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第3話 悪魔三兄弟とのデート
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しおりを挟む翌日――。
私は次期魔王候補の三人と一緒に早速デートに出かけていた。
(デートには憧れていたのだけれど……まさかちょっと大変なことになってしまった……)
最初はデートに個別に向かうという話になったのだけれど――なぜだか三人が言い争いを始めてしまって、その場を丸く収めるために「三人でそれぞれの行きたいデート場所の案内をして、一番良かった場所を競う」という趣旨に変わったのだった。
(どうしてこうなった……)
先ほどまでは、アスモデウスお兄様おすすめのスポットである「セラフィーが喜びそうな製菓の材料店」(人間界)に連れて行ってもらったところだ。
蕩けるバター、サラサラ砂金みたいに綺麗なお砂糖や小麦粉、とろ~り生クリーム、色とりどりのリキュール、甘い香りを放つ香料達。
『わああ、材料がたくさんあります……!!』
『お菓子作りが大好きなセラフィーなら、絶対に気に入ると思ったんだ』
私の左隣に立つフォルネウス君が、私の右隣に立つアスモデウスお兄様に向かって口を開いた。
「いいかい、アスモデウス兄さん、さっきみたいにボク達の目をかいくぐって、セラフィー姉様に何かしようっているのは絶対にダメだからね。そもそも魔王様が姉様が相手を決めるまでは手を出すなって言ってたでしょう?」
「ええ、仕方ないな……目をかいくぐらずに堂々と何かするよ」
そう言うと――。
「きゃっ……!」
――アスモデウスお兄様が笑顔を浮かべたまま、私のホッペにチュッと口づけてくるではないか。
それを見てフォルネウス君が吠えた。
「ちょっと! セラフィー姉様もぼやぼやしないでよ!」
「ふ、ふわああ」
怒られて動揺していると――。
「姫様! こちらです、オレが貴女を案内したい場所は……!」
全く空気が読めない底抜けに明るいバエルの声が前方から聞こえる。
指し示された先を見ると――。
『魔界の遊園地』と書かれたオンボロの木札。
なんだかとっても楽しそうな名前だけれど――。
いざ中に入ってみると――。
「うわあああっ……す、すごい……」
(色んな意味で……)
一度入ったら二度と出てこれないような漆黒の森のそば、紫に滾った毒の沼にはおどろおどろしい人食い花がケタケタと笑っている。近くでは、腐臭を放つ謎の怪物達が匍匐前進をしたりしていた。
バエルがそれを指さして満面の笑みを浮かべる。
「絶対にセラフィー姫様なら喜んでくださると思っていました!」
アスモデウスお兄様はニコニコと笑ったままだったが、フォルネウス君が横やりを入れてくる。
「バエル兄さん、センスない……」
「なんだと、フォルネウス……! だったら、お前の一番良いと思うデートスポットに連れて行ってみせろ!」
「本当にしょうがないな、兄さん達はセンスがない。セラフィー姉様が気を遣って喜んでいるのにも気づけない愚鈍な奴らなんだから……仕方ないからボクが最高のデートスポットを紹介するよ」
そうして、フォルネウス君が案内してくれたのは――。
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