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第6章 初めての恋
34ー1 新幹線
しおりを挟む一方、美桜はと言えば……。
恭司のマンションを飛び出た後、すぐに会社に休みをもらう電話を入れた。
そうして、東京駅から新幹線に飛び乗って実家に帰る最中だった。
美桜の父はかなり頑固だし、昔堅気というよりも時代遅れのやや男尊女卑的な発想の持ち主でもある。自分の言うことを聞いてさえいればどうにでもなるというスタンスの人物ではあるものの、美桜のことが決して嫌いなわけではない。
(これまで私がちゃんと自分の主張をしていなかっただけ)
これまで自分の意見にずっと従ってきた美桜が意見を述べたので困惑しているのだろう。
それに、外聞のようなものをすごく気にする人物でもある、これから新宮順一が新社長に、美桜の父が副社長に就任することもあって、美桜が縁談話を断ると仕事に支障が出ると考えているに違いない。
(だけど、ちゃんと説得しなきゃ!)
そう気合を入れていたら、一通のSNSメールが届いた。
「あれ? 佳代ちゃんからだ」
メールの主は前の会社の同期の大河内佳代からだった。
『美桜、元気にしているだろうか? 私は美桜が会社を辞めて以来、少しだけ退屈な毎日を送っている』
メガネをかけた理知的な女性だ。メガネを外した姿は見たことがないし、化粧っ気がないのだけれど、日本人形のように綺麗な黒髪の持ち主だった。抑揚のない落ち着いたトーンで話すのだけれど、少しだけ時代劇のことを思い出させる喋り方だ。
大学院の修士課程を出てからの就職だったらしく、美桜よりも二歳年上だったけれど、年齢関係なしに気さくに話しかけてくれていた。
(佳代ちゃん……)
美桜におかしな噂が流れても、他の女性社員たちに対して、一緒に立ち向かってくれた唯一の人物でもある。
自分と一緒にいたら佳代まで不幸になってしまう。
そう思って一方的に連絡を絶っていたのだけれど、こうやって佳代から連絡を入れてくれるなんて……。
(ごめんね、佳代ちゃん。勝手に連絡を返さないで……)
ふと、ドイツでの恭司との会話を思い出す。
『友達思いだと言ってやりたいが……あんたと一緒に戦って欲しかったんじゃないか、あんたの友だちはさ。あんたが悪くないって信じてくれていたんだろう? 連絡とか来なかったのか? あんたが勝手に、そいつのことを遠ざけて、相手は悲しんでいるかもしれない。せっかくだから、連絡をとってやれよ。自分のことを大事にしてくれる人間ってのは、すごく貴重だ』
美桜の瞳にじわりと涙が浮かぶ。
(恭司さんが話していた通り、私が勝手に仲良くしてくれる相手のことまで拒んでいたんだ)
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