【R18】あなたには帰る場所がある。だから、愛しているとは言えない。

おうぎまちこ(あきたこまち)

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5 4人の邂逅

43 マリーン



「どうして、こんなところに……バッシュ……」

 呆然と呟くマリーンの元へと、情熱的な短い紅い髪の持ち主である美青年バッシュが、つかつかと歩いてくる。
 到着すると同時に、彼女の二の腕を掴んだ。
 まるで海のような切れ長の青髄の瞳が、彼女の瞳をまっすぐに捉えてくるものだから、囚われた心地になって動けなくなる。
 マリーンの半開きになった口がふるふると震えた。

「あ……」
 
「……マリーン様、貴女が出産してすぐ……まだ産後の肥立ちも良くないのに旅立ったから……心配して駆けつけたのです」

「貴方が、私の心配を……?」

「ええ、もちろん。昔仕えていた女性の安否が心配だからと……帰省を許してほしいと王都騎士団には話をつけてきた」

 鬼のような形相になっていたマリーンの顔がくしゃりと歪む。
 小動物を髣髴とさせる瞳にじわりと涙が浮かんできた。
 だけれど、彼女の瞳が湖面のように揺れ動く。

「そういう理由をつければ……故郷に帰って……ミリーさんに会える口実になるものね……」

 マリーンは体に巻き付けている白いシーツを両手でぎゅっと握った。
 
「そうじゃない! 確かに最初にミリーを頼ったのは間違いないが――」

「ほら、やっぱりバッシュはミリーさんのことが好きなのよ……! だから最初に会いに行ったの?」

「マリーン様、いったい何を勘違いしている? 俺はミリーのことは……」

「勘違いじゃないでしょう!??」

 またもマリーンの表情は憤怒のものへと変貌した。

「そうじゃなきゃ、最初に私のところに会いに来てくれたはずよ!」

「地元とはいえ、さすがに場所が分からなかったんだ……」

 バッシュは眉を顰める。

「いいから、ミリーさんのことが好きだって認めなさいよ!! 私が……私がなんでこんなに惨めな思いを……して……どうして好きでもないアイザックと結婚して……なのにできた子どもは自分の子どもだって認めてくれなくて……」



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