妻は2人がいいですって!?アホ婚約者と生意気令嬢にお仕置きします!

大井町 鶴(おおいまち つる)

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妻は2人がいいですって!?アホ婚約者と生意気令嬢にお仕置きします!

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「君はあの椅子を見てどう思う?」

婚約者のエモニエが妙なことを言い出した。

目の前には三本脚の椅子があった。彼はそれをわざとらしく自分に寄せると撫でる。

「よい素材の椅子ですわね」
「違うっ!!」

エモニエの大きな声にコリーヌはビクリとした。

「そんな感想を求めていない。この椅子は脚が三つだな。これはつまりどういうことだ?」
「どうと言われても」
「ほら、やっぱり君は愚かだな。これを見て、バランスに優れるとは考えないのだから」
「はあ……」

エモニエは手を後ろに組み胸を張って言う。

「一つより二つ。僕は伯爵家の跡取りだし、当然、妻も一人よりは二人だな」
「椅子と人間は違うと思いますけれど」
「僕が考えたうえで言っているんだ!理解しようとしろ!」

ちょっと自分の意見を言っただけなのに怒鳴られた。

(どちらが愚かなのよ。椅子は四本脚の方が安定するっていうのに。……とりあえず、この人は愛人を持ちたいと言っているのよね?)

一応、真意を確かめようと聞いてみた。

「つまり、愛人を持ちたい、とおっしゃっているのですね?」
「違う。妻、と言っただろう。君には本妻という地位はやる。だが、それは形ばかりのもの。こんな簡単なことも理解できないやつだからな。愛情はもう一人の妻に惜しげなく与えるんだ」

エモニエは好き勝手言うと、部屋から出て行った。

本日は月一回開かれている交流の日だった。前からエモニエとはウマが合わないことわかっている。まったく時間の無駄だ。

(だけど、うちに借金があるから仕方ないわ。あいつと結婚しなくてはやっていけないし。……まずは、誰を愛人にしようとしているのか調べてみるとしましょうか)

冷静なコリーヌは、エモニエと接点のありそうな令嬢を探し始めた。

――そして、浮かんで来たのはマルゲリットという男爵令嬢だ。

(自分より立場が下で言いなりになる可愛い子を選んだというわけね。それにしても気持ち悪い)

なんとマルゲリットはまだ13歳だった。ちなみに、エモニエは20歳でコリーヌは17歳だ。エモニエとマルゲリットは7歳も違う。

(世間を知らない子がエモニエの餌食になるなんて許せないわ。人生が台無しになる前に止めてあげなくちゃ)

マルゲリットはコリーヌと同じ学園に通っている。エモニエも学園出身で、仕事で学園に来ることもあるらしいから、そこでマルゲリットを見染めたのだろう。

――コリーヌはお昼休みにマルゲリットのいる棟の方へ向かった。

彼女は男子生徒たちに囲まれて楽しくおしゃべりをしている。

(確かに可愛いわね。人気なのもわかるわ)

少し眺めていたら、こちらに気づいたマルゲリットが口を開いた。

「あら、ずいぶんと年増な女が近づいてきたと思ったら、エモニエ様の婚約者ね」

初対面なのにずいぶんな口の聞き方をされた。コリーヌは眉間にしわを寄せた。

(なにこの子。エモニエの妻にしたいのがこの子?すごく気が強そうじゃない)

見た目は幼い感じなのに、男子生徒を侍らせ偉そうにしているあたり、なかなかの曲者だ。

「なに?私があなたを知っていて驚いた?あらあら、4つも年上なのに言葉も話せないのかしら」

予想しない事態にどうするべきかと考えていたら、怖気付いていると思ったらしい。憎たらしい言葉を吐いてくる。

「マルゲリット!こら!」

駆けつけて来た男子生徒が、マルゲリットを叱り出した。

彼は自分と同じくらいの年齢の目鼻立ちが整った男性で、どうやらマルゲリットの兄らしい。

「妹がすまない。オレは兄のジャルベールだ。君より学年は1つ上になるな」

学年ごとにタイの色が異なるので、すぐに学年はわかった。

「初めまして。私はギマール子爵家のコリーヌと申します」
「ああ、知っているよ。というのも、オレもあなたに話したいことがあって探していたんだ」
「私をですか?」
「ああ」

ジャルベールは、襟を正すとコリーヌに柔らかく微笑みかける。礼儀正しく悪い印象はしない。

「お兄様、エモニエ様の形だけの妻になる人になんの用事ですの?」
「失礼なことを言うな!……お前は聞く耳をもたないから。オレが彼女と話をすることにしたんだよ」

(どうやら彼には私と同じ目的があるみたいね)

ジャルベールに少し話したいと言われ、すぐに了承した。

庭園の方に移動するとジャルベールは話し出した。

「妹がすまない。あれはまだまだ子どもで自分がなにをしようとしているかわかっていないんだ。どうか妹の目を醒ますのに協力していただけないだろうか?妹はプレゼント攻めでずいぶんとその気にさせられているみたいだ」
「まあ、プレゼント攻めですって?あの人、私にはプレゼントなんてしないのに」

