135 / 150
第5章 祖国への帰還
第26話―8 イクシオンside
どうして忘れていたのだろうか。
自分の人生の半分以上を作り上げてきた女性。
自分という人格を成す一部。
彼女なしでは、自分は自分とは言えない。
彼女のそばに戻れるならと、どんな辛苦も舐めて、泥水を啜りながらでも生きてきた。
忘れるには、あまりにも存在が大きすぎる。
かけがえのない……
「……ラフィーネ……」
――唯一無二の彼女と、月の女神が重なった。
イクシオンの紫水晶の瞳から涙が溢れてきた。
――どうしようもなく大切な姫。
自分にとっては、彼女を想って生きてきた半生で。
彼女の記憶がない自分など、もうイクシオン・ロクスではないというほどに。
だけど彼女に拒絶されたら生きていける気はしなくて。
怖くて馬鹿な自分は、愛妾だと、本当に馬鹿なことを言って。
それでも、愛想を尽かさずに、「妻に」と、「愛している」と、告げるのを待ってくれていたのに……
彼女を失くしたら生きていけないからと、彼女との記憶を犠牲にしたはずなのに。
「ラフィ……」
すぐに頭の中が白い靄に覆われそうになる。
「消えないでくれ……忘れたくないんだ、ラフィのことを」
その時、ふと思い出す。
リンダが要人の護衛をしていると言った。
姉王もアモルに姫がいると知らせて来た。
アモルが魔獣に襲われているのだ。
せっかく命を救ったはずなのに、未来永劫、彼女に言葉を伝える機会を失うところだった。
「行かないといけない」
窓を開け、月のない夜空をイクシオンは見つめる。
「ラフィーネ……」
彼は窓の外へと身を投げ出した。
その日――灰色の煉瓦に囲まれたロクスの街の上空からアモル王国の方角に向かって、紫竜が空を駆けていく姿を目撃したと、民達は噂したのだった。
自分の人生の半分以上を作り上げてきた女性。
自分という人格を成す一部。
彼女なしでは、自分は自分とは言えない。
彼女のそばに戻れるならと、どんな辛苦も舐めて、泥水を啜りながらでも生きてきた。
忘れるには、あまりにも存在が大きすぎる。
かけがえのない……
「……ラフィーネ……」
――唯一無二の彼女と、月の女神が重なった。
イクシオンの紫水晶の瞳から涙が溢れてきた。
――どうしようもなく大切な姫。
自分にとっては、彼女を想って生きてきた半生で。
彼女の記憶がない自分など、もうイクシオン・ロクスではないというほどに。
だけど彼女に拒絶されたら生きていける気はしなくて。
怖くて馬鹿な自分は、愛妾だと、本当に馬鹿なことを言って。
それでも、愛想を尽かさずに、「妻に」と、「愛している」と、告げるのを待ってくれていたのに……
彼女を失くしたら生きていけないからと、彼女との記憶を犠牲にしたはずなのに。
「ラフィ……」
すぐに頭の中が白い靄に覆われそうになる。
「消えないでくれ……忘れたくないんだ、ラフィのことを」
その時、ふと思い出す。
リンダが要人の護衛をしていると言った。
姉王もアモルに姫がいると知らせて来た。
アモルが魔獣に襲われているのだ。
せっかく命を救ったはずなのに、未来永劫、彼女に言葉を伝える機会を失うところだった。
「行かないといけない」
窓を開け、月のない夜空をイクシオンは見つめる。
「ラフィーネ……」
彼は窓の外へと身を投げ出した。
その日――灰色の煉瓦に囲まれたロクスの街の上空からアモル王国の方角に向かって、紫竜が空を駆けていく姿を目撃したと、民達は噂したのだった。
あなたにおすすめの小説
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました
大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――
魚人族のバーに行ってワンナイトラブしたら番いにされて種付けされました
ノルジャン
恋愛
人族のスーシャは人魚のルシュールカを助けたことで仲良くなり、魚人の集うバーへ連れて行ってもらう。そこでルシュールカの幼馴染で鮫魚人のアグーラと出会い、一夜を共にすることになって…。ちょっとオラついたサメ魚人に激しく求められちゃうお話。ムーンライトノベルズにも投稿中。
義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話
よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。
「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた
狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている
いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった
そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた
しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた
当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった
この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。
女の子がほとんど産まれない国に転生しました。
さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。
100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳
そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。
当面は2日に1話更新予定!