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番外編 オルトロスside
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しおりを挟む聖ステラ学院。
魔法科から普通科や家政科まで色々な科が集合しているマンモス校だ。
生徒の半数は貴族出身者であり、オルトロス・カーマイン公爵令息は、幼稚舎の頃から持ち上がりの生徒である。
彼のように、幼等部から大学までのエスカレーター組が多い中、中等部に特待生として編入してくる女生徒というのは、かなり珍しい。
その女生徒の名は、ラビアンヌ・メルヴィー伯爵令嬢。
オルトロスが最初に見た印象は……
(今時珍しい地味な三つ編みメガネだな)
物語なんかにいそうな地味でダサい感じの令嬢だった。
メルヴィー伯爵家は没落寸前というのだから、ある程度は致し方ないのかもしれないが、それにしたって地味だった。
持ち上がり組で特権階級意識がかなり強くて煌びやかなご令嬢たちが多い分、かなり浮いていた。
だから、ラビアンヌは輪の中に入れず、一人ぼっちで校庭のベンチに座って食事を食べていることが多かった。
とある昼休み。
中等部に上りたてのオルトロスは、まだまだヤンチャな印象が強い男子生徒で、どっちかというと周囲に弄られる感じのタイプで、よく男子たちと校庭でボール遊びに興じていた。
正義感もやや強かったこともあり、校庭の片隅に佇んでお弁当を一人で黙々と食べるラビアンヌを放っておけなかった。
オルトロスは、ベンチに座る彼女に近づくと声を掛ける。
「なあなあ、その弁当うまそうだよな」
「え?」
「一個もらって良い?」
「ええっと良いですけど」
聞くが早いか、色とりどりのおかずが詰まった弁当の中から卵焼きを摘まむと、オルトロスはひょいっと口に放り込んだ。
もぐもぐと口の中で堪能すると、甘くてしっとりして美味い。
「うまいな、お前んちの使用人が作ってくれてるの?」
「ええっと、実は私の手作りなんです」
「え? これ、手作りなの?」
オルトロスは目を瞠った。
一応ラビアンヌも貴族のはずだ。ご令嬢がお弁当を作るのが上手だなんて……!
衝撃だった。
「はい」
頬を染めながら彼女が答えた。
地味だけど可愛いと思ってしまった。
「ええっと、特待生のラビアンヌでしょう?」
「はい、御存知でしたか?」
「そのさ、同い年だし、ため口で良いよ」
「え? はい、わかりました……じゃなくて、分かった」
「これからも仲良くしようぜ」
こうして、オルトロスはラビアンヌと会話を交わす仲になった。
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