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第1章 海外での出会い
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しおりを挟む「これ……!」
先ほど眺めていた黒猫のオーナメントだった。
「欲しかったんだろう? プレゼントだ」
「そんな、知らない人から物を貰うなんて出来ません」
美桜が勢いよく告げると、美青年が「おや?」という表情を浮かべていた。
「しばらく一緒に過ごしただろう? 知らない奴呼ばわりは傷つくな」
「あ……ごめんなさい。だけど、出会ったばかりですし。こんな高い物……!」
「良いって。俺が贈りたくて買ったんだからな。控えめなのも結構だが、誰かが何かを贈ってきたら喜んでくれた方が、送り主も嬉しいはずだ。まあ、あんたが要らないんなら、それはそれで良いんだがな」
美青年の言い分もそうな気がした。
(猫のこと、そんなに好きじゃなさそうだったのに……この人がいうように冗談だったのかな?)
美桜は受け取ることに決める。
「でしたら、ありがとうございます」
「いいや、どういたしまして」
美青年がふっと微笑むと――破壊力がものすごかった。
美桜は我に返った。
(いけない、ずっとこの男の人のペースに乗せられてる)
美桜はまたホテルに向かって歩を進める。
黒猫のオーナメントはバックパックに取り付けることにした。
(それにしたって……)
裏路地に街灯はあるものの、薄暗くて仕方がない。酔っぱらって寝転がった人たちもいる。
(この男の人、変な人だけど、一人でこの裏通りを歩くよりも心強かったかもしれない)
そうして、しばらく会話がないまま歩いていると、目的地のホテルに辿りついた。
旧市街に立っており、レンガ造りのレトロな外観でおしゃれな建物だ。
(良かった、これで今日の夜は安心ね。長旅で疲れたし、よく寝て明日の朝、観光名所を回ることにしよう)
そんなことを思いながら、綺麗なホテルの自動扉の前へと足を踏み入れようとしたのだが……。
「お、ちょっとドジな雰囲気のあんたにしては、女性が泊まっても悪くないホテルを選んでるじゃないか」
背後にいる美青年が美桜に向かって軽口を叩いてきた。
思わず、くるりと振り返ってしまう。
「ちょっとドジって、いったいどういう意味ですか!?」
「そのままの意味だよ」
少しだけムッとして頬を膨らませていると、美青年の大きな手が美桜の頭に乗っかってくる。あげく、猫か何かを愛でるかのように頭をくしゃくしゃにしてきた。
「きゃっ、何するんですか!?」
すると。美青年がカラカラと笑った。どうやら揶揄われたらしい。
「夜は治安が悪いんだ。お子様は早く寝ろよ」
「お子様ではありません」
ついついムキになって反発していたら、美青年がますますカラカラと笑った。
「そういうところだよ。最近では珍しい類の面白い女だな」
「むむむ」
とはいえ、自分の態度も少々子どもっぽかったかもしれない。
(海外にいるせいもあってか、なんだか普段よりも、気持ちが顔に出ちゃう)
なんだかいつもの自分とは違う自分になった気がして、青年とのやり取りは不思議と嫌な感じはしなかった。
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