしろ。ただし——」  
アレンは一歩近づき、低い声で囁いた。  
「俺の邪魔だけはするな。もう一度お前が俺の前に現れたら、その時は容赦しない。」

言い捨てて部屋を出ていく。扉が閉まるまで、空気は凍りついたままだった。  
セリナは静かに首を横に振った。  
「申し訳ありません、勇者アレン殿は今、魔王討伐の指揮に追われています。彼も張り詰めているのです」  
「構いません。もう慣れてますから」  

ふと、レオンの胸の奥にわずかな痛みが走った。彼の中で、何かが変わり始めていた。  
追放されたときはただ諦めだったが、今は——妙な違和感がある。あの時、勇者たちはまるで何かを隠していたような。  
セリナは彼の表情を見て、少し声を落とした。  
「レオン様……お聞きになりたいことがあるのでは?」  
「……そうですね。俺が追放された理由、あれは本当は何だったんですか?」

彼女は躊躇いながらも答えた。  
「正式に記録されているのは、“戦力不足”。しかし、裏では別の噂がありました。勇者アレン殿の装備が、あなたの魔導具によって“干渉反応”を起こしていたそうです」  
「干渉反応?」  
「つまり、あなたの造る道具が、アレン殿の力を奪っていた可能性があると……」  
レオンは絶句した。  
「……そんな馬鹿な。俺の道具は、ただの補助のはずだ」  
「ですが、現物のほとんどは処分されたと聞きます。真実を確かめる術は、もうないのです」

徐々に胸の奥が熱くなる。侮辱され、追い出された。自分の作った道具は破壊され、跡形もなくなった。  
だが、もしそれが恐れられたからだとしたら——。

その夜、与えられた部屋で一人、レオンは机に向かっていた。  
工具箱を開け、小さな魔石と金属片を手に取る。  
「干渉反応、ね……だったら試してみよう」  
魔力を流すと、金属が淡く光り、空気がふるえた。部屋全体にかすかな紋が浮かぶ。  
普通ならあり得ない光景。まるで世界そのものが共鳴しているようだった。  
だが、次の瞬間、光が静まると同時に扉を叩く音がした。

「レオン様、セリナです。お召しでしょうか?」  
「ちょうどいいところに。これ、見てくれます?」  
レオンが机の上の金属片を差し出すと、セリナは驚きのあまり目を見開いた。  
「これは……! 通常の魔石を媒体に、空間律まで安定させている? そんなこと、人間には——」  
「いや、ただ形を整えただけだよ。偶然だと思う」  
「偶然でこれほどの構築ができるはずがありません。あなたの技術は、すでに“創造の権能”そのものです」  

セリナは膝をつき、敬意を込めて言った。  
「レオン様。今こそ、ご自身の力を恐れずに向き合う時です。この世界は、あなたを必要としています」

だが、当の本人はぽりぽりと頬を掻いた。  
「そんな大げさな話はやめてくれよ。俺はただ、壊れたものを直したいだけなんだ。」

それでも、彼の中で何かがゆっくりと燃え上がっていた。  
アレンの冷たい言葉、過去の理不尽、そして今感じる不穏な真実。  
「……俺を恐れてたんだな、あいつら」  
拳をぎゅっと握りしめ、レオンは静かに呟く。  

「ならいいさ。もう誰にも、何を言われても関係ない。俺は俺のやり方でやる。」

翌日。王城の大広間で開かれた謁見の場に、レオンは呼び出された。  
壇上には国王と側近たち、そしてアレンをはじめとする勇者一行が整列している。  
「レオン=グレイブよ。汝は“創造の権能”の覚醒者として、この王国に仕える意志があるか?」  
「申し訳ありませんが、ありません」  
会場がざわつく。アレンが前に出て睨みつけた。  
「ほう。相変わらず口だけは強気だな。だが忘れるな、俺たちがいなければ魔王は——」  
「お前たちがいなくても世界は回るさ。俺は俺の仕事をする。それだけだ」  

そしてレオンは静かに頭を下げた。  
「これ以上、俺を利用するなら、二度と王都には戻りません」  

そう言い放つと同時に、ポケットから取り出した金属片が強く光を放つ。  
眩しい閃光とともに、レオンの姿が広間から消えた。  
残された者たちは呆然と立ち尽くす。

「転移魔導具……まさか自作か!?」  
アレンは歯噛みし、拳を握り締める。  
「雑用が……この俺に逆らうだと……!」

一方その頃、森の静かな小屋の前に光の粒が舞い、レオンが姿を現した。  
「やっぱり、ここが一番落ち着くな」  
息を整え、夜空を見上げる。星が美しく瞬いていた。

「……あいつらの都合なんて、もう知らない。俺は俺のやることをやる。」

風が優しく吹き抜け、ランタンの灯が揺れた。  
その光の中に、彼の決意が確かに宿っていた。

(第2話 終)
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