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本編
10※
しおりを挟む――お前がほしい。
オルトロスから机の上へと押し倒された私の声が上ずる。
「な、何言ってるの? あんた、わざわざ私に手を出さなくても、女生徒いっぱい侍らせてるじゃない?」
そこで私はハッと気づく。
眉根を寄せると相手を睨みつけた。
「もしかして私の身体を支配して完全勝利してやろうってこと? サイテー、性格悪すぎ」
一瞬だけオルトロスが怯んだが、すぐに普段の傲慢な態度に戻った。
「……性格悪くて結構。お前も自分の体に自信があるようで何よりだ。さあ、約束通り、ちゃんと願いを叶えてもらうぞ」
彼の長い指が私の髪を梳いてくる。
その手つきが優しいから混乱してしまう。
胸の内がざわつく。
(私は……)
彼の長い指が鎖骨を何度も撫ぜてくる。
正直こんなシチュエーション。
嫌いなやつにされたら、普通に無理だ。
何が何でも抵抗するし、高位魔術をぶっ放して、相手を吹っ飛ばしていると思う。
だけど……
抗えない自分がいる。
(私はずっとオルトロスのことが……)
振られた後も、自分でも未練がましいとは思うけど、ずっとずっとオルトロスのことを見ていた。
成績が掲示される時、本当はいつも同着一位で嬉しかった。
だって、話すきっかけになるから。
『またお前も同着かよ』
恋人にはなれなかったけど、ライバル同士ではいられる。
彼がいつも侍らせている女生徒達とは、自分は違う。
さすがに特別な存在だとか、そんな風には自惚れきれなかったけれど……
彼にとっては、ちょっと違った立ち位置存在なんだって思える気がして。
だけど……
(私も本当はオルトロスに……)
女性として見られたいと思っていて……
周りにいる女生徒たちのことが本当は羨ましかった。
どうして隣に一緒にいるのが自分じゃないの……?
メガネじゃないお前が嫌って言われたけれど、彼が侍らせているのは派手目の女の子ばかり。
だから私も一生懸命彼に綺麗に見えるように努力した。
だけど、私のことは恋愛対象としては絶対に見てくれなくて……
本当は、私もオルトロスに女性として……
――私は本心を悟られたくなくて、強がってみせた。
「約束……だから、仕方ないわね、ほら、さっさと欲しがりなさいよ」
見下ろしてきていたオルトロスがぼやいた。
「言い方が可愛くねえ」
「別にあんたに可愛いとか思われなくたって良いもの」
「ああ、そうかよ。じゃあ、遠慮なく」
彼の顔がゆっくりと近づいてきた。
私の首筋を彼の唇が甘噛みしてくる。
そのままざらついた舌で舐められてしまい、ビクンと身体が反応した。
「んっ」
「ああ、良いな」
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