13歳の令嬢にせっせとプレゼントを贈っているのかと思うと、本気で気持ち悪い。

「え、それはクズだな。あ、失礼。……とにかく、妹の未来を棒に振るわけにいかない。君からもビシッと言ってやってくれないだろうか?」
「先ほどのこと、ご覧になったでしょう?私がなにを言っても聞くと思えませんわ」
「そう言わず……!最低な男のせいで妹が犠牲になるのを見ていられない」
「……ちょっと!それって私が最低な男と結婚するって言っているのと同じではありませんか」
「だって君がさっき、そいつはクズだと教えてくれたじゃないか」
「そうは言ってません」
「じゃあ、その男を愛しているの?」
「まさか。大嫌いだわ」

プハハッとジャルベールが噴き出した。

「やっぱりそいつは最低なんだな。君は、そんな男と結婚しなくちゃならない理由があるんだね」
「そうよ。うちに借金がなければ、結婚なんてしたくないし見たくもないわ」

ジャルベールは大きくうなずいた。

「まともな人ならクズ男と結婚などしないよな」
「あなたの妹さんは妻になりたいみたいだけど?」
「だから問題なんだよ。君にとっても問題だろう?」
「そうよ。はあ……」

なんで、あんな男のために悩まされているのだろうと、ため息を漏らした。

「貴族って大変だよな」
「あなただって貴族でしょ」
「そう。爵位が低くて金のない貴族は惨めだって話だよ」

それから、同じような境遇のジャルベールとしばらく互いに嘆いていた。

「君と話せてよかったよ。すごくしっかりしているし、最低男には勿体ない人だ。……とはいえ、現実問題、ここは一致団結して解決することにしないか?」
「そうね。協力しあいましょう」

彼も学園の学生だというのもあって、放課後にエモニエを思い留まらせることはないと、いろいろと話し合った。

――また、気乗りしないエモニエとの定期的なお茶会の日がやってきた。

「今日は、未来の妻を紹介する」

エモニエはマルゲリットを連れて来ていた。

「私~、学園でコリーヌ様に突撃されましたの。嫉妬したのね」
「なんだって?僕が紹介する前に接触するなんて愚かだな」

エモニエは片方の口角だけを上げバカにするように話し続けた。

「コリーヌ様は私の前で一言も返事をしなかったのよ。パーティーなんかではどうするつもりなのかしら。エモニエ様をお支えすることなんてできないでしょうね」

13歳の割に大人びた話し方をするマルゲリットにほんのすこし感心したが、性格は非常に悪い。コリーヌは黙り込んだ。

「ああ、僕には機転の利く妻が必要だ。マルゲリットみたいな天使がね」

マルゲリットがエモニエに抱きつくと、エモニエはデレデレしている。

(気持ちわるっ)

「……マルゲリットさん、あなたは本気でエモニエ様の愛人になるつもりですの?」
「愛人なんて言葉を言うな!彼女は妻になるんだ!」

エモニエが叫ぶ。

「だって正式な妻は私でしょ?だったら、彼女はどうしたって愛人ということになりますわ。世間の常識です」
「うるさい!僕に逆らうなら子どもを生ませてやらない!跡継ぎはマルゲリットの生んだ子だ!」
「まあ……大胆な宣言をされますのね」

指でこめかみを押さえていると、扉がバンと開いた。

「今の言葉、聞きましたぞ!政略結婚をなんだと考える!」

コリーヌの父であるギマール子爵が真っ赤な顔をさせていた。後ろにはジャルベールが大量の書類を抱えている。

「見せたいものがある!」

ずかずかと部屋に入ってきた二人は書類をテーブルいっぱいに広げた。

(ついにこの時が来たのね……)

コリーヌは目を細め口元に弧を描く。

「あんたはバシュロ伯爵の正当な血筋ではないな。散々、威張り腐っておいて……」
「なにを言う?なんの証拠があるっていうんだ!」

椅子にふんぞり返ったエモニエが大きな声で威嚇する。

「これを見ろ。バシュロ伯爵夫人がこれを知ればもうお前は終わりだ」

ジャルベールがエモニエに書類を掲げる。そこにはエモニエが娼婦の子であることが記されていた。

エモニエは目の前に突き付けられた書類を読むうちに、指先は震えて顔色がみるみるうちに変わっていった。

自信に満ちていた表情は消えて眉が引きつり、唇がわずかに開いている。

「……これは、嘘だ……」

エモニエは書類を奪い取るとビリビリに破きだした。

「こんなもの!嘘だ!嘘だ!」

顔を赤くし破った書類を踏みしめ体を震わせている。

「そんなことをしても無駄だ。写しはすでにバシュロ伯爵夫人に送ったところだ」
「陰謀だわ!それが真実なものですか!」

マルゲリットも一緒になって叫びだした。

「嘘じゃない。バシュロ伯爵には愛人が何人もいる。そして、愛人の一人の娼婦が子を産んだ。それは夫人の出産と同じ頃だ。夫人の子は弱くてすぐに命を落としたが、伯爵はその事実を隠して勝手に娼婦の子を夫人の子としたんだ」

