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5 4人の邂逅
43 マリーン
しおりを挟む「どうして、こんなところに……バッシュ……」
呆然と呟くマリーンの元へと、情熱的な短い紅い髪の持ち主である美青年バッシュが、つかつかと歩いてくる。
到着すると同時に、彼女の二の腕を掴んだ。
まるで海のような切れ長の青髄の瞳が、彼女の瞳をまっすぐに捉えてくるものだから、囚われた心地になって動けなくなる。
マリーンの半開きになった口がふるふると震えた。
「あ……」
「……マリーン様、貴女が出産してすぐ……まだ産後の肥立ちも良くないのに旅立ったから……心配して駆けつけたのです」
「貴方が、私の心配を……?」
「ええ、もちろん。昔仕えていた女性の安否が心配だからと……帰省を許してほしいと王都騎士団には話をつけてきた」
鬼のような形相になっていたマリーンの顔がくしゃりと歪む。
小動物を髣髴とさせる瞳にじわりと涙が浮かんできた。
だけれど、彼女の瞳が湖面のように揺れ動く。
「そういう理由をつければ……故郷に帰って……ミリーさんに会える口実になるものね……」
マリーンは体に巻き付けている白いシーツを両手でぎゅっと握った。
「そうじゃない! 確かに最初にミリーを頼ったのは間違いないが――」
「ほら、やっぱりバッシュはミリーさんのことが好きなのよ……! だから最初に会いに行ったの?」
「マリーン様、いったい何を勘違いしている? 俺はミリーのことは……」
「勘違いじゃないでしょう!??」
またもマリーンの表情は憤怒のものへと変貌した。
「そうじゃなきゃ、最初に私のところに会いに来てくれたはずよ!」
「地元とはいえ、さすがに場所が分からなかったんだ……」
バッシュは眉を顰める。
「いいから、ミリーさんのことが好きだって認めなさいよ!! 私が……私がなんでこんなに惨めな思いを……して……どうして好きでもないアイザックと結婚して……なのにできた子どもは自分の子どもだって認めてくれなくて……」
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