【R18】敵国将軍の、愛妾になったはずですが!?

おうぎまちこ(あきたこまち)

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第5章 祖国への帰還

第27話―1 敵国将軍は、正気を失います!




 魔獣リンダと共に祖国アモルに帰ってきて、王城の裏手にある泉へとラフィーネはたびたび脚を運んだ。
 色とりどりの花々に囲まれたその土地が、生命力を補充できる地脈点だと、ロクスに向かう前までは思いもしなかった。
 体の方はみるみる回復してきたのは良いものの、兄であるアモル王が妹をロクスに帰すのを渋っていた。

「女王になったシヴァの言い分も分かるし、不甲斐ない兄さんが言っても説得力は欠片もないが……やっぱり、妾というのはおかしい。イクシオン将軍が乗り込んできた時には突然すぎて何もできなかったが、お前が帰ってきたついでだ、条約の内容を撤回出来るように取図ろう」

 そんな兄に対して、首を横に振る。

「お兄様の心配には及びません。イクシオン将軍の愛妾としてロクスに向かうと決めたのは、私の意志でした。昔と変わらず、優しい彼のままだから、ご安心ください」

「ラフィーネ」

「もうしばらくアモルで過ごしてから帰りますね」

 裏で兄を操ろうとする宰相も、ロクスのシヴァ女王陛下やイクシオン将軍の機嫌を損ねるのが怖いからか、おかしな真似はしてこなかった。
 以前はラフィーネのことを見て見ぬふりをしていた城の使用人たちも、王太后や宰相の機嫌をとらなくてよくなったからか友好的に接してくれた。
 時間がある時には、癒しの魔術に興味があった魔術師たちと談話をしたり、ご令嬢たちとお茶を飲んだり、姫としての生活を満喫出来た。昔からよく顔を出していた教会や孤児院、救護院に顔を出すと、嬉しそうに出迎えてもらえた。

(シオン達のおかげでアモルでも快適に過ごせている。感謝してもしきれないわ)

 最終的な問題は、イクシオンが記憶を失っていることだった。
 帰国する前に無理に身体の関係に持ち込んでしまったが、純情な彼の心象には自分はよくは映らなかったかもしれない。

(急ぎ過ぎたかもしれない……優しい彼に無理矢理、責任を取らせるような発言をさせてしまった)

 自分勝手だとは分かってはいたが、自分がアモルに戻っている間に、イクシオンに好きな女性が出来たらと不安だったのだ。

(私は馬鹿ね……失ってから初めて、自分の気持ちに気づいて……今頃、彼に振り向いてほしいだなんて……)

 純潔を捧げる際にだって、自分に何かあったら他の女性と幸せになってとイクシオン本人に伝えたくせに。
 でもそれは、生きて未来を見なくて良いと思っていたからに過ぎない。

(昔から私は自分のことばかりだわ……)

 イクシオンが国から追放されても嘆いていただけ。
 いつも待っていただけで、自分から彼の元へ向かおうとすることもなかった。
 本当は、薄々彼の気持ちに気づいていたのに、相手が行動してくるのを黙って見ていただけだ。
 
 彼は一途に自分のことを慕ってくれていたのに、目を逸らしてしまった。

 結果、彼との大事な記憶を失うことになった。
 自業自得だ。

 これから再度シオンと関係を築き直すのには時間がかかることだろう。

(だけど、もう私は彼から逃げない……色んなことを犠牲にしてでも、それでも私を救おうとしてくれたシオンから……)

 彼の心をもう一度振り向かせようと、泉の向かって心に決めていた時――。
 

「姫様! 魔獣の群れが、王城内に押し寄せてきています!!」

 
 魔獣リンダの叫びが木霊したのだった。



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