夫人は自分の髪色と似ているエモニエになんの疑いをもたず、甘やかして育てた。そして、できあがったのが今のエモニエだ。

「この証拠はな、伯爵の圧政に耐えられなくなって秘密を知る関係者が語ってくれたんだよ。何度も足を運んだし、いずれ夫人が味方になるだろうと伝えるとあっさり協力してくれた」

伯爵は入り婿だ。そして、夫人はものすごく気が強い人だ。どうなるかは目に見えている。

「信じられない……僕が娼婦の子?じゃあ、僕はどうなるんだ」

途中から黙り込んでいたマルゲリットが突然、立ち上がった。

「私……エモニエに騙されていたのね!お兄様、もう帰りましょう!」

マルゲリットはもう、エモニエを見ようともしていない。

「お前は屋敷には戻れない。領地で反省してもらおうと思っている」
「なんですって?学園には私を慕う人がたくさんいるのよ!?私の居場所を奪う気!?」
「礼儀も思慮も欠けたままで学園に通ったって、お前の評判が下がるだけだ。それに、我が家の恥にもなる」

マルゲリットは顔を真っ赤にして叫んだ。

「そんなのイヤ!!私の未来は順調だったのに!お兄様が余計なことをするからじゃない!コリーヌ様に騙されたんでしょう!この女!」

興奮したマルゲリットがコリーヌに飛び掛かった。

「やめろ!恥をこれ以上晒すな!」

ジャルベールに腕を掴まれたマルゲリットは肩を震わせながら泣き始めた。

「うるさい!うるさい!みんな勝手だ!僕の気持ちをなんだと思っているんだ!マルゲリットも!コリーヌも!みんな!」

エモニエが床を踏みしめ叫ぶ。

「どうしてあなたの気持ちを考えなくてはいけないの?最低な癖に」

コリーヌの声は冷たく、鋭かった。

「は?誰に向かって言ってるんだ!そうやって、いつも僕を見下していたんだろ!この野郎!」

エモニエまでもが飛び掛かってきた。

だが、即座にジャルベールに鎮圧される。思い切りジャルベールがエモニエの腕を捻じ曲げていた。

「痛い!折れる!折れるって!!」

エモニエは情けない姿をさらし続けたのだった。

──そして静かに季節が過ぎた。

「なんだか、夢でも見ていたみたい」
「本当に。あんな馬鹿げた騒動、そうそうないよな」

学園の庭で、コリーヌとジャルベールは並んでランチをとっている。

「妹さん、領地に行く時は大暴れしたんですってね。その後はどうなの?」
「嘆きまくってるな。脱走しようとして使用人を誘惑したり、もうオレの手には負えない」
「まだ若いのだからどうにか更生してほしいわ。未来もあるだろうし」
「君は優しいよね。あんな目に合わせられたのに」
「きちんと解決できたから、もういいの」

真実を知った夫人はエモニエにガラリと態度を変えたそうだ。とはいえ、情があるのも事実らしく、とりあえずは僻地においやったのだとか。

「それに、夫人はうちの借金も解決してくれたでしょう?素敵な方だわ」

夫人は伯爵が個人的に溜めていた金を全て取り上げて、ギマール家の借金をなくしてくれた。とにかく、伯爵が自由にする金をなくしたいらしい。

「君は自由の身になったわけだよな。もう政略結婚なんてしなくていいんだ」
「ええ。父がまた借金を作らなければだけど」

コリーヌの父は領地経営が壊滅的に下手だ。また借金でもこさえたら……気が気じゃない。

「それなんだけどさ……君のお父さん、どうやらオレのことを評価してくれてるみたいなんだよね」
「どういう意味?」
「エモニエの調査でお父さんとも仲良くなってさ。だからさ、その、オレっていい男だと思うんだ」
「……なにが言いたいのよ?」
「だからさっ、オレと一緒になってくれないかなって言いたいんだよ」

ジャルベールは、耳を赤くしモジモジした。

(意外と照れ屋なのね)

エモニエを即座に鎮圧してカッコイイ言葉を言っていたくせに、と口元に苦笑を浮かべた。

「お父様が認めるなら問題ないわね」
「お父様が認めるから、了解してくれるのか?」
「だって……私たちの出会いは少し複雑じゃない。あなたと一緒になったら妹さんとも家族になるわけだし」
「妹はどうにかして改心させるよ。嫌なら一生会わなくていいから」
「一生だなんて……」

あまりにも必死に言うジャルベールが愛しい。

コリーヌはそっとジャルベールの耳に顔をよせて囁いた。

「安心して。私、あなたのこと好きよ。妹さんのことが気にならないくらいにね」

途端に真っ赤になってジャルベールが、耳まで染め上げて俯いて固まる。

(うふふ。そんな初々しいあなたも好き)

コリーヌはそっと指を絡め、彼の手を包み込み微笑んだ。

ジャルベールも優しく彼女を見つめ返したのだった。
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