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第4章 兄弟が愛した女性
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しおりを挟む「どうしたんですか?」
美桜が尋ねると、新宮部長が嬉しそうにはにかんだ。
「実は、父から子会社を任されることになってん。次期総帥やから、その前に練習やって」
「そうなんですね、おめでとうございます」
幼馴染のような存在の新宮部長が父親の後を継いで頑張っているのは、美桜としても嬉しかった。
「もしも君が就職先を探しているんだったら、僕の秘書にでもどないや?」
新宮部長の提案はすごく嬉しいものだったけれど……。
「いいえ、実はもう新しい場所で働いているんです」
新宮部長のこめかみが一瞬だけピクリと動いた。
「新しい場所?」
「はい、そうなんです。前の職場も……もちろん好きでしたけれど……今の職場のことは大好きなんです」
おかしな噂が立つまでは、子どもの頃から関わってきた会社ということもあって、新宮グループ系列の会社で働くのは嫌いじゃなかった。
「おかしな噂か」
「え?」
新宮部長が真剣な眼差しでこちらを見つめてくる。
「おかしな噂やない。ずっと会いたかった、美桜ちゃん。せっかくやから、あの噂、ほんまにせえへんか? そうして、噂を流して君を虐めた女性社員の鼻を明かしてやったらええ」
「え……?」
新宮部長の話した内容がすんなり頭に入ってこない。
けれども、美桜は混乱する頭で話を整理する。
(噂を本当にするって、それって……)
美桜はそっと俯いた。
「新宮部長、ご冗談ばっかり。いつも言ってたじゃないですか? 婚約者さんに怒られちゃいますよ」
すると。
新宮部長が嬉しそうに微笑んだ。
「婚約者とは破談になったんや」
「どうして、ですか?」
なんとなく嫌な予感がしてくる。
「婚約者もあの噂を聞いたみたいでな。あの噂、美桜ちゃんは嫌やったかもしれへんけど、僕としては勇気をもろた。好きな女性がいるって断らせてもろた。父にも『お前の好きにせえ』って」
美桜は胸騒ぎがしてくる。
「好きな女性……?」
新宮部長がこちらをじっと見つめてくる。
「いけずやね、そんなん決まってるやん」
彼の視線は自分だけに向けられていた。
「美桜ちゃんには妹やなくて、伴侶としてそばにいてほしい」
(そんな……)
美桜は衝撃を受けて打ちひしがれてしまう。
自分たちの噂のせいで――新宮部長の婚約者が――一人の女性が不幸になってしまったかもしれないのだ。
心臓が嫌な音を立て始めた。
「もうずっと僕の気持ちには気づいていたやろ? ねえ、噂をほんまにしようや。小さい頃からずっと君のことだけが好きやねん」
新宮部長が至極幸せそうな笑顔を浮かべてきている。
「私は……」
美桜は喉がカラカラになった。
これまでもずっと「冗談ですよね」って笑顔で流していたけれど……。
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