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第1章 敵国への旅路
第4話―1 国境で将軍、我慢は禁物です!※
しおりを挟む国境にそびえたつアルパイン山の麓。
山自体は緩衝地帯に当たるため、裾野に関門が設けられている。
だだっ広い荒野を抜けて、二人は入り口まで辿り着いた。
(村から砦まで見えていたし、わりと近いと思っていたら結構距離があるのね)
旅慣れていないこともあり、少しだけ脚が重たい。
「ラフィーネ姫、疲れたんじゃないですか? ほら、抱えて差し上げますよ。それとも、関門を超えてからおんぶしましょうか?」
イクシオンが手を差し出してきた。
「イクシオン将軍、一人で結構ですので」
だが、ついつい反発してしまった。
彼の表情が強張って見えたが……気のせいだろう。
(妾だというのに、よくないわね)
ぎゅっと両手を胸の前で組む。
「ごめんなさい、将軍」
謝ってから顔を上げると、イクシオンの赤紫色の瞳が爛爛と輝いて見えた。
瞬きをしてもう一度しっかり見ると、いつもの仏頂面だったので……気のせいだろう。
やりとりをしている間に門を通る順番が来た。とはいえ、戦争も近いと言われていたこともあり、関門付近に人の姿はまばらだ。
伝令は来ていたはずだが、自国の姫と敵国の将軍の姿を見て、見張りの兵たちは驚きの声を上げる。
「噂は本当だったのか。姫が将軍の妾にというのは……」
「そもそもイクシオン将軍は、いつこの門を通り抜けたのだ?」
「月光姫ラフィーネ姫様のご尊顔を、こんなに近くで見れるなんて……!」
「羨ましい……」
イクシオンが私の肩を抱いてきたかと思うと、ざわつく人垣の中に割って入る。
「これが書状と通行証だ。通してもらおうか?」
兵たちが恐れをなし、まるでさざ波のように引いていった。
何事もなく通過できる、そう思っていたのだが……
「友の仇だ! 敵将イクシオン・ロクス! 覚悟!」
突如、年若い兵が剣を振りかざし駆けてくるではないか――!
振り下ろされた刃を、イクシオンがいつの間にか抜いていた剣で打ち払う。
「……姫様に当たったらどうするつもりだ」
ロクスの将軍の眼光に射抜かれ、兵はその場にくにゃりと、へたり込んだ。それらを仲間たちが抑え込む。年若い兵は負け惜しみのように叫んだ。
「敵国の妾になったっていうのなら! 姫様も……いいや、その女も同罪だ! 妾から産まれた、この売国女!!」
……彼の言葉に衝撃が走る。
自分から望んでイクシオンの妾になったわけではないが、自国の民から恨まれる可能性もあるとは考えもしていなかった。
(そもそも私は、妾の子と蔑まれていたから……)
唇を噛み締めていると……
突然、イクシオンが私の身体を抱き寄せてくる。
かと思えば、突然背や腰を撫でられはじめた。
「将軍、皆の前で何を……っ……」
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